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DATE/ 2016.03.31

彼氏も友だちもできない…三重苦から学んだ幸せの意味

 軽井沢の山の中にISAKという全寮制の高校があるのを知っていますか?世界からおよそ100~150名ほどの生徒が集まるインターナショナルスクールで、2年前の2014年に開校した新しい学校です。その代表理事を務めるのが、小林りんという若き女性リーダーなのです。

 彼女はなぜこのような学校をつくったのでしょう。そこには学生時代、単身で海外留学したときのつらい体験と、そこで強烈に実感した「幸福」への想いがありました。

3カ月続いた三重苦の生活

 りんさんは高校1年生まで日本の公立学校に通っていたのですが、進学校だったため、受験勉強というプレッシャーがあったそうです。そこに疑問を覚えたりんさんは、高1の時に中退し、2年間留学できる奨学金制度を使ってカナダの全寮制高校に留学します。

 でも、りんさん、英語がまったくできませんでした。そのため、授業はもちろん、友だちとの会話の輪にも入っていけず、彼氏をつくるなんてどんでもないという、まさに三重苦の生活が3カ月ほど続いたそうです。

 でも、幸いなことに、同じ三重苦の生活を送っている子と知り合うことができたりんさん。その子はメキシコ人の女の子で、たまたま部屋が隣だったことで仲良くなります。ある日、その子からメキシコシティの実家に遊びに来るよう誘いを受けます。その時の体験が、小林氏の学校づくりの原体験となりました。

世界には大きな格差があることを痛感

 その子の実家は、ブロック塀を積み上げてつくった小さな会議室程度のものでした。しかもその子のお兄さんたちは、お金がなくて学校に行けませんでした。その後、近くのスラムにも連れて行ってもらったそうですが、そこには学校にも行かず走り回る子どもたちや、仕事もなくうつろな目をした大人たちがいました。そうした現実を目の当たりにしたりんさん、世界には大きな格差があることを痛感したそうです。

 「私はなんて恵まれているの。今までいろいろとラッキーが続いてきたけど、それは自分のために授かったものではなく、何かをするために頂いた幸運なんだ」

 そう感じたりんさん、その後、大学や大学院で開発経済や国際教育政策などを学びます。そして、国連児童基金(UNICEF)のプログラムオフィサーなどを歴任したあと、2014年、ISAKの代表理事に就任しました。

 りんさんの挑戦はまさに始まったばかりです。これから世界の子どもたちにどんな「幸福」をプレゼントしてくれるのか、見守っていきたいですね。

~最後までコラムを読んでくれた方へ~
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