社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
大手だけ?「プレミアムフライデー」の目的は
「ワークライフバランス」という言葉が使われるようになって久しくなりました。国会でも「働き方改革」と銘打って、仕事との付き合い方の意識を変える動きが盛んになっています。そんななか、今年(2017年)2月24日から「プレミアムフライデー」がはじまります。
「プレミアムフライデー」とは、政府と経団連が、毎月最終金曜日の午後3時をめどに従業員に仕事を切り上げさせ、消費を促すために打ち出した取り組みです。しかし、「本当にそんな時間に帰れるのだろうか……」「他の企業はどうしているんだろう?」「溜まった仕事は、どうしよう」など、さまざまな疑問や不安もあると思います。そもそも、なぜこのようなキャンペーンがはじまったのでしょうか。
消費税が8%に上がった2014年4月から、個人消費の割合は右肩下がりとなっています。消費が落ち込むと、お金が社会に循環しなくなり、経済が回らなくなってしまいます。そこで、早い時間の退社を促進し、その時間を買い物や旅行などの個人消費に充ててもらおうという構想が生まれたのです。
そしてもうひとつ、「長時間労働」の問題は、長い間、日本の企業にとって深刻な課題となっていました。最近では、大手広告代理店の新人社員が過労自殺するなど、悲しい出来事があり、「働き方」の見直しが社会全体に求められています。
「プレミアムフライデー」は、こうした「長時間労働の是正」と「個人消費の活性化」を目的としているのです。
飲食店などでは、通常の営業日よりも開店時間を早めたり、飲食店同士で飲み歩きのキャンペーンを行うなどの動きが盛んです。また、旅行業界も金曜日の午後発の旅行プランを組むなど、「プレミアムフライデー」を意識したツアーを用意しています。月曜日に有給を取得すれば、金曜を半日使って3泊4日の旅行も可能ですから、月末旅行なども増えるかもしれません。
他にも、遊園地などのテーマパークの入場料の割引や、体験講座の開設など、挙げればきりがないほど、さまざまな業界で動きが見られています。
ビール大手アサヒグループホールディングスお客様生活文化研究所(青山ハッピー研究所)が今年1月に行ったアンケート(対象は全国の20歳以上の男女、有効回答数は3,250人)では、「プレミアムフライデー」への賛成は約4割、反対が2割弱という結果でした。賛成4割というと、決して前途洋々というわけではありませんが、キャンペーンの数を見ると、少なからずサービス提供側には大きな期待があるようです。
なお、同アンケート内には「月末の金曜日15時で仕事を切り上げたら何をする?」という質問もあり、最も多かった上位5つは以下になるとのこと。
1位:外食する(家族、恋人などと)/31.8%
2位:家族団らん・子どもと遊ぶ/28.2%
3位:家の片づけ・掃除・洗濯する/27.5%
4位:泊りがけで旅行に出かける/24.6%
5位:ゆっくりとショッピングを楽しむ/22.7%
実際にこのランキング通りになれば、この取り組みとしては当初の目的がかなうということで喜ばしいことなのですが、はたして…。
とはいえ、時給で働いている方にしてみれば、働いていない時間に賃金は発生しませんし、接客業の方は逆にかき入れ時。みんながみんな「プレミアムフライデー」を享受できるわけではありません。繁忙期が月末に訪れるという業種もあります。取引先が仕事をしていたら、帰るわけに行かないという人もいますよね。「金曜日にそんなに休んだら、月曜日の仕事が心配……」という人も少なくないのではないでしょうか。
「プレミアムフライデー」は、あくまでキャンペーンであって、そこに法的な拘束力や強制力はありません。仕事が忙しければ、無理をして午後3時に切り上げる必要はありませんし、その分、別の日に残業や徹夜をするようでは本末転倒です。
そうすると、「“仕事と時間に余裕のある高給取り”しか、この時間は楽しめないのか」ということになってしまいます。しかし、今回の取り組みによって、社会全体は少なくとも「プレミアムフライデー」という言葉を意識し、「生活スタイルの見直し」や、その背景にあるさまざまな問題について、考えるきっかけにはなるはずです。
