●こういう社会をつくろう
「こういう社会をつくるんだ。こういう世界をつくるんだ。そこの世界のリーダーになるんだ。そういう主体性に立ってやっていくんだ。そのためには、われは何をなすべきか」ということを考えてもらわなくてはいけない。
●未来をつくる
松下政経塾は、そういういまだ生まれていない社会、いまだ形成されていない社会というものを理想的につくっていこうというわけです。創造していく。
この政経塾は、政治・経済について一つの大きな創造者にならなくてはいけない。主体的にそういう世界をつくっていき、日本をつくっていく。だから、極めて大きな目的です。
●国家経営かくあるべしと発表する
松下政経塾も、政経塾がこういう政治をするんだと、自ら政党をつくってやるのではないけれども、あくまでも塾であるけれども、塾の範囲は出ないけれども、塾の政治はこうあるべきであるという具体案をつくらなければいけない。それを塾で発表していくと。個々の政党は、そのいいところを採って、よりいい政党をつくったらいい。
けれども、単なる政治の良識を勉強するだけではいけないということで、政経塾は政経塾の「国家経営というものはかくあるべし」であると。それは普遍的に「かくあるべし」ではなくて、「日本の国はかくあるべし」だと。こういうものをやらないといけない。
そういう意味で、これからの勉強は、その方向に向かって進んでいく。だから、具体的な案をつくっていこうと思う。諸君を交え、諸君を参加させて、そして憲法はどうあるべきか、民主主義というものの議会はどうあるべきであるか、実際の政治の運営はこうあるべきだ、教育はどうあるべきである、ということを、いちいち具体案をつくっていく。
その仕事をやって、5年間に、「しからば、あなたがやってみなさい」と言う人もいないだろうと思うけれども、いたら、「やってやる」と塾生が寄ってやったら、たちどころにできてしまう。
政治の良識を涵養することをもって、まず松下政経塾の仕事だと思ったけれども、もう一歩進めて、政治の良識を涵養するだけでなく、もっと具体的に「政治はかくかくあるべき」という箇条書きをつくらないといけない。それを逐次発表していくことができるというのも、この塾の大きな仕事だと思う。
それで、これからの塾のあり方は、諸君にそういう仕事や研究の実情の理解とそれを作成する仕事をしてもらおうと思う。塾生は研究生になる。その研究をやってもらう。これはできるはずだ、やってみてくれ、こうやったらできるはず、君と君とはここにかかれ、とお互いに交換し、一生懸命関わっていく。君はこういう状態だと、そういう仕事に、実際に来年から入ろうと思う。
その他に、共通的な人間の常識や人間としての常識は、併せて涵養するけれども、本業はそうだと。本業はそういう政策の基礎を学ばないといけない、それをやらないと前へ進まない。
そして、3年生になったら全国に講演に回る。僕はもう、その前に隠居するから、諸君は現状の仕事をやらなければいけないから講演に回る。そして、他流試合にもなるし、勉強にもなるし、3年生、4年生、5年生は、もっぱら行脚する。3年生は国内、4年生、5年生は海外というように行脚する。それで、松下政経塾の政策は、われわれの国はこうつくったらいい、われわれの国はこうしたらいいなということをやる。そういうことをやらなければいけない。
今までは何気なしに政経塾というものをつくって、一般政治経済の良識を涵養をし、後は諸君が実地についてやったらいいと思ったけれども、実地についてやったらいいというだけでは少し無責任になると思う。ある程度具体的に、諸君の頭に入り込むように経験してもらい、なるほど、こうできるなと(得心してもらう)。
それで、僕は今もう88歳だから、そんなことをしたら笑うかもしれないけれど、私の仕事はこれからだと思っている。言葉がもつれて言えないが、思いというものは変わらない。諸君が代わりにやってくれるだろうと思うから、諸君に託することは非常に大なるものがある。諸君はそれを知ってもらわなければいけない。
●三つの精神「綱領・信条・七精神」/佐野尚見
松下幸之助さんは、ご存知のとおり、傑出した実業家であると同時に、哲理というか、思想家であるように私は思っています。
松下電器には「綱領・信条・七精神」があります。非常に難しいように思えますが、読んでいきますと、やさしいことが書いてあるのですね。それは、おそらく松下さんが、9歳から94歳までの85年間、働いてきたその考え方や実体験の中から出てきたものが、「綱領・信条・七精神」になっているということだと思います。
ということで、実際にそこで仕事をしていま...