テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2023.07.09

外国人が驚く「日本の通勤事情」

 外国人観光客がますます増えてきた昨今。日本にやってきた外国人観光客がまず驚くことのひとつに「日本の通勤事情」があります。特に都心における電車通勤の光景は、自国ではまず“ありえない”ことだらけに感じるようです。

 外国人が感じる、日本の電車通勤の驚きポイントを5つ、まとめました。

その1「鉄道網が非常に発達している」

 「外国人は、日本の電車が定刻通りに発着することに驚く」というのはよく知られた話ではありますが、同じくらいに驚かれることが、鉄道網の広大さ、路線の複雑さです。特に新宿や渋谷といった主要都市の駅は、まるで“ダンジョン”だと揶揄されるほど。

 街中のいたるところに電車の出入り口があったり、JR・私鉄・地下鉄などさまざまな路線が同じ駅に乗り入れていたり、同じ路線なのに特急・準急・通勤快速、と種類があったり……

 ……と、ここまで鉄道網が発達している国は世界を見てもほとんどなく、しかもそれが5~10分間隔でほぼ定刻通りに運行しているというのは、外国人にとっては驚きの対象でしかないのです。

 非常に便利な日本の鉄道ですが、ただそれを乗りこなせるのは、毎日当たり前に利用している日本人だからこそ。初めて来た海外観光客にとっては、理解するだけでも至難の業です。そのため「日本の電車は複雑すぎて迷ってしまう」と悲鳴を上げる人は少なくありません。

その2「満員電車の過酷さ」

 日本の朝の名物(?)ともいえるのが満員電車です。特に7~8時台の都心駅のラッシュアワーでは、出勤を急ぐビジネスパーソンたちでごった返しています。

 電車を待つ間はきちんと整列しているのに、いざ電車が到着すると、押し合いへし合いの地獄絵図。発車時間が近づき早足でホームへ駆け込むんできた人は、扉付近の狭い隙間を見つけるや否や、中の人を身体全体で押しつぶしながら電車へ乗りこみます。

 そして、すし詰め状態の電車内では一歩も動くことができず、パーソナルスペースの侵害などという話は通用しません。やっと電車が駅に到着したかと思えば、どっと蜘蛛の子を散らすがごとく通勤客が駆け下りていく……そんな光景が毎朝、くり返されています。

 そこには「羊のように大人しい」「真面目で礼儀正しく他者思い」と海外から評される普段の日本人の姿はどこにもありません。鬼気迫るような満員電車の光景に、外国人が唖然としてしまうのも無理はないでしょう。

その3「電車内の静かさ」

 息もできないような朝の通勤電車ではともかく、平常時、帰宅ラッシュ時でも、日本では電車内で「静かに過ごす」のが当たり前です。これは電話での通話や、大声でのおしゃべりはマナー違反という共通認識があるため。これも、外国人にとっては驚くべきポイントです。

 海外の多くの国では「電車内は静かに過ごす」という考え方はありません。海外では電車内でも、公園で散歩するのと同じようにおしゃべりを楽しみますし、気分がよい時は歌を歌う、スピーカーで音楽を流すといったことも公然と行われます。マナーの問題というよりは、マナーの捉え方が日本と違うということなのかもしれません。

その4「電車の中で居眠りする」

 日本ではよく見られる電車内での居眠りも、多くの外国人がびっくりする光景です。海外では、電車で居眠りしている人は、盗難やスリの格好の標的。身ぐるみを剥がされてもおかしくないほど、あまりに無防備な姿なのです。もちろん日本でも盗難がないことはありませんが、電車内での居眠りが格別危険な行為だと考える人は少数でしょう。

 特に「酔い潰れて、うっかり終点の駅まで寝過ごしてしまった!」などというよくある失敗談は、外国人が聞いたら驚きを通り越して異常な出来事に聞こえるはずです。そもそも海外では日本の「居酒屋」のような場所はほとんどないうえ、夜は犯罪も増えることから、外出先で深酒をするというのは考えられないのです。

 また、夜ではなく、朝の電車内でも居眠りをする日本人に対し「もう疲れているの?」といった外国人のツッコミもよく聞かれます。日本が安全な国ということなのか、それとも激務が過ぎる国なのか……少し考えさせられる話です。

その5「ゴミを出さない」

 日本は清潔な国だ、という話はよく耳にしますが、それは電車の中のことにも当てはまるようです。

 日本では、基本的に電車内の飲食はマナー違反。駅弁を楽しむ新幹線内であっても、ゴミが出たら持ち帰るか、清掃スタッフに渡すという習慣が根付いています。

 いっぽう海外の多くの国では、電車内での飲み食い・ポイ捨ては日常的。中国のある列車では、乗客が車窓からカップ麺の食べ残しを投げ捨てるという、日本人からすると信じがたい行為を目撃したという人も……。

 電車内だけでなく駅もゴミだらけ、という国も珍しくありません。アメリカのある鉄道会社では、駅員の賃金が安いためにサービスの質が悪く、清掃も接客も行き届かないために、駅が犯罪の温床となっているケースがままあるそうです。

 平日休日問わず、明るく清潔な駅は、日本が誇るべきことのひとつかもしれません。

海外の通勤事情は?

