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世界と日本の貧困率
現代社会の抱える深刻な問題の一つ、「貧困」について世界と国内の情勢を考えてみましょう。
世界銀行では2015年に1日1.90米ドルの支出を「国際貧困ライン」に指定している一方、下位中所得国については3.20ドル、上位中所得国については5.50ドルを貧困ラインとするデータも測定しています。
一方、相対的貧困のほうは、その国の生活水準や文化水準を下回る状態に陥っていること。厳密には、等価可処分所得(収入から税金や社会保険料などを除いた「手取り収入」。ただし2018年からOECDの新基準により、自動車税関連の支出、企業年金の掛け金、仕送り額も引かれることになりました)の中央値の半分を「貧困線」と呼び、そのラインに満たない所得水準の世帯を相対的貧困世帯と呼びます。
2015年以来着実に減少していた貧困者の数が新型コロナウイルスのパンデミックにより増加に転じ、長期予測では7.9%まで減少するとされていた数字が2017年水準(9.2%)まで逆転してしまったのです。
絶対的貧困層の多くはサブサハラ・アフリカ(北アフリカを除く約50カ国)や南アジアに集中しています。2015年にはその半数がわずか5カ国(インド、ナイジェリア、コンゴ民主共和国、エチオピア、バングラデシュ)に集中していることが明らかになりました。
わけても人口の多いインドでは新型コロナの影響が深刻です。米調査会社ピュー・リサーチ・センターの推計では、2020年の間に中間層は3200万人減り、貧困層は2倍の1億3400万人に増えたということです。
世界的にみると、貧困層の増加は2020年だけにとどまり、2021年には世界の貧困は約2100万人減少されるとみられています。とはいえ、世界全体が回復していくのではなく、高・中所得国での貧困の減少が低所得国での貧困増加をカバーするようなかたちです。つまり、貧しい国ではコロナ禍からの立ち上がりは容易ではないということです。
同じ2018年の相対的貧困率を国際比較したデータでは、日本は世界13位ですが、OECD加盟38カ国中では米国、韓国、メキシコに次ぐ4位という高さ。相対的貧困率の高い国ほど、国内の格差が大きいということです。
政府が2015年に分析した相対的貧困世帯の特徴は、「世帯主年齢別では高齢者または30歳未満が多い」「世帯類型別では単身世帯と一人親世帯が多い」「郡部・町村居住者が多い」の三点。この前後から話題になりだした「子どもの貧困率」については、2012年が16.3%で最も高く、2018年には13.5%(新基準では14%)とやや改善がみられます。
このような数字だけではわからない生活実感としては、日本の全世帯のうち「生活が大変苦しい」「やや苦しい」を合計した「苦しい」世帯は、2019年には54.4%を占めました。高齢者世帯では「苦しい」割合はやや低い51.7%ですが、児童のいる世帯では60.4%、母子世帯では86.7%が「苦しい」と答えています。
コロナ禍で収入が減り、厳しい状況を余儀なくされている家庭も多いなか、高齢社会はいよいよ進行するばかりです。一過性のものと顔をそむけず、考える時期が迫っているのではないでしょうか。
絶対的貧困率と相対的貧困率
貧困率には絶対的貧困率と相対的貧困率があります。絶対的貧困とは、必要最低限の生活水準を維持するための食糧・生活必需品を購入できる所得・消費水準に達していないこと。平たく言えば「衣食住」にこと欠く状態です。世界銀行では2015年に1日1.90米ドルの支出を「国際貧困ライン」に指定している一方、下位中所得国については3.20ドル、上位中所得国については5.50ドルを貧困ラインとするデータも測定しています。
一方、相対的貧困のほうは、その国の生活水準や文化水準を下回る状態に陥っていること。厳密には、等価可処分所得(収入から税金や社会保険料などを除いた「手取り収入」。ただし2018年からOECDの新基準により、自動車税関連の支出、企業年金の掛け金、仕送り額も引かれることになりました)の中央値の半分を「貧困線」と呼び、そのラインに満たない所得水準の世帯を相対的貧困世帯と呼びます。
絶対的貧困の急増と新型コロナ
世界銀行が隔年で発行する報告書「貧困と繁栄の共有」では、2020年の世界人口に占める極度の貧困層(1日1.90ドル未満で生活する人々)の割合を9.1~9.4%と予測しました。世界全体では9700万人の増加、1億1900万~2400万人が極度の貧困に陥ったと推計されています。2015年以来着実に減少していた貧困者の数が新型コロナウイルスのパンデミックにより増加に転じ、長期予測では7.9%まで減少するとされていた数字が2017年水準(9.2%)まで逆転してしまったのです。
