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DATE/ 2024.11.14

魚屋の森さん直伝!『魚を味わう』で学ぶ美味しい魚の食べ方

 魚は日本食を語る上で欠かせません。ただし、最近は少しずつその消費量が減少し、衰退し始めているという話もあります。その背景にあるのは「処理が面倒で手間がかかる」「コスパが悪い」といったものです。これに対して、「魚の魅力」を余すことなく伝える本が今回紹介する『魚を味わう 魚屋さんが教える魚の魅力と美味しい食べ方』(森朝奈著、マイナビ出版)です。

 本書でははじめに代表的な魚料理の手順が紹介され、旬の魚の紹介やいい魚の見分け方、魚のさばき方、下処理の仕方といった実用的なポイントがわかりやすく図解されていきます。その後、ちょっとしたコラムを挟みながら、さまざまな魚についてその特徴やおいしく食べるための料理方法などが解説されていく作りとなっています。

 著者の森朝奈氏は愛知県名古屋市出身です。早稲田大学国際教養学部を卒業したのち、楽天(現・楽天グループ)に入社します。その後、24歳のとき父親が創業した鮮魚の卸売会社「寿商店」に入社。現在は常務取締役として、仕入れから下処理、加工や取引先への卸し、さらに飲食店経営まで幅広く行っています。また、自らYouTubeチャンネル「魚屋の森さん」を運営しながら、魚食や水産業全体のファン拡大に向けて活動しています。著書としては、ほかに『IT企業をやめて魚屋さんになった私の商いの心得』(KADOKAWA)があります。

旬の魚を知って美味しい魚を食べよう

 美味しい魚を味わうには、まずは旬の魚を知ることです。その魚がお手頃な値段で市場に出回っている時期が、その魚の食べ頃です。魚は産卵時期が近くなると餌がたくさんある湾内に入ってくるので、漁獲量があがります。そうなると、お手頃な値段で多く出回ることになるわけです。また、産卵期前の魚は、栄養分と脂肪分を蓄えるのでおいしさが増しています。

 春に旬を迎える代表的な魚には、かつお(初がつお)、かさご、さわら、まだい、あいなめ、さより、めばるといったものがあります。初がつおは、春の終わりから初夏にかけて味わうことができそうです。

 夏が旬の魚は、いさき、あわび、すずき、ひらまさ、かますなど。夏の魚は脂が少なめですが、さっぱりとした「はも」や夏に脂がのる「あじ」や「あなご」などもおすすめとのこと。

 秋の魚には、さば、にじます、かわはぎ、さんま、このしろ、さけ、かつお(戻りがつお)といったものがあります。脂がのった青魚が多くなる季節です。秋に旬を迎える魚は産卵のために栄養分を蓄えていて、特に旨みが増しています。

 冬の魚には、あんこう、ほっけ、かれい、たら、きんめだい、かに、ぶりなどがあります。冬は冷たい水から身を守るために脂肪量が増え、また身が締まっておいしさが増します。

いわしの美味しい食べ方

 このあと、本書は魚ごとに細かくその特徴や料理方法が解説されます。まずは私たちになじみ深い「いわし」について見てみましょう。

 日本でよく食べられるいわしは、まいわし・うるめいわし・かたくちいわしの3種類。スーパーで私たちが普段目にするのは、まいわしです。選ぶポイントは目に輝きがあり、しっかりとうろこがついているもの。いわしは比較的安価でさばくのも簡単です。

 たくさん手に入ったら、オイルサーディンがおすすめ。作り方の詳細はぜひ本書を参照してみて下さい。いわしは柔らかいので指で開くことができます。いわしのフライは、手開きしたいわしに青じそ、梅のたたき、チーズを巻いて衣をつけて揚げれば完成。梅の風味がアクセントになります。

 また、いわしのユッケ丼も紹介されています。手開きして中骨と皮を取り除き、身を細長く切ってタレを混ぜ、あとはご飯に海苔を敷いてせん切りきゅうりをのせ、いわし、万能ネギに卵黄、ごまをのせます。

 他にも、いわしのアヒージョは、オリーブオイルをひたひたに入れて、唐辛子と刻んだにんにく、薄切りマッシュルーム、塩・こしょうを入れて煮れば、骨ごと食べられます。

出世魚についても知っておこう

 本書のコラムコーナーでは豆知識なども紹介されています。ここでは出世魚についてのお話からピックアップしてみます。代表的な出世魚といえば、ぶりです。地域によっても呼び名が異なる点も興味深いポイント。例えば、関東と関西では以下のように、最終的にぶりになるまでの呼び名が異なっています。

・関東:わかし(~20cm)→いなだ(20~40cm)→わらさ(40~70cm)→ぶり(70cm~)
・関西:つばす(~20cm)→はまち(20~40cm)→めじろ(40~70cm)→ぶり(70cm~)

 また、すずきについても取り上げています。名前の由来にはいくつかあり、血合がほとんどなく「すすい」だように身が白くみえることからであったり、「すすき(進む)」からであったりと、諸説あるとのこと。すずきの名前の変化は以下の通り。

・せいご(15~18cm)→ふっこ(35cm前後)→すずき(60cm~)。

 ちなみに、15cm以下を「こっぱ」や「せっぱ」「はくら」と呼ぶ地域もあるそうです。

知らない魚にチャレンジしてみよう

 他にもさまざまな魚介類について、細かく紹介がなされています。本書は解説も充実していますが、ビジュアルもとても豊かです。実際の魚の姿がわかる画像はもちろんのこと、その調理の場面写真や料理の写真、森朝奈氏が巨大な魚を前にしている場面など、パッと開いてみるだけでも楽しい気分になります。これに加えてさまざまな魚の旬や、その魚の美味しい食べ方がすぐにわかります。

 本書を読んでからスーパーや魚屋さんにいくと、魚の姿がよりはっきり見えてくるでしょう。切り身しか見なかった人も、ためしにさばいてみようかな、と思うかもしれません。また、寿司屋さんに行けば、食べたことがなかった魚にチャレンジしたくなるでしょう。「魚を美味しく、楽しく、味わい尽くす」ためにも、ぜひ本書を手に取ってみてください。プロの方法は新たな発見に満ちています。

<参考文献>
『魚を味わう 魚屋さんが教える魚の魅力と美味しい食べ方』(森朝奈著、マイナビ出版)
https://book.mynavi.jp/ec/products/detail/id=145818

<参考サイト>
森朝奈氏のX(旧Twitter)
https://x.com/asana1220

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