社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2016.08.24

安いのには「ワケ」がある…激安弁当の裏側

 弁当屋やコンビニ弁当の中には、おどろくべき値段で売っているものがあります。たしかにワンコイン以下で食べられるのはお得ですし、温めるだけですぐ食べられる手軽さも売りになっています。そうしたことも手伝って、お昼になると、オフィスや学校近くのコンビニではどんどんとお弁当が売れていきます。

 ただ、あまりにも安いと「これはどこのものを使っているのか」「薬品は使われていないのか」「そもそも食べても大丈夫なのか」など、だんだんと心配になってきます。

安く手に入るものにはそれなりの理由がある

 では、そうした安い弁当はどのようにコストダウンが行われているのでしょう。

 『激安食品の落とし穴』(山本謙治:著)によると、まず米にお金をかけられないため、質の悪い米が使われ、そこにツヤを出すために油脂、酵素を利用した添加物が使われているのだそうです。これは、レンジでチンすればおいしくなる魔法の物質とのことですが、それを知らずにたくさん食べていると、余計な物質まで体に入れることに。

 また、唐揚げやフライなどの揚げ物は、国外で調理されたほうが安くすむため、調理されたものを冷凍し、国内で解凍されているのだそうです。この間に酸化が進むため、味が落ちるばかりか、そもそも時間の経過した油は体に良くないのです。そこで味落ちや劣化を食い止めるために水分が使われるのですが、この水分にはアミノ酸が含まれていて、これで味をつけるといいます。

コンビニ弁当は放置しても腐らない!?

 そのほかに、廃棄前の商品が利用されることもあり、古くなった肉や魚を加工して出すことはよくあるのだそう。

 「コンビニ弁当は放置しても腐らない!?」という話もあります。食中毒をふせぐために添加物を使っているということですね。健康への被害は未知数ですが、病気になるとか、がんになりやすいという意見もあります。そう聞くと、だんだんと食べるのが怖くなってしまいますね。

消費者の意識が大事

 とはいえ、質が良いものを食べようとすると、どうしても高くついてしまいます。そんなことではやりくりが難しいというのも事実。

 しかし、消費する側としては何も考えず口にするのではなく、安いために何が犠牲になっているのかを考える必要があるでしょう。先述の著者・山本氏は、安いものが良いものとなってしまうと、こだわって作っている弁当屋がどんどん減っていくことを指摘しています。おいしい手作りの弁当屋が繁盛すれば、質の良い弁当が売れる時代になります。消費者の意識こそが質の良いものを生み出すのですね。
 
 添加物や着色料なしの弁当は往々にして100円、200円高くなってしまうもの。作り手がご飯はもちろんのこと、いろいろとおかずにこだわり、しっかりと管理された商品が安く買えることのほうがむしろ珍しいことなのです。

<参考文献>
『激安食品の落とし穴』(山本謙治著、KADOKAWA/角川文芸出版)
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍

習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍

習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴

国際社会における中国の動きに注目が集まっている。新冷戦ともいわれる米中摩擦が激化する中、2021年7月に中国共産党は創立100周年を迎えた。毛沢東以来、初めて「思想」という言葉を党規約に盛り込んだ習近平。彼が唱える「中...
収録日:2021/07/07
追加日:2021/09/07
小原雅博
東京大学名誉教授
2

熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン

熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン

熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法

「熟睡とは健康な睡眠」だと西野氏はいうが、健康な睡眠のためには具体的にどうすればいいのか。睡眠とは壊れやすいもので、睡眠に影響を与える環境要因、内面的要因、身体的要因など、さまざまな要因を取り除いていくことが大...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/11/23
西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授
3

大統領選が10年早かったら…全盛期のヒラリーはすごすぎた

大統領選が10年早かったら…全盛期のヒラリーはすごすぎた

内側から見たアメリカと日本(5)ヒラリーの無念と日米の半導体問題

ヒラリー・クリントン氏の全盛期は、当時夫のクリントン氏が大統領だった2000年代だったという島田氏。当時、ダボス会議での彼女の発言が全米の喝采を浴びたそうだが、およそ10年後、大統領選挙でトランプ氏と対峙した際、彼女...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/24
4

密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」

密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」

エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観

岡本浩氏、長谷川敏彦氏の話を受けて、今回から鎌田氏による講義となる。まず指摘するのは、空海が説く『弁顕密二教論』の考え方である。この著書で空海は、仏教の顕教は「中論」「唯識論」「空観」など世界を分割して見ていく...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/20
5

なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み

なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み

何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み

なぜ「何回説明しても伝わらない」という現象は起こるのか。対人コミュニケーションにおいて誰もが経験する理解や認識の行き違いだが、私たちは同じ言語を使っているのになぜすれ違うのか。この謎について、ベストセラー『「何...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/02
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授