●日本のグローバル化には、人材が必要だ
―― 日本企業でも、海外企業を買収することが普通になってきていますが、社内の遺伝子を変えていく作業を同時並行で行うところはなかなかありません。
藤森 大変な作業ですが、中の遺伝子を変えないと、外から入ってきた人に違和感があるのです。私がGEに入って違和感がなかったのは、異質なものやダイバーシティを受け入れるGEの文化や仕組みがあったからです。逆に、われわれがM&Aを行い、外国の人たちを中に受け入れるときには、彼らの違和感がないよう、グローバルに通じる文化を持っていないといけません。そのためには、社内の遺伝子をグローバルに通じるものにどんどん変えていかなければならない。そこで、リーダーシップ教育、人材の入れ替え、外国人の登用などによって遺伝子を組み換えていったのです。
―― 私が面白いと思ったのは、明確に社内の指標をつくり直し、人事や経理の仕組みまで変えていったことです。それをグローバル展開と同時並行できるトップはなかなかいません。
藤森 私には、「GEモデル」があります。もちろん、ある程度は日本流に置き換えていますし、私自身の哲学も入っていますが、基本的には25年間続けてきたGE流のモデルが頭に入っています。こうした一つのモデルが自分の中にあることが大事だと思います。その意味で、私が長くGEにいて、アメリカで戦ってきた経験は貴重です。そういったモデルを持った日本人がどんどん出てきたら、日本企業の変革の波はもっと大きくなるのではないかと思います。
―― 今のところは、本当に少数派ですよね。
藤森 でも、これからはもっと増えてくると思います。
―― 増えざるを得ないのですね。
藤森 そう思います。なぜなら、日本が大きく変わっていくために必要だからです。グローバル化の波は、もう抑えられません。今から20年後、30年後、その先はもっとグローバル化が進むでしょう。それに合わせて、われわれも変わっていかなくてはなりません。グローバル化に抵抗するのではなく、むしろ世界の先を行くようなグローバル化を日本で進めていかなければ、日本が世界をリードする立場にはなれないと思うのです。それには人材が必要です。その人材をどんどん育てていかなくてはならないと思います。
―― そういう意味で、藤森さんがLIXILでされているチャレンジは面白いです。
藤森 私自身も面白い。自分でも楽しんでいます。変革というのは夢があるし、停滞しないので楽しいものです。
●人が一番成長できるのは、ストレッチだ
―― LIXILの遺伝子がガラリと変わり、社内の仕組みがグローバル基準になってきた今、きっとどこかでパンと「不連続の連続」が起こるのでしょうね。
藤森 私はそう思います。実際、社内の遺伝子を入れ替えたことで、人材の面でも仕組みの面でも、今までとは全く違った形の企業ができ上がりつつあります。この新たなDNAの中で育った人たちが、これから5年後あたりに昇進していくとき、この会社は大きく変わっていくのではないかと思います。おそらくそうした変革者の卵たちの固まりは、すでに社内に現れてきているのではないでしょうか。その人たちが、5年後、10年後に大きな責任と権限を与えられたとき、この会社に大きな波ができると思います。
―― 藤森さんが社長に就任してからLIXILに入り、チャレンジの場を与えられ、教育を受けた人たちには大きなチャンスがありますね。
藤森 その通りだと思います。彼らはそのチャンスを生かさなくてはならないし、われわれは彼らに大きなチャンスを与えなくてはなりません。私がGEで若い時に与えられたように、自分ができると思うことの2倍や3倍大きいチャンスを与えることで、その人の潜在力をもっと引き出すのです。これからは、そうした人材登用をしなくてはなりません。
―― 「ストレッチ」という言い方をされていましたが、それが大事なのですね。
藤森 さまざまなリーダーシップ教育、クラスでの教育も確かに大事ですが、結局一番成長できるのは、思いきり自分を変えないと届かないような大きなアサインメントのもとで、自らの能力をストレッチすることです。自分の可能性を自ら引き出してあげるのが人の成長プロセスだと思うのです。もちろんリスクはありますが、そうした配置を行うことで人を大きく成長させていくのが、マネジメントの仕事だと思います。
●アメフトはビジネスに通じるところがある
―― ところで、ぜひお聞きしたかったことがあります。アメリカンフットボールの仕組みは、マネジメントに通じるところがあるのでしょうか。というのは、東京大学アメリカンフットボール部のOBには、富士フイルム会長の古森重隆さん、10MTVでもおなじみの東京大学元総長の小...