西郷南洲のリーダーシップ
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
江戸城無血開城で日本の危機を救った西郷隆盛の問題解決力
西郷南洲のリーダーシップ(1)薩長同盟と江戸城無血開城
田口佳史(東洋思想研究家)
儒家思想のリーダーシップにかなう人間は、日本史上で五人居る。その一人が西郷南洲(隆盛)だ。内憂外患を退けつつ近代国家建設を目指すという難題に直面した明治維新において、西郷が果たした薩長同盟と江戸城無血開城の役割は大きい。老荘思想研究者・田口佳史氏が、「東洋的リーダーシップの権化」西郷の魅力に迫る。(第1話目)
時間:13分10秒
収録日:2015年2月27日
追加日:2015年8月31日
≪全文≫

●儒家のリーダーシップを体現した五人


 さてここから、儒家思想のリーダーシップ論をわが国の幕末の志士たちはどのように自己の力として活用し、自分を高めていったか、お話ししていきましょう。ここで取り上げるべき優秀なリーダーはたくさんいますが、これまでにお話ししたリーダーの今日的な基底として、「問題解決能力を持っている」こと、そして「無類の優しさをもって国民を理解し、夢と希望を与える」という点から、リーダーを厳しく見ていくと、私見に過ぎませんが、日本の歴史上では五人しかいないと、私は思うわけです。

 一人目は聖徳太子です。聖徳太子は、『日本書紀』がつくった架空の人物という説もありますので、あえて注意深く言えば、厩戸皇子のことですね。

 次は天武天皇です。歴史家の間でのコンセンサス(同意)が取れているのは、天武天皇が天皇という称号をつくったことです。以前の称号は大王(おおきみ)でした。その大王が天皇に変わり、日本が倭の国から「日本」に変わったのは天武朝であるということは、歴史家のコンセンサスが取れていることです。つまり、今日、われわれが何気なく使っている日本の根幹を定めたのは、天武天皇なのです。

 中国古典の儒家の思想、特に『易経』を徹底的に読んでみると分かりますが、持統天皇の『易経』の知識、あるいはその理解にはすさまじいものがありました。そういう意味では、いま言ったようなことは、全て持統天皇の知恵として天武天皇に伝わったのではないかと思います。また、中国から持ってきた律令制度を日本で完璧なものにしました。それが飛鳥浄御原宮令です。それによって律令国家にし、称号を天皇号にし、国号を日本にして、伊勢神宮の格を大きく上げて日本のシンボリックな神様にします。さらに、中国には司馬遷の史記がありますので、わが国も『日本書紀』という史記をまとめました。これらのほとんどが対中戦略だと思いますが、すごみのある戦略をしっかりとつくっていったということです。そういった業績には、計り知れないものがあり、そういう意味で天武天皇・持統天皇を取り上げたいと思います。

 次は北条泰時です。ご承知のように、泰時の父・北条義時の代に起こった承久の乱は、それまでの迷信の影響もあり、多くの日本人が描いていた天皇像、要するに絶対的権力者で歯向かってはならない存在としての天皇に対して異議を唱え、...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
老荘思想に学ぶ(1)力のメカニズム
老荘思想は今の時代に人類の指針となる
田口佳史
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
経験学習を促すリーダーシップ(3)成功の再現性と教え上手の指導法
教え上手の指導法に学ぶ!成功の再現性を高める4ステップ
松尾睦
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一