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DATE/ 2016.05.02

賛否両論~2016年度有名大学の入学式式辞

 入学・入社式から早1カ月。祝辞を贈られる新入生・新入社員の面持ちはみなフレッシュで、意欲に満ちていたと思いますが、ひと月たったいま、どんな思いで頑張っているのでしょう。ここで、話題になった入学式の模様をいくつか振り返ってみます。以下、公開順に集めてみました。

式辞の常識を塗り替える法政・田中総長の艶姿

 就任以来、情熱的で型破りな式辞で来場者の心をわしづかみにしているのが、法政大学の田中優子総長です。とくに2015年3月の学位授与式では、「震災で中止となった入学式」を短いながらも実施し、感動を共有しました。

 今年も4月3日、日本武道館で行われた入学式に、田中総長は威儀を整えながらも粋な和服姿で列席。「自由を生き抜く実践知」から法政大学憲章にふれ、創立以来の「世界のどこでも生き抜く力」を強調しました。「こうなりたい!」とあこがれる女子学生も多かったでしょうね。

東工大の学長式辞はすべて英語!

 新入生・保護者ともに度肝を抜かれたのは、4月4日の東京工業大学。本年度から大きなシステム改革が予定されるなか、三島良直学長の約9分間の式辞がすべて英語だったからです。内容は新入生への歓迎に始まり、大学の歴史と現状にふれ、学内外での積極的な活動として、とくに海外経験を勧めるごくプレーンなもの。

 新入生からは「聞き取りやすく、何となく理解できた」とする声がある一方、「わからなかった」という感想に加え、脳科学者の茂木健一郎氏からは「日本人しかいないのに、敢えて下手くそな英語を話す実際上の必要はないと思う」のツイッター発言があるなど、賛否両論。

京都では「自由」をめぐる異変?

 京都大学の入学式は4月7日、京都市勧業館「みやこめっせ」で開かれました。ゴリラ学の第一人者である山極壽一総長は、創立以来「自由」を旨としてきた学風を強調しつつ、「自由は他者との共存を希求するなかで、相互の了解によって作られる」と定義。今年から始まる18歳選挙権の活用を呼びかける内容でした。

 これに対して、産經新聞ウェブ版が「自由、多すぎませんか?京大総長、入学式の式辞で『自由』をなんと34回も」とのヘッドラインを立てたため、すわ論争勃発? 記事自体は式辞内容に疑問を呈するものではなかっただけに、「見出しと本文があっていない」「多い、少ないじゃないし」などのツイッターが飛び交いました。

本当に「身につけさせたい」ものとは何?

 紹介した3校は、いずれもスーパーグローバル大学に選ばれた、日本の将来をリードする大学ぞろい。しかし、大学のなかには目的意識もはっきりしないままカリキュラムを組むようなところも多いと指摘するのが、千葉商科大学学長の島田晴雄氏です。

 島田氏は、千葉商科大学の学長を務めつつ、慶應義塾大学の名誉教授職を担う一方、歴代首相の知恵袋としても活動してきました。

 その経験から、「大学のやりたいこと」と「社会が求めていること」のギャップが誰よりも見えているのでしょう。島田氏は、大学とは離れた立場で独自に「島田村塾」という私塾を開き、主に30代前後の若手経営者を集めて学びを深めています。

 「15年先、世界で活躍しなければ日本は食っていけない」。では、どうするのか、というのが共通の差し迫った問題。集まった塾生たちは立場の違いを超えて議論を尽くし、互いの信頼のために必要なナレッジ形成に向かっています。
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西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授