「ものがたり」のあるコンプライアンス
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創業時を思い出せ!巨額損失を公表した会社の決断
「ものがたり」のあるコンプライアンス(5)損失の公表
経営ビジネス
國廣正(弁護士・国広総合法律事務所パートナー)
国広総合法律事務所パートナーで弁護士の國廣正氏が、バブル崩壊後の巨額の損失を公表することに決めた会社を取り上げ、コンプライアンスの成功例として紹介する。危機的な状況を恐れず、創業時の思いに立ち返って損失の公表を決めたその会社の会長の決断は、市場で好意的に受け止められた。何のために仕事をしているのかという、ストーリーを持って危機に臨むことが重要だ。(全7話中第5話)
時間:7分42秒
収録日:2017年8月24日
追加日:2017年10月16日
≪全文≫

●「損失飛ばし商品」に日本企業は飛び付いた


 成功例の2つ目は、B社の事件です。これも私自身が担当した事件ですので、匿名化させてください。1990年代のバブルの頃、日本のメーカーの多くは財テクに走りました。地道に物を作って利益を上げるよりは、訳の分からない証券取引に手を出して、一発でぼろもうけをしようという発想がありました。メーカーはこぞって、本業そっちのけで財テクに走ったわけです。

 ところが、バブルがはじけると、その財テクは全部損失に変わってしまいました。しかも100億円単位の損失です。そうすれば、損失を公表するかどうか、財務諸表に出すか出さないかという問題が当然出てきました。

 2000年ごろ、いくつかの外資系の証券会社が「損失飛ばし商品」を売り出しました。100億円の損があったとしても、タックスヘイブンであるケイマン諸島やバミューダ諸島のSPC(特別目的会社)を使って、デリバティブ取引を行い、ぐるぐる回すとあら不思議、損が消えてしまう、というのがこうした商品の名目でした。もちろん、損は消えません。ぐるぐる回すと他のところに損が移るので、会計上書かなくても済むというだけの話です。要するに、ごまかしの商品です。最終的に、飛ばした損失はちゃんと自分のところに戻ってくるわけですから、損を一時的に見えなくするだけにすぎません。しかし、こうした「損失飛ばし商品」に日本企業は飛び付きました。


●損失の開示に一番反対したのが監査法人だった


 B社の事件もこれに関係します。B社は、こうした商品で飛ばしている損失を、200億円も抱えていました。そこで、私のところに相談に来たわけです。とんでもない話です。隠していたら200億円の損が消えるはずもなく、どんどん利息が付いて、数年後にはもっと大きくなって戻ってきます。当然、公表して会計処理するしかないというのが、私の意見でした。しかしB社は、そうすれば株価が暴落すると反対します。

 しかも、2000年前後当時の会計基準は時価主義に移っておらず、理屈を付ければ何とかへ理屈が立つというような、非常にグレーな処理が可能でした。監査法人もそれで構わないというような時代でした。B社についていえば、損失の開示に一番反対したのが監査法人です。自分たちがお墨付きを与えたのに、今さらふたを開けられるなんてたまったものではない、というわけです。私に相談を持ちかけた...

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