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「世界一の投資家」バフェットの教えとは?
「世界一の投資家」ウォーレン・バフェットの手腕
投資に特に関心の強い人でなくても、バークシャー・ハサウェイCEOのウォーレン・エドワード・バフェットの名前は一度ならずとも聞いたことがあるでしょう。1976年に『フォーブス』の世界長者番付に登場し、1986年以降は毎年ベスト10入りを果たしている資産10兆円超とも言われる世界有数の大富豪です。バフェットがパートナーシップの運営を行っていたバフェット・アソシエイツは12年間で年31パーセントの複利という驚異的な数字を叩き出しました。その後、1965年から経営に携わった投資会社バークシャー・ハサウェイ社の時価総額は2021年当時で3736億ドル。これは当初より約2万倍の成長を遂げたことを意味します。バフェットが「世界一の投資家」「投資の神様」と称される理由がこのような数字で実証されているのです。
この想像をはるかに超える巨万の富を築いた投資家から、私たちはいったい何を学べるのか。今回は、『ウォーレン・バフェットの「仕事と人生を豊かにする8つの哲学」』(KADOKAWA)の著者でもある経済・経営ジャーナリストの桑原晃弥氏に、バフェットの教えをアドバイスしていただきます。
バフェットの3つの教え
桑原氏がバフェットの一番大切な教えとして挙げるのが「株式投資をするのなら、その会社のことを本当に理解しようとしなければいけない」ということです。バフェットは「“なぜ自分は現在の価格でこの会社を買収するのか”という題で、一本の小論文が書けないようなら100株を買うことさえもやめたほうがいい」と言っているそうで、これは目先の利益や流行にとらわれることなく、相手の本質を研究し、理解しようとすべきだという教えに通じます。この教えは、株式投資だけでなく、さまざまなビジネスや人間関係にも当てはまると言えそうです。二つめの教えは、お金は社会からの預かりものであり、社会に還元すべきだということ。幸運にも裕福な資産を手に入れることができた上位1パーセントの人間は、残りの99パーセントの人たちのことを考える義務があるとバフェットは言うのです。毎年、多額の寄付を怠らず、慈善家としてもよく知られている人物ならではの教えといえるでしょう。
さらに、バフェットは「人は習慣で行動するので、正しい思考と振る舞いを早いうちに習慣化させるべきだ」と説いています。良い習慣を身につけて、それを守り続けるようにしなければならない、というのです。
ちなみにバフェットは、たとえ10ドルといった少額でも賭け事は決してしないそうです。習慣を一度破ったり怠けたりすると、今度はそれが当たり前になってしまう。悪い習慣は良い習慣よりずっと身につきやすいことを知っているからこその教訓といえるでしょう。
「オマハの賢人」に学ぶこと
こうして、バフェットの教えを知ると、人としての生き方についてバフェットがいかに大切に考えてきたか、そのことがよく分かります。実は、冒頭で「世界有数の大富豪」「世界一の投資家」という肩書を紹介しましたが、この2つ以上にバフェットにぴったりの肩書きがあるのです。それは「オマハの賢人」と呼ばれていることです。オマハは、米国中西部のネブラスカ州の都市でバフェットの生まれ故郷です。バフェットは、若い頃に買ったオマハの小さな家に住み続け、愛する故郷で仕事を続け、自分が築いた資産のほとんどを慈善事業に当ててきました。金融機関ソロモン・ブラザーズが経営危機に陥ったときも、報酬1ドルで暫定会長に就任し、経営再建に尽力したという逸話の持ち主です。富める者は貧しい人のことを考える義務がある、というバフェットの信条は上述した通りですが、いまでも税の不平等を唱え、格差社会の是正を訴え続けています。この生き方があるからこそバフェットは、投資家、大富豪として以上に「賢人」として慕われ、尊敬されてきました。世界広しといえども、「賢人」と呼ばれ尊敬される投資家など他にはいない、と桑原氏は断言します。
バフェットと渋沢栄一の共通点
このようなバフェットの教えから思い起こされるのが、渋沢栄一です。渋沢も何百という事業をたちあげ、経済人として活動を続ける一方で、福祉、医療など弱者救済の事業に常に強い関心を持ち、なかでも身よりのない高齢者のための収容施設「養育院」の院長の肩書きは、生涯誇りとし、大事に持ち続けたそうです。バフェットにせよ渋沢にせよ、人のために生きること、他者のために働くことを貫き通したからこそ、誰もが仰ぎ見るような成功をおさめることができたのではないでしょうか。
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