●知見を増やすための海中ロボットの活躍
前回、伊平屋北フィールドで、JAMSTEC(海洋研究開発機構)が地球深部探査船「ちきゅう」で掘って、いろいろ新しいことを発見したと申し上げました。これはとても重要です。実際に「海のジパング計画」で、2014年7月、計画が始まったときに、新たに掘りました。つまり、伊平屋北フィールドというのは、ようやく分かってきたのです。
何を申し上げたいかというと、海底熱水鉱床に関するわれわれの知識はあまりにも少ないのです。前々からずっと、この講義の始めから言っていることです。なので、とにかく熱水鉱床の成因などの科学的知見を速やかに増やさなくてはいけない。「当たるも八卦、当たらぬも八卦」などと、あっちこっち適当に掘っていればいい、といったことをやっていてはいけない。「ちゃんと必ず当たる!」というような調子の知識をわれわれは持たなければいけない。そのためには、一生懸命調査、あるいは研究をしなくてはいけませんね、というわけです。
調査するための仕立ては、この3段階です。まず、海底地形を測量船が測ります。これはマルチビームソナーという道具で測るのですが、そうすると海底の地形が分かります。この地形は、どういう具合で分かっているかというと、おおよそ深さの2パーセントの水平分解能で分かります。それは、マルチビームソナーの能力です。つまり、1000メートルの上から測ると、20メートルに1個点があるように示されることで分かります。つまり、20メートルよりも小さいものは、ベタッとなってしまってよく分からないのです。ですから、20メートルより大きなスケールのものは、マルチビームソナーで分かる。
しかし、それでは熱水チムニーがどこにあるとか、細かいことが分からないじゃないか、ということになります。そうすると、どうすればいいかというと、このソナーの精度を上げることは、もう技術的にはほとんどできないので、距離を10分の1にします。つまり、1000メートル上から測っていたのを、ロボットが出かけていって、100メートルの高度でいけばいい。そうすると、10分の1になるから、今度は2メートルのスケールでもでこぼこが分かるということになります。これが、航行型の自律型海中ロボットを使うところです。
そうすると、もっと近づきたくなる。もっと近づくと地形が出っ張っているので、走り回るロボットだと危険だから、今度はホバリング型AUV(自律型無人潜水機)が出かけていって、周りを走り回って細かいことを調べる。こうすれば、いけるのではないか。実はこれは、私が10年以上前に立てた作戦なのですが、では、これを本当にSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)でやりましょうという気になってきたわけです。
これは「この航行型ロボットはこうやって走り回りますよ」というアニメーションのようなものです。狭いところをチョロチョロチョロっと、この小さいのが走り回るわけです。こうすれば、ロボットたちが活躍して、今までできなかったことや分からなかったことが、よく分かるようになるのではないか、というわけです。
●複数機のロボットの同時運用が鍵となる
この図は、今から6年前、2010年、SIPが始まる4年ぐらい前に、どうすれば熱水がもっと開発できるか、ということのために描いた全体トータルプランニングなのです。前回話した基盤ツールというのがここにあるのですけれども。大雑把な地形、2メートルオーダー(単位)、センチメートルオーダーの観測をして、さらにはロボットたちを群れで走らせ、海底地下の観測をアレーを使ってやります。それから、ブルドーザーのようなもので掘って、さらにコア(土壌サンプル)を取るというトータルプランニングを企画していたのですが。ようやくここまでやるような全体的な大きなプログラムができたと思っていいかと思います。
このプログラムをやるための作戦はいろいろあるのですが、ロボットたちをたくさんオペレーションしなければならないのです。「ロボット複数機を同時に運用しよう」というのは、実は私がもう10年ぐらい前から言い続けていることなのです。実際にこれは、あとの講義で申し上げますが、私どもは複数のロボット、2台や3台ですけれども、それを同時に海に突っ込む。そうすれば効率は2倍になるわけです。そういったことを目指した開発をやっています。
また別のプログラムがあります。これは、文部科学省がやっている「クレスト」というプログラムなのですが、このプログラムでは、これも群ロボットなのですが、ホバリング型のロボットがたくさん走り回って、海の中を詳細に調査をするというものです。「それ行け!」という感じでやっているわけです。これは5年前からやってい...