プレミアムフライデー推進協議会事務局のHPには「日本中で、いろんな豊かさが、始まります」とあります。実際にどんな「豊かさ」をもたらしてくれるのか、まだわかりませんが、新しい試みですし、良い変化が起こることを期待したいですね。
「プレミアムフライデー」とは、政府と経団連が、毎月最終金曜日の午後3時をめどに従業員に仕事を切り上げさせ、消費を促すために打ち出した取り組みです。しかし、「本当にそんな時間に帰れるのだろうか……」「他の企業はどうしているんだろう?」「溜まった仕事は、どうしよう」など、さまざまな疑問や不安もあると思います。そもそも、なぜこのようなキャンペーンがはじまったのでしょうか。
個人消費のアップと、長時間労働の是正が目的
「プレミアムフライデー」が打ち出された背景には2つの問題があります。「個人消費の落ち込み」と「長時間労働」です。消費税が8%に上がった2014年4月から、個人消費の割合は右肩下がりとなっています。消費が落ち込むと、お金が社会に循環しなくなり、経済が回らなくなってしまいます。そこで、早い時間の退社を促進し、その時間を買い物や旅行などの個人消費に充ててもらおうという構想が生まれたのです。
そしてもうひとつ、「長時間労働」の問題は、長い間、日本の企業にとって深刻な課題となっていました。最近では、大手広告代理店の新人社員が過労自殺するなど、悲しい出来事があり、「働き方」の見直しが社会全体に求められています。
「プレミアムフライデー」は、こうした「長時間労働の是正」と「個人消費の活性化」を目的としているのです。
「プレミアムフライデー」を見越したキャンペーン
この動きを受けて、外食や小売り、旅行業界などが早めの退社を見込んだ企画やイベントを準備しています。飲食店などでは、通常の営業日よりも開店時間を早めたり、飲食店同士で飲み歩きのキャンペーンを行うなどの動きが盛んです。また、旅行業界も金曜日の午後発の旅行プランを組むなど、「プレミアムフライデー」を意識したツアーを用意しています。月曜日に有給を取得すれば、金曜を半日使って3泊4日の旅行も可能ですから、月末旅行なども増えるかもしれません。
他にも、遊園地などのテーマパークの入場料の割引や、体験講座の開設など、挙げればきりがないほど、さまざまな業界で動きが見られています。
ビール大手アサヒグループホールディングスお客様生活文化研究所(青山ハッピー研究所)が今年1月に行ったアンケート(対象は全国の20歳以上の男女、有効回答数は3,250人)では、「プレミアムフライデー」への賛成は約4割、反対が2割弱という結果でした。賛成4割というと、決して前途洋々というわけではありませんが、キャンペーンの数を見ると、少なからずサービス提供側には大きな期待があるようです。
なお、同アンケート内には「月末の金曜日15時で仕事を切り上げたら何をする?」という質問もあり、最も多かった上位5つは以下になるとのこと。
1位:外食する(家族、恋人などと)/31.8%
2位:家族団らん・子どもと遊ぶ/28.2%
3位:家の片づけ・掃除・洗濯する/27.5%
4位:泊りがけで旅行に出かける/24.6%
5位:ゆっくりとショッピングを楽しむ/22.7%
実際にこのランキング通りになれば、この取り組みとしては当初の目的がかなうということで喜ばしいことなのですが、はたして…。
「本当に休めるの……?」 取り組みへの不安
大手の商社や工業メーカーなどの民間企業では、「プレミアムフライデー」に合わせて社員に有給を取ることを推奨したり、働き方の改革に着手する動きも出ています。とはいえ、時給で働いている方にしてみれば、働いていない時間に賃金は発生しませんし、接客業の方は逆にかき入れ時。みんながみんな「プレミアムフライデー」を享受できるわけではありません。繁忙期が月末に訪れるという業種もあります。取引先が仕事をしていたら、帰るわけに行かないという人もいますよね。「金曜日にそんなに休んだら、月曜日の仕事が心配……」という人も少なくないのではないでしょうか。
