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「公海」って一体どんな場所?
2023年の3月、国連の加盟国政府のあいだで、ある条約案が合意されました。「国連海洋法条約」に基づき、これまで1%程度に過ぎなかった公海の保護区域を2030年までに30%にするというものです。保護区を拡大させ、世界各国が協力して公海の自然環境を守っていくことを目的としています。
そんな話題の公海ですが、そもそも公海とは何か、よく耳にする「領海」や「排他的経済水域」との違いは何か、実はよく分からないという人もいるでしょう。
海に囲まれた日本に住むからこそ、公海と、そのほかの海域との違いについて理解しておきましょう。
その「国連海洋法条約」の中で、世界に広がる海は以下の4つに区分されています。
・公海
・領海
・接続水域
・排他的経済水域
領海、接続水域、排他的経済水域とは、おおざっぱに言えば「沿岸国の影響力(法律)が及ぶ範囲」を明確に示したものです。その国の領土に近ければ近い海であるほど、影響力が大きくなります。
「領海」とはその名の通り、沿岸国が領有する海のこと。地上と同じように、領海内ではその国の法律(日本であれば日本国憲法)を遵守しなければなりません。ただし、沿岸国の安全や秩序を脅かさないのであれば、外国船であっても領海内を通行する権利があります。
しかしながら、密漁や密輸を行っている不審船と判断された場合、国はその船長らを逮捕することができます。
領海の範囲は、基準となる海岸線(基線)から12海里(約22km)です。
「接続水域」とは、基線から24海里(約44km)、つまり領海から12海里外側の海域です。どの国の船でも基本的に自由に通行できますが、沿岸国側は、領海に近づこうとする不審な船に対して警告を鳴らす、監視するといった、一定の警備体制を敷くことができます。船が警告に従わない場合、その船は処罰の対象になります。領海を侵されないための、予防的海域というイメージです。
「排他的経済水域」とは、基線から200海里(約370km)の範囲の(領海を除いた)海域とその海底、地下を含む海域のことです。通称「EEZ(Exclusive Economic Zone)」とも呼ばれます。
EEZではどの国の船でも自由に通行できますが、“経済”水域の名の通り、経済や保全活動に関わることに関しては、沿岸国にのみ権利があります。具体的には、石油やガス、鉱物などの天然資源の採掘や、海洋の調査、保護などです。
そのため、外国船がEEZ内で漁業や採掘、海底調査をしたい場合は、沿岸国の許可が必要となります。許可なく操業した場合は、取り締まりの対象となります。
そして「公海」とは、領海~EEZ外の、特定の国に属さないすべての海のことです。
世界中のどこの国の船でも自由に航行、漁業、上空飛行、海洋調査が可能。海底電線やパイプラインの敷設、人口島の建設も、同様に自由に行えます。ただし、公海を航行する場合は自国の国旗を掲げ、自国の法律に従うという国際上のルールは存在します。
公海の範囲は、世界の海の約2/3、地球の表面のおよそ半分を占めるといわれます。
また、漁船が公海の豊かな水産資源を求め、魚を乱獲してしまうという事態も起こっており、公海上での漁業の在り方が問題視されています。
すべての国が公海を自由に利用し、そして平等に恩恵を受けるためにも、公海保全のための法整備は急務となっています。前述した国連海洋法条約による公海の保護区域の拡大は、そうした公海航行の安全、持続可能な海洋利用、海洋環境の保護の面で、非常に注目されているのです。
そんな話題の公海ですが、そもそも公海とは何か、よく耳にする「領海」や「排他的経済水域」との違いは何か、実はよく分からないという人もいるでしょう。
海に囲まれた日本に住むからこそ、公海と、そのほかの海域との違いについて理解しておきましょう。
4つの海域:公海、領海、接続水域、排他的経済水域
「国連海洋法条約」とは『海洋法』という国際法の中で定められた、海洋の利用、開発、規制などについて各国が守るべきルールのことです。“海の憲法”とも呼ばれています。その「国連海洋法条約」の中で、世界に広がる海は以下の4つに区分されています。
・公海
・領海
・接続水域
・排他的経済水域
領海、接続水域、排他的経済水域とは、おおざっぱに言えば「沿岸国の影響力(法律)が及ぶ範囲」を明確に示したものです。その国の領土に近ければ近い海であるほど、影響力が大きくなります。
「領海」とはその名の通り、沿岸国が領有する海のこと。地上と同じように、領海内ではその国の法律(日本であれば日本国憲法)を遵守しなければなりません。ただし、沿岸国の安全や秩序を脅かさないのであれば、外国船であっても領海内を通行する権利があります。
