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DATE/ 2023.09.20

朝型は「時差ボケ」になりやすいって本当?

 「時差ボケ」とは、4~5時間以上時差のある地域へジェット機などで高速移動することにより、出発地の時刻に同調していた本来の体内時計と、到着地の生活時間とのあいだにずれ(非同期)が生ずることにより起こる、心身の不調を指します。

 つまり、時差ボケのポイントは、(1)「ジェット機」などによる高速移動によって、(2)「時差」がある場所に移動することにより生じる、(3)「ずれ(非同期)」によって引き起こされる心身の不調――といえます。そのため「時差ボケ」は、「時差症候群」「非同調化症候群」「ジェット症候群」や、英語では「ジェットラグ(jet lag)」「ジェットシンドローム(jet syndrome)」などともいわれています。

 時差ボケの主な症状には、覚醒と睡眠のパターンの乱れが挙げられます。そして、到着地時刻の夜間の不眠や昼間の過度の眠気などの睡眠障害、またそれらによって引き起こされる作業能力の低下、食欲不振、ホルモン分泌や体温リズムの変調など、生体防御能力の低下が生じるリスクも高まってしまいます。

なぜ朝型は「時差ボケ」になりやすいの?

 以上のように困った時差ボケですが、さらに困ったことに、一般的には夜型より健康に良いとされる朝型の方が、時差ボケになりやすいといわれています。理由としては、夜型の人に比べ、午前中に活発のピークがある朝型の人の方が、体内時計が規則正しく変化に弱いため、時差による生活リズムの急な変化に順応しにくいためではないかと考えられています。

 また、若年者に比べて中高年者も時差ボケの症状が重くなりやすく、睡眠障害なども起こしやすいといわれています。そして、時差ボケ解消には、乱れた体内時計を調整するためにも他者と積極的に会話をしたり活発に動いたりすることが必要であることから、神経質で緊張しやすい人や内向的な人も、時差ボケからの回復に時間がかかりがちになると指摘されています。

 他方、上記のような属人的な時差ボケのなりやすさ以外にも、西行きフライトよりも東行きフライトの方が、より時差ボケの症状が強く出やすくなる傾向があるといわれています。

 なぜなら、西行きフライトは時間がプラスされて1日の時間が長くなりますが、反対に東行きフライトは1日の時間が短くなります。人間の体内時計の周期は約25時間であり、生体リズムを遅らせるほうが同調させやすいといわれています。そのため、遅寝遅起きとなる西向きフライトでは症状は軽く、早寝早起きとなる東向きフライトでは症状が強く出やすくなるからです。

「時差ボケ」の予防と対策

 時差ボケの予防には、フライト前から現地の生活時間に合わせた生活を行うことなどが挙げられます。フライト当日も、空港で到着地の現地時刻にあわせてなるべくたくさん歩いたり、到着地の時刻で朝食の時間帯になるまで食事を取らなかったり、フライト中のアルコールやカフェインを控えて水をたくさん飲んだりすることなども、効果的とされています。

 また時差ボケの対策としては、必要に応じて体質に合った睡眠薬を使用して夜間の睡眠を確保や、仮眠や短い昼寝で睡眠時間を調整などが挙げられます。

 しかしそれ以上に、到着地で日の光を浴びることや社会的接触を積極的に行うことによって、体内時計と到着地の生活時間とのあいだにずれ(非同期)を解消することが、時差ボケ対策として肝要であるといわれいています。

<参考文献・参考サイト>
・「時差惚け」『デジタル大辞泉』(小学館)
・「時差ぼけ」『世界大百科事典』(平凡社)
・『最速入眠プログラム』(マイケル・モズリー著、井上麻衣訳、CCCメディアハウス)
・時差ボケってどんな症状?知っておきたい予防・解消法
https://www.smbc-card.com/nyukai/magazine/tabisapo/after/jet_lag.jsp
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