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「認知症介護」で最も大事なこととは
親の様子が最近なんだかおかしい。くどくどと何度も同じことを念押しするかと思えば、そわそわ立ったり座ったりをただ繰り返す。ひょっとしたら認知症なのではないか。そう気づいたとき、いきなり施設への入所を考える人はまずいないでしょう。親と同居にせよ、別居にせよ、子どもなら親ができるだけ長く慣れ親しんだ自分の家で暮らせるように、家族で介護したいとまず考えるのはごく自然なことです。
しかし、一口に「在宅介護」といっても、なかなか容易なことではありません。そこで、元・国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 長寿医療研修センター長である遠藤英俊氏に、どのようなことに注意しながら認知症患者の在宅介護をすればよいのかについて、お聞きしました。
そのためには、認知症「患者」と上述しましたが、認知症は「病気である」と理解することが重要です。病気ですから、認知症にはさまざまな「症状」があります。それは記憶障害、いわゆる物忘れだけではありません。常に不安がっている。やたら怒りっぽい。ちっともじっとしていられず、多動である。時間の感覚がおかしい。このような「行動・心理症状」(BPSD)と呼ばれる、さまざまな行動や心理状態の異常が、特に認知症発症の入り口から中程度の時期にかけて見られるということです。
遠藤氏は、これらの行動・心理症状にはなんらかの意味があるはずなので、これらの異常を本人のメッセージとして聴くことが必要だと説きます。たとえば、座っていたと思うとすぐに台所をのぞきこむ、といった場合。これはもしかしたら「ちゃんと食事を出してもらえるか」と心配で確かめにいっているのかもしれません。やたら立ち上がってはどこかに行こうとして、また戻ってくる場合。排せつをしたいが自分ひとりではうまくできない、と不安なのかもしれません。
このような場合は、本人の行動をよく観察し、何をしたがっているのか、何を気にしているのかを察知して、「もう少ししたら一緒にご飯を食べましょうね」「お手洗いはこっち。なにか手伝おうか」と、適宜声かけをしましょう。このようなことで、本人は一時的にでも不安が軽減されて落ち着きを取り戻すことがあるのです。くれぐれも「じゃまだからじっとしていて」などと、介護者や家族の都合のみで応対しないようにすること、つまり「ファミリーセンタード」ではなく「パーソンセンタード」が肝要なのです。
また、認知度の低下の程度によっては薬が必要になることもあるかもしれません。薬である程度、幻覚、幻聴、妄想が緩和されることもあるのですが、必ず専門の医師のアドバイスに従いましょう。強い薬は症状にはよく効く反面、身体機能に影響したりすることもあり、デメリットが伴うものです。家族は「クスリのリスク」をきちんと認識すべきで、そのうえで周囲の都合ではなく、本当に本人のためになる薬は何なのか、どの程度のものなのかを考えなければなりません。
介護者が一人で介護を抱え込まないようにするためにも、たとえば、公的サービス、サポートもうまく利用したり、また認知症カフェなどで同じ悩みをもつ人たちと情報シェアをするなど、何人もの「仲間」をつくったりすることも覚えておくといいでしょう。
介護を受ける親の姿は、何年か先の自分へのメッセージを発信しているのかもしれない。そう思って、大切な人に目を向け、耳を傾けましょう。
しかし、一口に「在宅介護」といっても、なかなか容易なことではありません。そこで、元・国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 長寿医療研修センター長である遠藤英俊氏に、どのようなことに注意しながら認知症患者の在宅介護をすればよいのかについて、お聞きしました。
「介護者」ではなく「被介護者」を真ん中に置く
家族で介護する場合、ついつい介護者(介護をする人のこと)の都合や目線となる「ファミリーセンタードケア」になりがちですが、そうではなくあくまでも被介護者(あるいは要介護者、介護を受ける人のこと)を中心とした考え方「パーソンセンタードケア」で行うべきだ、と遠藤氏は言います。そのためには、認知症「患者」と上述しましたが、認知症は「病気である」と理解することが重要です。病気ですから、認知症にはさまざまな「症状」があります。それは記憶障害、いわゆる物忘れだけではありません。常に不安がっている。やたら怒りっぽい。ちっともじっとしていられず、多動である。時間の感覚がおかしい。このような「行動・心理症状」(BPSD)と呼ばれる、さまざまな行動や心理状態の異常が、特に認知症発症の入り口から中程度の時期にかけて見られるということです。
遠藤氏は、これらの行動・心理症状にはなんらかの意味があるはずなので、これらの異常を本人のメッセージとして聴くことが必要だと説きます。たとえば、座っていたと思うとすぐに台所をのぞきこむ、といった場合。これはもしかしたら「ちゃんと食事を出してもらえるか」と心配で確かめにいっているのかもしれません。やたら立ち上がってはどこかに行こうとして、また戻ってくる場合。排せつをしたいが自分ひとりではうまくできない、と不安なのかもしれません。
このような場合は、本人の行動をよく観察し、何をしたがっているのか、何を気にしているのかを察知して、「もう少ししたら一緒にご飯を食べましょうね」「お手洗いはこっち。なにか手伝おうか」と、適宜声かけをしましょう。このようなことで、本人は一時的にでも不安が軽減されて落ち着きを取り戻すことがあるのです。くれぐれも「じゃまだからじっとしていて」などと、介護者や家族の都合のみで応対しないようにすること、つまり「ファミリーセンタード」ではなく「パーソンセンタード」が肝要なのです。
また、認知度の低下の程度によっては薬が必要になることもあるかもしれません。薬である程度、幻覚、幻聴、妄想が緩和されることもあるのですが、必ず専門の医師のアドバイスに従いましょう。強い薬は症状にはよく効く反面、身体機能に影響したりすることもあり、デメリットが伴うものです。家族は「クスリのリスク」をきちんと認識すべきで、そのうえで周囲の都合ではなく、本当に本人のためになる薬は何なのか、どの程度のものなのかを考えなければなりません。
一人で頑張らずに仲間を増やす
介護においては、「介護者ファースト」であってはならないのはもちろんですが、「被介護者ファースト」オンリーで介護者が頑張りすぎるのも問題です。最適な介護を目指すあまり、頑張りすぎて続けられなくなってしまっては、元も子もありません。大事なのは、「○○ファースト」、「○○優先」よりも、大事な人を真ん中に置いて考えようとすること。いつもその周りにいて、真ん中を向いているということが大切なのではないでしょうか。介護者が一人で介護を抱え込まないようにするためにも、たとえば、公的サービス、サポートもうまく利用したり、また認知症カフェなどで同じ悩みをもつ人たちと情報シェアをするなど、何人もの「仲間」をつくったりすることも覚えておくといいでしょう。
介護を受ける親の姿は、何年か先の自分へのメッセージを発信しているのかもしれない。そう思って、大切な人に目を向け、耳を傾けましょう。
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