●人口ボーナス期に効を奏した日本の経済発展ルール
今日は人口ボーナス期とオーナス期における、経済発展しやすいルールの違いについてお話ししていきたいと思います。
スライドを見ていただくと、上は人口ボーナス期、下はオーナス期に経済発展しやすいルールになっています。この特徴をそれぞれ三つずつご説明したいと思います。
まず、人口ボーナス期の最初のルールは、こう言ってしまうと身も蓋もない言い方になりますが、なるべく男性ばかりで働いた方がいいということです。この時期は重工業が主体で危険を伴う仕事が多く、労働力は余っていますから、なるべく男性がたくさん労働市場に出られた方がいい。そのために家庭内で無償労働をしてくれる女性がいると、効率が良い。ということで、男性と女性の性別役割分担を設定した方が、社会としては効率が良いといえます。
二点目は、なるべく長時間働かせた組織が勝つということです。(ボーナス期は)時間の単価が安く、労働力が余っています。そしてお客様はまだサービスや商品に飢えている状況ですから、「早く・安く・大量に」提供することが求められます。そこで、「同業他社が明日納品するなら、うちは残業をしてでも今日納品」というように、「先にお手元に届ける」「エリア展開を早くする」「他店舗が7時に閉めるなら、うちは8時9時10時まで開ける」というように時間を伸ばして面(エリア)を広げると、その分、お客様を獲得できるといった「国取り合戦」をしている時期です。時間はその後の成果に直結するという特徴があります。
三点目は、なるべく同じ条件の人をそろえた組織が勝つということです。均一なものをたくさん生み出そうというときには、「右向け右」で同じように動いてくれる組織が有利になります。日本の場合、労働時間に上限がないことや、辞令一枚で人が転勤させられるという世界的にも珍しいルールを持っています。これによって社員に無理を課します。(社員としては)労働力が余っているときなので、無理な条件でもそれを飲まなければふるい落とされてしまうので、それを必死に飲むことになります。そして、転勤で3カ所ほど辛いところを経験すれば少し昇進させてもらえる。そういったことを繰り返すうちに、どんどん従順化していくのです。
おそらく参覲交代からアイデアを得たのではないかと思いますが、これらの手法により、一律管理のしやすい忠誠心の高い組織をつくることができたため、日本は人口ボーナス期に大成功したといわれています。同じボーナス期に中国が稼いだ額の約3倍も日本は稼いだといわれているのです。
●人口オーナス期の戦略には、別の三つのルールが必要
ですので、この時期、こうした三つの戦略は決して間違いではないのです。ただ、人口ボーナス期はすでに終わっており、現在は人口オーナス期に入っています。オーナス期には、人材の奪い合い時代に突入していきます。ストを起こされて休店状態に陥ってしまうというニュースもあったと思います。かつてであれば、他店舗から応援を呼ぶとすぐに開店できてしまうので、「お前の代わりなんかいくらでもいるんだ」という状況でした。
しかし、現在はもう企業と従業員のパワーバランスが逆転している状態ですので、いかにいい人を採用するかが重要で、人が獲得できなければビジネスは成り立たないという状態になりました。そうすると、人口オーナス期に経済発展しやすい働き方の三つのルールが浮上してきます。
まず一点目は、なるべく男女をフル活用することです。パイが小さくなっているのに、その半分にだけこだわっていると、いい人は採れません。男女双方からいい人を採るのです。そして、その半分が数年で辞めていってしまったり、モチベーションが下がったりしないように、男女どちらも成長させ続けるような組織であることが求められます。
●「女性活躍推進法」の施行で生まれた企業データベース
そのときに重要になってくるのが、2016年4月に施行された女性活躍推進法です。女性活躍推進法をスライドで見ていただくと、このような感じになります。
男女の平均勤続年数の差や離職率の差、女性管理職の比率、女性役員の数、平均残業時間などが業界ごとに比較されて、厚生労働省のサイトに載っています。301人以上の企業では、これらの公開が義務化されています。
1項目以上開示すればいいとなっていますが、スライドのF社さん(本来は現実の会社名が入ります)のように1項目しか開示していなければ、当然学生からは「ブラック企業だ」と見られてしまいます。また、女性役員が0となっていれば、女子学生からは「この会社には女性にだけ『ガラスの天井』があるから、入っても昇進できない」と好まれないことになります。
カルビーさんなどは、女性役員を...