西郷南洲のリーダーシップ
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己に克つ最大のポイントは「母意、母必、母固、母我」
西郷南洲のリーダーシップ(3)政治の心得
田口佳史(東洋思想研究家)
国家は何のためにあるか。国家の目標のために、リーダーはどのような存在であるべきか。また、なぜ「期日を守る」ことや「自分のやり方」にこだわることをやめよと言うのか。老荘思想研究者・田口佳史氏が、引き続き西郷南洲(隆盛)の『西郷南洲翁遺訓』を紹介しながら、「政治の心得」に迫る。(第3話目)
時間:11分43秒
収録日:2015年2月27日
追加日:2015年9月3日
≪全文≫

●国を強化するため政の大体は三つある


 第三番「政の大体は、文を興し、武を振い、農を励ますの三つにあり。その他百般の事務は皆この三つの物を助くるの具也。」

 つまり政治という行為はどこに集約されるべきかといえば、まず文を興さなければならないということです。「文を興す」とは、日本という国でなければ興らない精神、すなわち日本の伝統精神文化のことを言っています。地域に根差した国家が独立して活動をしているのは一体何のためか。金のためか。世界を制覇するためか。そうではない。独自の文化や独自の伝統はずっと続いて存在するのだから、まず考えなければならないのは、それらを隆盛に興すことだと言うのです。

 さらに「武を振い」とは、当時の状況からいえば西洋列強の脅威は相変わらずあったので、そういった外的な脅威を頑としてはねつけるためのさまざまな仕掛けや仕組み、その用意や準備がなければならないということです。

 そして何といっても、国民が満足のいく生活を送るためには、やはり食糧がしっかり自給自足されなければいけない。西郷は、この三つに政の大体はあるのだと言います。

 その他百般の事務は、全てこの三つの目標を「助くる」具(道具)であるというぐらいに思いなさいとして、何としてもこの三つに集約させて国を強化する必要があると西郷は言っているのです。ある意味では要点主義で、重要点をしっかり把握していた人なのだということがよく分かります。


●政治家は厳し過ぎるぐらいの勤労が必要


 第四番「万民の上に位する者、己を慎み、品行を正しくし、驕奢を戒め、節倹を勉め、職事に勤労して人民の標準となり、下民その勤労を気の毒に思う様ならでは、政令は行われ難し。」

 「万民の上に位する」とは、政治家は天に代わって万民の上に位するのだから、己などというものがあっては天の代わりは務まらないということです。そういう意味で、己をなるべく慎んでいく、つまり行動面でいえば品行を正しくするということになり、驕奢(ぜいたく)を戒めるということです。このことは、この後に続く文章にも出てきます。われわれは良い国をつくろうと思って戦いながら、多くの同僚がばたばたと倒れ命を落としたではないか。まさに今、その理想的な国家がつくられようとしているそのときに、多くの明治新政府の高官は豪華な家に住み、多くの美しい妾を囲うな...

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