しかしながら、密漁や密輸を行っている不審船と判断された場合、国はその船長らを逮捕することができます。
領海の範囲は、基準となる海岸線(基線)から12海里(約22km)です。
「接続水域」とは、基線から24海里(約44km)、つまり領海から12海里外側の海域です。どの国の船でも基本的に自由に通行できますが、沿岸国側は、領海に近づこうとする不審な船に対して警告を鳴らす、監視するといった、一定の警備体制を敷くことができます。船が警告に従わない場合、その船は処罰の対象になります。領海を侵されないための、予防的海域というイメージです。
「排他的経済水域」とは、基線から200海里(約370km)の範囲の(領海を除いた)海域とその海底、地下を含む海域のことです。通称「EEZ(Exclusive Economic Zone)」とも呼ばれます。
EEZではどの国の船でも自由に通行できますが、“経済”水域の名の通り、経済や保全活動に関わることに関しては、沿岸国にのみ権利があります。具体的には、石油やガス、鉱物などの天然資源の採掘や、海洋の調査、保護などです。
そのため、外国船がEEZ内で漁業や採掘、海底調査をしたい場合は、沿岸国の許可が必要となります。許可なく操業した場合は、取り締まりの対象となります。
そして「公海」とは、領海~EEZ外の、特定の国に属さないすべての海のことです。
世界中のどこの国の船でも自由に航行、漁業、上空飛行、海洋調査が可能。海底電線やパイプラインの敷設、人口島の建設も、同様に自由に行えます。ただし、公海を航行する場合は自国の国旗を掲げ、自国の法律に従うという国際上のルールは存在します。
公海の範囲は、世界の海の約2/3、地球の表面のおよそ半分を占めるといわれます。
「自由」な公海を「無法地帯」にしないために
公海はすべての国に開かれた海域です。しかしどの国にも属さず、監視の目が行き届きにくいために、海賊の横行や密輸、違法投棄、人身売買などといった犯罪行為の温床になりやすいエリアでもあります。また、漁船が公海の豊かな水産資源を求め、魚を乱獲してしまうという事態も起こっており、公海上での漁業の在り方が問題視されています。
すべての国が公海を自由に利用し、そして平等に恩恵を受けるためにも、公海保全のための法整備は急務となっています。前述した国連海洋法条約による公海の保護区域の拡大は、そうした公海航行の安全、持続可能な海洋利用、海洋環境の保護の面で、非常に注目されているのです。
<参考サイト>
・領海等に関する用語(海上保安庁)
https://www1.kaiho.mlit.go.jp/ryokai/zyoho/msk_idx.html
・海洋の国際法秩序と国連海洋法条約(外務省)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kaiyo/law.html
・国土を知る / 意外と知らない日本の国土(一般社団法人国土技術研究センター JICE)
https://www.jice.or.jp/knowledge/japan/commentary03
・国連が公海の保護条約協議へ、「海洋版パリ協定」(ナショナルジオグラフィック)
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/b/122600139/
・海洋保護の歴史的条約、草案に各国が合意 10年間協議の末(BBC NEWS JAPAN)
https://www.bbc.com/japanese/64858798
・領海等に関する用語(海上保安庁)
https://www1.kaiho.mlit.go.jp/ryokai/zyoho/msk_idx.html
・海洋の国際法秩序と国連海洋法条約(外務省)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kaiyo/law.html
・国土を知る / 意外と知らない日本の国土(一般社団法人国土技術研究センター JICE)
https://www.jice.or.jp/knowledge/japan/commentary03
・国連が公海の保護条約協議へ、「海洋版パリ協定」(ナショナルジオグラフィック)
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/b/122600139/
・海洋保護の歴史的条約、草案に各国が合意 10年間協議の末(BBC NEWS JAPAN)
https://www.bbc.com/japanese/64858798
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