社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2022.02.26

休日に仕事の連絡…法的にアウトなのか?

 会社員をしていれば、ある程度経験したことがあろう事案に「休日連絡」があります。モヤモヤしつつも対応してきたかと思いますが、休日なのに会社サイドから仕事の連絡が入ることは労働基準法的にはアウト、それともセーフなのでしょうか。

休日の仕事連絡は法的にアウト

 結論からいうなら、労働時間外にあたる休日に仕事の連絡対応することは、以下労働基準法を参照して、完全にアウトです。

「使用者が、第 33 条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。」(第37条より)

 つまり、休日に仕事の対応を求める場合は、時間外の割増賃金を支払う必要があり、電話でもメールなどちょっとした応対にも雇用サイドは注意する必要があります。

 リアルタイムにカウントされる電話応対と違って、応対にタイムラグのあるメールやメッセージ対応は若干グレーではありますが、会社サイドから、休日の返信を強いてきた場合は、時間外労働・休日労働に該当します。

「休みだけど、緊急案件はLineやショートメッセージの対応をお願い!」
「休みでもメールはムリでもLineくらい返せるでしょ!」

 「ちょっとくらいいいでしょ」的な上司や同僚のオーダーには注意しつつ、自分が上司であったり同僚であったりする場合は特に、相手の立場にたってムリを求めないようにしたいものです。

お客さまからの仕事連絡も…

 休日に連絡があるのは、会社サイドだけではありません。営業職であればとくに配慮しなければならないのがお客さま対応です。「休日は電話やメールをしないでください」とは言えないですよね。営業成績を気にするあまり、24時間フル対応となりかねません。  

 お客さまも上司も変わりなく、対応を求められる者の心理としては、ルールを踏み倒した緊急対応についての葛藤があります。業種にもよりますが、緊急時に電話やメールなどの応対をしないことでトラブルが大きくなり、後々自分が困ることも少なくないです。  

 無償で対応すれば個人的な評価が得られる、拒絶すれば無償対応が公然なものとなりブラックな会社環境に荷担してしまうというもの。個人を優先するか、環境を優先するかという心理戦ですね。

 理想的なのは、このどちらかを選択するという問題ではなく、休日応対についてのルールを、社内外に明示すること、会社側が「弊社社員は休みの日は連絡がとれない、あるいは対応できない」ことをクライアントに明確に伝えておくことです。

 また、会社支給の仕事用の携帯/スマホによって、応対を計量可能にするなど、休日対応を時間外労働と認め時間外賃金を支払うような仕組みがあれば、安心して応対ができるのではないでしょうか。

休日対応でストレスを貯めないために

 個人としても会社としても、「休日は連絡を受けつけない」というルールは徹底しにくいものです。あいまいにしておくと、少しくらい不満があっても会社の人間関係を壊すことなくできる限りうまくやっていきたいという意識や、そうした同調圧力を醸成しかねません。結果、ストレスは一個人だけでなく、休日を過ごす家族にもストレスが蓄積していきます。

 ストレスは社会を蝕みます。会社の労働時間外の応対は少なからず、会社だけでなく社会にも多大な損害を与えかねない事案であることを理解しましょう。

<参考サイト>
・労働基準法 - 厚生労働省
https://jsite.mhlw.go.jp/gifu-roudoukyoku/var/rev0/0115/6296/2014613171824.pdf
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ

なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ

編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?

「何回説明しても伝わらない」「こちらの意図とまったく違うように理解されてしまった」……。そんなことは、日常茶飯事です。しかしだからといって、相手を責めるのは大間違いでは? いやむしろ、わが身を振り返って考えないと...
収録日:2025/10/17
追加日:2025/11/13
2

なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために

なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために

エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如

現代社会にとって空海の思想がいかに重要か。AIが仕事の仕組みを変え、超高齢社会が医療の仕組みを変え、高度化する情報・通信ネットワークが生活の仕組みを変えたが、それらによって急激な変化を遂げた現代社会に将来不安が増...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/12
3

デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム

デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム

デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム

初めて会った人なのになぜか好意を抱いてしまうことがある。だが、なぜそうした衝動が生じるのかは疑問である。デカルトが友人シャニュに宛てた「愛についての書簡」から話を起こし、愛をめぐる精神と身体の関係について論じる...
収録日:2018/09/27
追加日:2019/03/31
津崎良典
筑波大学人文社会系 教授
4

『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割

『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割

何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制

「バイアスがかかる」と聞くと、つい「ないほうが望ましい」という印象を抱いてしまうが、実は人間が生きていく上でバイアスは必要不可欠な存在である。それを今井氏は「マイワールドバイアス」と呼んでいるが、いったいどうい...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/09
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
5

偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動

偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動

内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解

アメリカの大転換はトランプ政権以前に起こっていた。1980~1990年代、情報機器と金融手法の発達、それに伴う法問題の煩雑化により、アメリカは「ラストベルト化」に向かう変貌を果たしていた。そこにトランプの誤解の背景があ...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/11