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DATE/ 2023.06.10

【死角あり】車のバックカメラの注意点

 最近の車にはバックカメラ(バックモニター)が搭載されています。目視できないところを確認できるので、たいへん心強い装備品であることは間違いありません。ただし、バックカメラが一般的になったことでバック時の事故が完全になくなったかというと、残念ながらそうでもないようです。実際にバックカメラを搭載していた車両であっても、やはり事故は起こっています。ではどういう点に問題があって、私たちはどういった点に気を付ければよいのでしょうか。

真後ろの低い位置に対しては有効

 JAFが2022年2月にテストした記録によると、バックカメラによって「車体の真後ろに置いたものや真後ろで遠くにあるものを見ることができた」とのこと。コメントでは特に「三輪車や子どもといった背丈の低いものは、目視、各ミラーでは見ることができないため、バックカメラの効果を示している」とコメントされています。

 つまり、車内から後ろを見るとリアウィンドウより下にあるものは見えません。この低い位置を確認することができる点が、バックカメラの一番の利点と言えそうです。このことにより、車の後方に小さな子供などがいることで事故が起こるリスクは下げることができたと言えるでしょう。

バックカメラでは動いて近づくものは確認しにくい

 一方で、「車体近くにあるものや側方のものはバックカメラで見ることができない」との結果も出ています。さらに広い範囲を確認しようとすると、魚眼レンズの映像となって映る対象が歪むことがあります。この見え方だと、端の方に小さく映ったものが中央に来ると急に大きくなり、また動くと一気に小さくなるという極端な動きをします。このことで対象との距離感がとても掴みにくくなります。

 また夜間はバックライトが当たっている場所以外ではかなり視認性が悪くなります。さらにバックカメラが汚れていたリ、水滴がついていることでも視認性は大きく落ちます。視認性が悪くなった時に、よく見ようとバックカメラだけを凝視していると、側面などへの意識が薄らいでしまいます。こうして急に走ってくる自転車やランナー、歩行者などに気付かず事故が起こるようです。

問題は映像を「凝視すること」および「過信すること」

 つまりバックカメラに関する問題の一つは、バックカメラを凝視することで、周囲の空間や状況などへの意識が欠落する点です。また、JAFは後退の仕方でどれだけ危険を回避できるかという点について、急にボールが飛び出してくる状況を作ってテストを行っています。これによるとAT車がクリープ現象で後退するときにはボールを回避することができましたが、アクセルを踏んで後退していると間に合わなかった場合もあったようです。

 モニターを過信することで「大丈夫だろう」という意識になり、アクセルを踏んで後退してしまいます。こうして事故が発生します。バックカメラの死角にある危険は、目視やルームミラーやサイドミラーを確認することで察知できます。つまりバックカメラの映像とともに、ミラーの映像や目視などで周囲をしっかり確認しつつ、クリープを使ってゆっくり後退することが、後退時の事故防止で大事なポイントです。

 またこれは最近多発している「バックに入れるべきギアを間違ってドライブに入れたままアクセルを踏むことによって起きる事故」に対しても有効です。クリープでも車をうごかすには十分な速度は出ます。ちょっとした移動であったり、バックで駐車するといった程度の状況であれば、クリープでも十分ではないでしょうか。

<参考サイト>
バックカメラに死角はないのか?(JAFユーザーテスト)|JAF
https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test/blind_spot/rear-view_camera
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一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授