 さて海外の通勤事情はどうかというと、たとえばアメリカは自動車通勤が76%と全体の8割近くを占め、電車などの公共交通機関を使う人は5%程度とごくわずか。典型的な車社会といえます(The American Community Survey調査による)。電車を通勤に使う人はニューヨークのような都市部の限られた範囲内にとどまるそうです。駅員が低賃金というのも、無理からぬ話ですね。

 いっぽうヨーロッパで自動車通勤している人は66%、公共交通機関を利用している人は34%という報告があります(PageGroup調査による)。ただし公共交通機関が充実しているかどうかは国によってばらつきがあるようです。

 また、昨今はエコ意識や健康志向の高まりから、自転車通勤を推奨する国もあります。中でもオランダでは自転車購入費の助成や自転車通勤者用の公共サービスを充実させるなど自転車通勤の制度化をすすめており、世界的に注目されています。現在自転車通勤をしている人は20%以上にのぼるそうです。

 アジアに目を向けると、まず中国では電車といえば国営の国鉄か地下鉄で、通勤に使われるのは地下鉄が一般的。しかし列車は各駅停車のみで日本のような「通勤快速」はなく、しかも乗車前に保安検査を受ける必要があります。通勤手段としての使い勝手は、あまりよくなさそうです。また、富裕層になるほど自動車通勤が好まれる傾向から、都市部の交通渋滞は社会問題となっています。

 そして、2023年には中国を抜いて世界一の人口となる見通しのインドの場合、通勤ラッシュの混雑ぶりは、日本のそれを遙かに上回る状況です。混雑率は、なんと250%。電車の中に入れず、車両にしがみついて無理矢理「乗車」する人もおり、電車から落下する事故が絶えません。そのため「命がけの通勤」とまで呼ばれています。

 また、電車だけでなく自動車通勤も多いですが、やはり人口が多いために渋滞は日常茶飯事。人はもちろん、家畜の群れが道路を横断することもあるそうで、仕事場から自宅まで数時間かかる……ということもざらなのだとか。

 それぞれの通勤事情は、その国のお国柄や経済事情を如実に表している、ともいえそうですね。

<参考サイト>
・外国人が心底パニクる複雑怪奇な日本の鉄道(東洋経済ONLINE)
https://toyokeizai.net/articles/-/206346
・【AFP記者コラム】インド名物、命がけの通勤・通学ラッシュ(AFPBB News)
https://www.afpbb.com/articles/-/3041888
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

権威主義とポピュリズムへの対抗…歴史を学び、連帯しよう

権威主義とポピュリズムへの対抗…歴史を学び、連帯しよう

民主主義の本質(5)民主主義を守り育てるために

ポピュリズムや権威主義的な国家の脅威が迫る現在の国際社会。それに対抗し、民主主義的な社会を堅持するために、国際社会の中で日本はどのように振る舞うべきか。議論を進める前提として大事なのは「歴史から学ぶ」ことである...
収録日:2024/02/05
追加日:2024/04/23
橋爪大三郎
社会学者
2

ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景

ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景

ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か

ルネサンス美術とはいったい何なのか。これを考えるためには、なぜその時代に古代ギリシャ、ローマの文化が復活しなければならなかったのかを考える必要がある。その鍵は、ルネサンス以前のイタリアの分裂した都市国家の状態や...
収録日:2019/09/06
追加日:2019/10/31
池上英洋
東京造形大学教授
3

OpenAI創業者サム・アルトマンとはいかなる人物なのか

OpenAI創業者サム・アルトマンとはいかなる人物なのか

サム・アルトマンの成功哲学とOpenAI秘話(1)ChatGPT生みの親の半生

ChatGPTを生みだしたOpenAI創業者のサム・アルトマン。AIの進化・発展によって急速に変化している世界の情報環境だが、今その中心にいる人物といっていいだろう。今回のシリーズでは、サム・アルトマンの才能や彼をとりまくアメ...
収録日:2024/03/13
追加日:2024/04/19
桑原晃弥
経済・経営ジャーナリスト
4

新宿の歴史…かつては馬糞臭い宿場町だった「内藤新宿」

新宿の歴史…かつては馬糞臭い宿場町だった「内藤新宿」

『江戸名所図会』で歩く東京~内藤新宿(1)内藤新宿の誕生と役割

江戸時代後期に書かれた地誌『江戸名所図会』(えどめいしょずえ)をひもとくと、江戸時代の街の様子や人々の暮らしぶりが見えてくる。今回は、五街道の宿場町として重要な役割を果たした「内藤新宿」を取り上げ、新宿のかつて...
収録日:2024/02/19
追加日:2024/04/21
堀口茉純
歴史作家
5

「和歌」と「宣命」でたどる奈良時代の日本語とその変遷

「和歌」と「宣命」でたどる奈良時代の日本語とその変遷

文明語としての日本語の登場(1)古代日本語の復元

日本語の発音は、漢字到来以来一千年の歴史を通してどう変わってきたのか。また、なぜ日本語は「文明語」として世界に名だたる存在といえるのか。二つの疑問を解き明かす日本語学者として釘貫亨氏をお招きした。1回目は古代日本...
収録日:2023/12/01
追加日:2024/03/08
釘貫亨
名古屋大学名誉教授