「ものがたり」のあるコンプライアンス
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
プライドと切り離されたコンプライアンスは必ず失敗する
「ものがたり」のあるコンプライアンス(3)会社法
経営ビジネス
國廣正(弁護士・国広総合法律事務所パートナー)
国広総合法律事務所パートナーで弁護士の國廣正氏によれば、会社法施行規則第100条は、多くの企業に最低限共通するものを単に並べただけのものだ。この条文に頼っている限り、コンプライアンスはつまらないものになってしまう。三菱自動車のリコール隠しの教訓を踏まえ、なぜ自分たちの会社があるのかという本質に立ち返り、リスク管理を自分の頭で考えるべきだ。(全7話中第3話)
時間:9分25秒
収録日:2017年8月24日
追加日:2017年10月14日
≪全文≫

●三菱自動車にとってコンプライアンスはやらされるものだった


 次は失敗例の2つ目です。これは三菱自動車のリコール隠し事件です。ご存じの通り、データ偽装が行われていたことが2004年に発覚し、もはや単独では存立できないということになって、日産の傘下に入ることになったという事件でした。当時、三菱自動車は存亡の危機を迫られて、徹底したコンプライアンスを真面目に行いました。

 当時私は、テレビでリコール隠し事件後のニュースを見ていて、感じたことがあります。工場見回り隊が「三菱自動車は生まれ変わります。リコール隠しをしない体質にするんです」と言って、工場の中を、棒こそ持っていないけれども、腕章を巻いて見回っているのです。「とにかくおまえたち、不正をしていないか」と。これでは元気は出ないだろうなと思いました。そのうちに、リコール隠しは一回限りのことではなく、これまでもずっと行われていたことが明らかになったのです。

 私は参加していませんが、三菱自動車事件でも第三者委員会が設けられ、報告書が出されました。そこには非常に面白いことが書かれています。今後の再発防止のためのコンプライアンス施策の部分に、コンプライアンスはもうない、とあったのです。それまで三菱自動車にとってコンプライアンスは、やらされるもの、こなすものでした。コンプライアンスのせいで、屋上屋を架すようにどんどん息苦しくなっていき、何のために自動車会社で働いているのか分からなくなってしまったのです。良い車をつくって、お客さんに喜んでもらいたいという気持ちが消え失せてしまっていました。こうした本質をないがしろにしてコンプライアンスをしても意味がない、と書かれていたのです。


●プライドと切り離されたコンプライアンスは必ず失敗する


 全くその通りだと思います。前回のNHKの記者のプライドの話と同じで、自動車づくりのプライドが問題です。ルールで縛ってリコール隠しをやめる、ということではありません。プライドを持つということは、自分たちはなぜこの会社に入ったのか、この会社で何がしたいのかというストーリー(物語)を持つということです。このWHYを真剣に考えていれば、偽装などしないはずです。

 しかし、この本質に至らないまま、ルールでがんじがらめにしようとするのはやはり間違いで、不祥事は繰り返されてしまいます。三菱自動車のコン...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
重職心得箇条~管理職は何をなすべきか(1)時代に請われ、時代に応えた佐藤一斎
部下を育てるには、まず佐藤一斎に学べ!
田口佳史
ストーリーとしての競争戦略(1)当たり前の重要さ
柳井正氏の年度方針「儲ける」は商売の本筋
楠木建
メンタルヘルスの現在地とこれから(1)「心を病む」とはどういうことか
なぜ「心の病」が増えている?メンタルヘルスの実態に迫る
斎藤環
サントリー流「海外M&A」成功術(1)ビーム社買収の裏側
私が直面したビーム社買収の「壁」
新浪剛史
日本企業の弱点と人材不足の克服へ(1)膠着する日本経済の深層
日本経済の行き詰まりをもたらした2つの大きな理由とは
西山圭太
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治

人気の講義ランキングTOP10
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発
日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道
川口淳一郎
「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉
天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制
片山杜秀
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
モンゴル帝国の世界史(2)チンギス・ハーンのカリスマ性
自由な多民族をモンゴルに統一したチンギス・ハーンの魅力
宮脇淳子
DEIの重要性と企業経営(4)人口統計的DEIと女性活躍推進の効果
日本的雇用慣行の課題…女性比率を高めても業績向上は難しい
山本勲
睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(5)シフトワークと健康問題
発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る
西多昌規
「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機
「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機
納富信留
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(1)イノベーションと価値創造
価値創造において重要なのは未来から現在を見るという視点
遠山亮子
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(3)これからの世界と底線思考の重要性
同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」
佐橋亮