ナノテクノロジーで創る体内病院
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
ナノマシンによる投薬は抗がん剤の副作用すら緩和する
ナノテクノロジーで創る体内病院(3)副作用なきがん治療
片岡一則(ナノ医療イノベーションセンター センター長/東京大学名誉教授)
ナノマシンを用いたがん治療は、膵臓がんや脳腫瘍のような薬が届きにくいがんにも有効だ。また抗がん剤で問題となる副作用も、ナノマシンによる投薬ならば解決可能だ。研究を進める東京大学政策ビジョン研究センター特任教授でナノ医療イノベーションセンター長の片岡一則氏によれば、数年以内には様々な抗がん剤を乗せたナノマシンが承認され、使用可能になるという。(全5話中第3話)
時間:14分29秒
収録日:2016年10月24日
追加日:2017年3月8日
≪全文≫

●薬が届きにくいがんも、ナノマシンで治療可能になる


 ミセル型ナノマシン、組織の中にまで薬が高く浸透していきます。そのため耐性がんだけではなく、前回お話しした薬が到達しにくいがんでも、同じようにやっつけることができるのではないかと考えられます。そこで次に調べたのが、膵臓がんです。

 膵臓がんは、5年生存率が20パーセント以下という、非常に治りにくいがんです。いろいろな理由がありますが、一つには「間質」といって繊維質がすごく多いのです。繊維質が多いため、薬がなかなか到達できないという問題があります。

 左の写真は、ヒトの膵臓がんの病理組織像です。青い部分ががん細胞の塊、クラスターです。赤い部分が間質という繊維です。緑が血管です。このように、非常に不均質な構造をしていることが分かります。さらに血管は、この繊維質の中にしかありません。そのため、仮に薬が血管から出たとしても、この繊維質の中をずっと通っていかないと、がんの組織、細胞にまで到達できません。

 今までドラッグデリバリーでよく使われていた、リポソームという物質がありますが、これは大きさが100ナノメートルほどです。ミセルより少し大きい。しかし実際にこれを投与すると、血管の周りで全て捕まってしまい、薬が細胞の中に入れないことが分かりました。

 ところが、この自動会合でつくる高分子ミセルであれば、大きさをきれいにコントロールすることができます。そこで、大きいミセルと小さいミセルをつくって比較をしました。先ほどと同じように、生体内の共焦点顕微鏡で観察をしています。30ナノメートルの小さい方は、緑の蛍光色素、70ナノメートルの大きい方は赤の蛍光色素で染めています。両方を混ぜると黄色です。そのため血管の中が黄色く見えます。このがんの中を見ていただくと、完全に緑色になっています。30ナノメートルのミセルだけが、がんの中にどんどん入っていっていることが分かります。

 赤はどこにいるのかというと、みんな壁の所にへばりついてしまい、中まで入っていけないのです。サイズを精密制御することで、薬がなかなか届かない膵臓がんの中にまで入っていけることが分かりました。


●大きさを制御すれば、膵臓がんも治療できる


 次に、これをさらに正確に証明するため、次の実験を行いました。SPring-8というものを聞いたことがあるかと思います。これは...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「健康と医療」でまず見るべき講義シリーズ
知られざる「脳」の仕組み~脳研究の最前線(1)脳科学と「ミクロのマクロの隔たり」
脳が生きている、死んでいるとは?最新研究で迫る脳の秘密
毛内拡
50代からの親の介護~その課題と準備(1)突然やってくる介護の問題
「親の介護」の問題…優しさだけでは続かない
太田差惠子
テロメアから考える「アンチエイジング」(1)老化とテロメアの関係
テロメアの長さが「がんリスク」と「老化」のカギを握る
堀江重郎
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
オートファジー入門~細胞内のリサイクル~(1)細胞と細胞内の入れ替え
ノーベル賞受賞「オートファジー」とは?その仕組みに迫る
水島昇
歯科の健康づくり(1)「噛める」ようになると人が変わる
噛み合わせや歯の健康が人間の健康にとっていかに大事か
河原英雄

人気の講義ランキングTOP10
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
核DNAデータで日本人のルーツを探る…アフリカから日本まで来た行程と時期は?
斎藤成也
「満洲」から考える日本とアジア(6)21カ条の要求と第一次世界大戦
日本が中国に出した「21カ条の要求」の罠と必然…不安定な満洲利権を手にした日本が直面した難題とは?
宮脇淳子
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(1)神とは何か、そして天皇とは?
日本と世界の「神と信仰」の違いは?…そして天皇の大切な役割
橋爪大三郎
アメリカの理念と本質(1)西洋文明の行き着いた先と三つの建国
アメリカの理念と本質とは?…まず「三つの建国」から原点に迫る
中西輝政
「ホメロス叙事詩」を読むために(7)オデュッセウスの冒険
ホメロスの『オデュッセイア』が描く苦難と誘惑の冒険譚
納富信留
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
資産運用の思考法…経済や市場の動きをどう読むか
市場予測のポイント…短期・中期・長期の視点と歴史的洞察
養田功一郎
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(5)恐るべき台湾への「浸透」
浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
垂秀夫