「ものがたり」のあるコンプライアンス
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プライドと切り離されたコンプライアンスは必ず失敗する
「ものがたり」のあるコンプライアンス(3)会社法
國廣正(弁護士・国広総合法律事務所パートナー)
国広総合法律事務所パートナーで弁護士の國廣正氏によれば、会社法施行規則第100条は、多くの企業に最低限共通するものを単に並べただけのものだ。この条文に頼っている限り、コンプライアンスはつまらないものになってしまう。三菱自動車のリコール隠しの教訓を踏まえ、なぜ自分たちの会社があるのかという本質に立ち返り、リスク管理を自分の頭で考えるべきだ。(全7話中第3話)
時間:9分25秒
収録日:2017年8月24日
追加日:2017年10月14日
≪全文≫

●三菱自動車にとってコンプライアンスはやらされるものだった


 次は失敗例の2つ目です。これは三菱自動車のリコール隠し事件です。ご存じの通り、データ偽装が行われていたことが2004年に発覚し、もはや単独では存立できないということになって、日産の傘下に入ることになったという事件でした。当時、三菱自動車は存亡の危機を迫られて、徹底したコンプライアンスを真面目に行いました。

 当時私は、テレビでリコール隠し事件後のニュースを見ていて、感じたことがあります。工場見回り隊が「三菱自動車は生まれ変わります。リコール隠しをしない体質にするんです」と言って、工場の中を、棒こそ持っていないけれども、腕章を巻いて見回っているのです。「とにかくおまえたち、不正をしていないか」と。これでは元気は出ないだろうなと思いました。そのうちに、リコール隠しは一回限りのことではなく、これまでもずっと行われていたことが明らかになったのです。

 私は参加していませんが、三菱自動車事件でも第三者委員会が設けられ、報告書が出されました。そこには非常に面白いことが書かれています。今後の再発防止のためのコンプライアンス施策の部分に、コンプライアンスはもうない、とあったのです。それまで三菱自動車にとってコンプライアンスは、やらされるもの、こなすものでした。コンプライアンスのせいで、屋上屋を架すようにどんどん息苦しくなっていき、何のために自動車会社で働いているのか分からなくなってしまったのです。良い車をつくって、お客さんに喜んでもらいたいという気持ちが消え失せてしまっていました。こうした本質をないがしろにしてコンプライアンスをしても意味がない、と書かれていたのです。


●プライドと切り離されたコンプライアンスは必ず失敗する


 全くその通りだと思います。前回のNHKの記者のプライドの話と同じで、自動車づくりのプライドが問題です。ルールで縛ってリコール隠しをやめる、ということではありません。プライドを持つということは、自分たちはなぜこの会社に入ったのか、この会社で何がしたいのかというストーリー(物語)を持つということです。このWHYを真剣に考えていれば、偽装などしないはずです。

 しかし、この本質に至らないまま、ルールでがんじがらめにしようとするのはやはり間違いで、不祥事は繰り返されてしまいます。三菱自動車のコン...

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