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DATE/ 2016.04.24

高原レタスで年収2,000万円!?農業・漁業の知られざる年収

 農業マンガの人気に続き、スマホでの農場・牧場ゲームがヒットするなど、第一次産業に光が当たっています。今回は、農業や漁業、牧畜など、第一次産業で働く人の年収を調べてみました。

自然が頼みの第一次産業は、ハイリスクハイリターン

 第一次産業と一口に言っても、農業と水産業や林業では働き方が大きく異なります。

 町の暮らしにたとえると、自分の店で商いをしているのが一般的な農家。漁業や牧畜では船や牧場などの設備を持つ人が町工場の経営者で実際に現場にも立ち、乗組員や作業員に給料を支払う仕組みです。

 林業にいたっては、山単位で設備を持っているわけですから、さらにその差は大きくなります。

 農林業にせよ漁業にせよ、自然が頼みですから、天候が何よりのリスク要因です。

 年によっては「高原レタスで年収2,000万」などの声も聞きますが、市場との需給バランスが命なので、豊作すぎてもまた大量放棄せざるを得ないなどの現実があります。

 農業はサラリーマン感覚では計り知れないハイリスクハイリターンの世界なのです。

コメ農家54万円、肉用牛肥育経営1,118万円の実態

 農林水産省が発表している統計では、個人経営の場合の農業所得は一人当たり56.7万円。

 なかでも稲作は54万円という低調ぶりです。コメ専業農家は減っていますから、畑作=227万円、露地野菜=189万円、施設野菜=438万円などで補うケースがほとんどでしょう。

 「施設」とはビニールハウスなどで、設備費はもちろん自己負担。農業所得率の平均が23.7%という数字から、農業離れの深刻さがうかがえます。

 酪農の平均所得は750万円。子牛を生産・販売する繁殖牛=215万円、大きく育てて出荷する肥育牛=1,118万円のほか、養鶏でも採卵は463万円、ブロイラー養鶏=662万円と分かれ、養豚は791万円です。

 北海道とそれ以外の都府県で所得には10倍もの開きがあり、酪農王国ぶりが実証されています。

漁師の世界は平等分配が基本

 漁業は、大きく漁船漁業と養殖業に分かれます。やはり農水省の統計では、漁船漁業の平均所得が225万円。

 養殖はモノによって大きく異なり、マダイが-549万円と赤字だったのにくらべ、ブリ390万円、ホタテガイ556万円、カキ類1,227万円。

 さらにワカメ類90万円、ノリ類563万円、真珠661万円と、取り合うかう種類によってかなりバラつきがあるようです。

 漁船漁業の場合も漁法がさまざまに異なるので一口には言えませんが、銚子近海でイワシやアジなどを採る中型船は2隻1組で網を張り、一度の漁に出る乗組員は数10人。

 水揚げは、船主に株代(かぶしろ)、乗組員には人代(ひとしろ)と呼ばれる報酬で分配されます。その割合は船ごとに取り決められ、必要経費を差し引いた水揚げ額の約3割が株代、残りを人代として、一人前の乗組員には均一に分配。経験の浅い新人は7割ぐらいで、船長や機関士には手厚くという方式が取られています。

「農メン&農ガール」を目指せるネット求人サービスも

 日本の食料自給率は、平成26年度カロリーベース39%まで落ちており、世論調査でも82%が「不安がある」と答えています。自給率を上げるには農業や水産業などの第一次産業人口を増やすことが必至ですが、その実態は、農学博士で東京農業大学名誉教授の小泉武夫先生も「食を外国に委ねるのは独立国家ではない」と嘆いているように、高齢者に頼っているのが現実です。

 TPPへの不安も高まるなか、若者に働いてもらいやすくするため、政策が動きはじめています。「第一次産業ネット」というインターネットを通じた求人活動です。リスクを背負って農業や漁業を継承するという考え方ではなく、あくまで若い労働力の提供。業種や勤務地、職種による違いが一目でわかるほか、農業体験をしてもらう「ファームステイ」や新卒から経験を重ねて農場主を目指す「農業研修生」などの制度も人気のよう。食料生産だけでなく、競争馬の飼育や観光農園まで、バラエティのある一次産業を担う「農メン&農ガール」に期待が大きく高まります。
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今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授