●高齢化の社会的費用膨張の恐怖
未活用資源の潜在的可能性というのがあります。健康づくりと健康産業がそれです。今、このようになっています。高齢者65歳以上の人口比は24パーセント。これで税金と社会保障の国民負担率は40パーセントです。今から37年すると老人の人口比率は40パーセントに近づきます。大和総研の推定だと、その時、今の社会保障制度を平行移動すると国民負担率は73パーセントとあります。500万円の所得の人が手取り130万円になってしまうということで、これでは駄目ですよね。おそらく負担率を5割くらいまで落とそうということになります。
では、その5割をどこに下すかというと、下した23パーセントは全部、次の世代が負担することになる。これでは暮らせません。「この国は子どもと孫を殺すのか」ということです。しかし、そういう構造になっているわけで、ひどい状況なのです。
●社会保障の抜本的見直しが必要
清家(篤)先生という私の一番弟子が、社会保障改革制度国民会議議長として、こうした問題を一気に引き受けて、島田塾で話してくださったこととして、報告書にはこう書いてあります。
「これまでの社会保障は年金・医療・介護だった。しかしそういう時代ではない。これからは雇用機会の提供、子育て支援、格差対応をしなければならない」
皆、正論です。今の日本の保険制度で一番危ないのが国民保険なのです。要するに所得があるのかないのか分からない人が、日本には1,000万人ほどもいるのです。これを放置して他の保険で埋めていると全部つぶれてしまうでしょう。
ということで、「それをやりましょう。トータルで考えないといけない」と、言うのはいいのですが、一番具体的な解決策は何かと言うと、「高所得の人からは応分の負担を求めましょう」ということになります。要するに、島田塾にいるような人を狙い撃ちするわけです。これまた、つけ回しで抜本的解決にはなっていません。
●鍵は「楽しくできる健康づくり」にあり
やはり、医療の中身、介護の中身を変えないといけないわけで、その部分は清家先生の報告書にも少し入っています。しかし、本丸は健康づくりなのです。健康はどうしたらつくれるか、と言えば、この真理は明快です。
健康は4要素。食と運動と禁煙と睡眠。それだけです。この4つを守れば、人間は健康になります。分かりきっていることなのです。アメリカにアンチエイジングのソサエティがあって、何十万人も会員がいて、皆、80歳や90歳になっても元気でやっていますが、要するに彼らは腹7分目。それだけなのです。
つまり、人間はエネルギーをどう使うかというと、生活代謝といって生活に使うエネルギーと寝ているときの基礎代謝があるのですが、生活代謝だけでエネルギーを使っていれば、人間は太りません。そうすると血圧は下がって寿命が延びる、というのは明らかなのです。なぜ、それができないのかといえば、それは辛いからです。
私はこの1年で8キロ減量しました。それは計ってはいないけれども、なんとなく生活代謝分で減らすのがいいだろうなと思って、考えてやりました。楽しく減量したのです。
どのように楽しくやっているかと言いますと、ビール一杯バーッと飲んだらダーッとあとは捨てます。料亭に行くと料理がダーっと出てくるから、一箸つけたら手の届かないところに置きます。皿がずっと固まって置かれると、料亭の女将が来て、「何かお気に入らないことでも」と、真剣な顔をしてくるわけです。「いや、気に入っているからここに置いているんだよ」と言うと、「どうして?どうして?」と聞いてくる。そこで、「だってこのお腹、この前来たときよりこんなに減っただろう」と言うと、「ちょっと待ってください」と言って1分もすると女の子をざっと連れてきて「教えて教えて」と、いうことになるわけです。これは自己顕示欲の強い私としては、非常に自己満足的な場面で、食べなくてもこれをやっているだけでハッピーになります。
個人個人、趣味は違いますから、それぞれの趣味に合わせて食べなくする。「楽しく食べなくする」という産業をつくれば大産業になります。健康創造産業になる。いろいろな可能性があるのです。
●「快適医学」の観点で健康産業を掘り起こす
「快適医学」ということを私は唱えています。医学は治療医学から予防医学へ。予防医学から健康増進医学へ。“amenity medicine”という言葉があって、厚生省は「生活改善薬」と訳しましたが、これは英語を分かっていません。“amenity”とは「快適」です。“medicine”とは「薬」の他に「医学」と言います。「快適医学」。老若男女、病気の人も健常者も皆、幸せになるという医学の考え方があるのです。
それは何かと言ったら、「楽しく健康になる」ということ。どのよ...