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ビールやパン、みそだけでなく、医薬品から環境まで

発酵は人類を救う(1)発酵産業の知られざる世界

小泉武夫
農学博士/食文化評論者/東京農業大学名誉教授
概要・テキスト
食通として有名な農学博士・食文化評論者の小泉武夫氏。「食あれば楽あり」の新聞コラムをはじめ、テレビやラジオでの活躍を通じてご存じの方も多いだろう。氏には多くのあだ名があるが、中でも有名なのが「発酵仮面」だ。発酵学の第一人者として自他ともに許す氏の持論は、「発酵が人類を救う」。ミクロンの巨人とも呼ばれる発酵微生物の力を教えていただく。(全3話中第1話)
時間:09:48
収録日:2015/11/09
追加日:2015/12/03
タグ:
≪全文≫

●生まれた時から「発酵」だった


 皆さん、こんにちは。私は、発酵学を専攻にしております発酵学者の小泉武夫です。

 私は生まれた時から「発酵」でして、実家が造り酒屋ですので、それで生業を立ててきた家に育った人間です。ですから、お酒だけではなく、みそや漬物も自分の家で造っていました。本当に発酵そのものの家でしたね。

 発酵については、一般の人に聞くと「みそ、しょうゆ、お酒、納豆、ヨーグルト、お酢、チーズ」あたりが出てくると思います。しかし、発酵産業は発酵食品だけではありません。むしろ、発酵の産業は食品の分野より大きいものが非常に多いのです。

 ただ、発酵は目に見えない微生物がやっていて、どちらかというとハードではなくソフトの仕事なものですから、あまりみんな目立たないわけです。ところがいま、発酵はものすごい勢いで伸びています。

 例えば、これは10月20日号(10月6日発売)の『財界』という雑誌です。表紙には、財界人ではない私が出ています。何かというと、財界も発酵に注目し始めている。発酵が日本の産業を支え始めたということで、『財界』が特集を組むというようなことになってきたわけです。


●発酵は何十兆円の規模を持つ大きな世界


 私はずっと発酵の研究をやってきましたが、日本の国民は発酵の世界をいままで本当に知りませんでした。私が初めて発酵の大切さを話したのは、NHKの教育テレビでした。10年以上前になりますが、NHK人間講座で1カ月お話ししました。

 それから、発酵という世界が皆さんに分かってきたわけです。そこで、いまなぜ『財界』が取り上げるのかというと、いまの発酵産業の総売上が何十兆円にも達しているからです。

 意外に思われるかもしれませんが、例えばビール。キリンビールやアサヒビール、サントリーのような大きなところが「大手5社」と呼ばれています。おそらく5兆円ぐらいはいっているのではないでしょうか。

 また、全国に1000社ぐらいある造り酒屋さんやおみそ屋さん、さらに全国のパン屋さんの売上も入ってきます。パンは、山崎製パン、フジパンなど、大きな会社が多いですね。それから、ミツカンを中心とした全国のお酢屋さんがあります。そして、おみそ屋さん。これも、マルコメなどいろいろな会社があります。さらにおしょうゆでもキッコーマンを中心に、大小の会社がある。...
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