「プレミアムフライデー」は、あくまでキャンペーンであって、そこに法的な拘束力や強制力はありません。仕事が忙しければ、無理をして午後3時に切り上げる必要はありませんし、その分、別の日に残業や徹夜をするようでは本末転倒です。
そうすると、「“仕事と時間に余裕のある高給取り”しか、この時間は楽しめないのか」ということになってしまいます。しかし、今回の取り組みによって、社会全体は少なくとも「プレミアムフライデー」という言葉を意識し、「生活スタイルの見直し」や、その背景にあるさまざまな問題について、考えるきっかけにはなるはずです。
プレミアムフライデー推進協議会事務局のHPには「日本中で、いろんな豊かさが、始まります」とあります。実際にどんな「豊かさ」をもたらしてくれるのか、まだわかりませんが、新しい試みですし、良い変化が起こることを期待したいですね。
<参考サイト>
・アサヒグループホールディングス:毎週アンケート<第619回プレミアムフライデーって知ってる?>
http://www.asahigroup-holdings.com/company/research/hapiken/maian/201701/00619/
・プレミアムフライデー推進協議会事務局HP
・アサヒグループホールディングス:毎週アンケート<第619回プレミアムフライデーって知ってる?>
http://www.asahigroup-holdings.com/company/research/hapiken/maian/201701/00619/
・プレミアムフライデー推進協議会事務局HP
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
グローバル主義が全ての元凶…トランプ政権がめざすのは?
米国システムの逆襲~解放の日と新世界秩序(1)米国システム「解放の日」
第二次トランプ政権は、その関税政策を発動させた日、4月2日を「解放の日」と称した。そこには、アメリカが各国の面倒を見るという第二次世界大戦以降の構図が、アメリカに損害をもたらしているという問題意識がある。「解放の...
収録日:2025/04/25
追加日:2025/05/20
「哲学・歴史」と「実証研究」の両立で広い視野をつかむ
デモクラシーの基盤とは何か(3)政治と経済を架橋するもの
「政治経済」と一口にいっても、両者を結びつけて思考することは簡単ではない。政治と経済を架橋するためには、その土台にある歴史や哲学、また実証的なデータを同時に検討する必要がある。これからの公共性を考えるための多角...
収録日:2024/09/11
追加日:2025/05/23
トランプ政治と民主主義の危機…カント哲学から考える
編集部ラジオ2025(9)デモクラシーの危機と「哲学」
いま、世界各国で「デモクラシーの危機」が高まっています。これまでの常識を超えたドラスティックな政策を次々と打ち出す第2次トランプ政権はもちろん、欧州各国の政治状況もポピュリズム的な面を強くしています。また、ロシア...
収録日:2025/04/03
追加日:2025/05/22
日本のインテリジェンスは大丈夫か…行政機関の対応に愕然
医療から考える国家安全保障上の脅威(4)国家インテリジェンスの課題
「日本のインテリジェンスは大丈夫なのか」という声が海外から聞かれるという。例えば北朝鮮のミサイルに搭載されている化学剤について、「エイジング」と呼ばれる拮抗薬投与までの制限時間の観点からはまったく見当違いの神経...
収録日:2024/09/20
追加日:2025/05/22
ブレーキなき極右ポピュリズム…文化戦争を重視し経済軽視
第2次トランプ政権の危険性と本質(1)実は「経済重視」ではない?
「第二次トランプ政権は、第一次政権とは全く別の政権である」――そう見たほうが良いのだと、柿埜氏は語る。ついつい「第1次は経済重視の政権だった」と考えてしまいがちだが、実は第2次政権では「経済」の優先順位は低いのだと...
収録日:2025/04/07
追加日:2025/05/10