●第三者委員会の衣をまとって、ごまかす人たち
3番目の成功例は、牛丼のすき家です。2014年ごろ、いわゆるワンオペ(ワンオペレーション)といった過酷労働の問題で、すき家がたくさん閉店をするという事件がありました。私は第三者委員会の委員の1人として調査報告書を書き、記者会見にも出席することになりました。
すき家は、1年365日24時間営業であるということを売りにしてきました。出店のペースはどんどん早くなり、ついには吉野家はもちろんのこと、マクドナルドよりも出店が多くなるという状況でした。つまり、外食産業日本一になったのです。ところが、人が足りず、ワンオペ、つまり1人で店の全ての業務を行うという店舗が多くなりました。あるいは、24時間連続勤務を「1回転」と呼びますが、中には2回転する店員も出てきて、大変問題視されたわけです。そこで、ゼンショーのCEOであり創業者である小川賢太郎氏に依頼されて、久保利英明弁護士が委員長になり、私たちは第三者委員会で徹底調査することになりました。
第三者委員会というと、不祥事が起きた企業で徹底して事案を究明することが目的です。言ってみれば、外科手術をして回復させるのが、本来のあり方です。ところが最近は、そういう正しい意味での第三者委員会もある反面、第三者委員会の衣をまとって、ごまかすようなところも出てくるようになりました。
●東芝の第三者委員会には第三者性が全くなかった
すき家の話からはずれますが、良くない第三者委員会の典型例は、東芝の第三者委員会です。東芝は2015年、不正会計を行っていたことが大問題になり、SESC(証券取引等監視委員会)の検査・調査を受けました。第三者委員会が設けられ、第三者委員会報告書も書かれて、結局3人の社長の首が飛ぶことになりました。一見、第三者委員会で徹底した外科手術がなされたかのように見えますが、私たちはまやかしだと思いました。
というのも、膨大な量の調査報告書が出されましたが、その最初には「われわれは東芝から依頼された事項のみを調べます」といった内容のことが書かれているからです。つまり、原子力発電については依頼されていないから調べないと、冒頭に断ってあるようなものです。しかし、一番問題なのは原子力です。常識的に考えれば、第三者委員会が第三者として、つまり客観的な立場から、不正や会計上の問題を調べようとす...