絶対的貧困層の多くはサブサハラ・アフリカ(北アフリカを除く約50カ国)や南アジアに集中しています。2015年にはその半数がわずか5カ国(インド、ナイジェリア、コンゴ民主共和国、エチオピア、バングラデシュ)に集中していることが明らかになりました。
わけても人口の多いインドでは新型コロナの影響が深刻です。米調査会社ピュー・リサーチ・センターの推計では、2020年の間に中間層は3200万人減り、貧困層は2倍の1億3400万人に増えたということです。
世界的にみると、貧困層の増加は2020年だけにとどまり、2021年には世界の貧困は約2100万人減少されるとみられています。とはいえ、世界全体が回復していくのではなく、高・中所得国での貧困の減少が低所得国での貧困増加をカバーするようなかたちです。つまり、貧しい国ではコロナ禍からの立ち上がりは容易ではないということです。
相対的貧困と日本の現状
じつは日本は、相対的貧困率の高い国です。厚生労働省が発表している「国民生活基礎調査」によると、2018年の日本における貧困線(新基準)は127(124)万円、相対的貧困率は15.4(15.7)%とされています。つまり日本人の6~7人に1人は、相対的貧困ということになるわけです。同じ2018年の相対的貧困率を国際比較したデータでは、日本は世界13位ですが、OECD加盟38カ国中では米国、韓国、メキシコに次ぐ4位という高さ。相対的貧困率の高い国ほど、国内の格差が大きいということです。
政府が2015年に分析した相対的貧困世帯の特徴は、「世帯主年齢別では高齢者または30歳未満が多い」「世帯類型別では単身世帯と一人親世帯が多い」「郡部・町村居住者が多い」の三点。この前後から話題になりだした「子どもの貧困率」については、2012年が16.3%で最も高く、2018年には13.5%(新基準では14%)とやや改善がみられます。
このような数字だけではわからない生活実感としては、日本の全世帯のうち「生活が大変苦しい」「やや苦しい」を合計した「苦しい」世帯は、2019年には54.4%を占めました。高齢者世帯では「苦しい」割合はやや低い51.7%ですが、児童のいる世帯では60.4%、母子世帯では86.7%が「苦しい」と答えています。
コロナ禍で収入が減り、厳しい状況を余儀なくされている家庭も多いなか、高齢社会はいよいよ進行するばかりです。一過性のものと顔をそむけず、考える時期が迫っているのではないでしょうか。
<参考サイト>
2019年 国民生活基礎調査の概況:貧困率の状況│厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/dl/03.pdf
貧困と繁栄の共有 2020│世界銀行
https://www.worldbank.org/en/publication/poverty-and-shared-prosperity
世界の貧困に関するデータ│世界銀行
https://www.worldbank.org/ja/news/feature/2014/01/08/open-data-poverty
1年を振り返って:14の図表で見る2019年│世界銀行
https://www.worldbank.org/ja/news/feature/2019/12/20/year-in-review-2019-in-charts
2019年 国民生活基礎調査の概況:貧困率の状況│厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/dl/03.pdf
貧困と繁栄の共有 2020│世界銀行
https://www.worldbank.org/en/publication/poverty-and-shared-prosperity
世界の貧困に関するデータ│世界銀行
https://www.worldbank.org/ja/news/feature/2014/01/08/open-data-poverty
1年を振り返って:14の図表で見る2019年│世界銀行
https://www.worldbank.org/ja/news/feature/2019/12/20/year-in-review-2019-in-charts
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