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Googleに代表されるビジネスモデルとは?

プラットフォームビジネス(1)ビジネスモデルを理解する

柳川範之
東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授
情報・テキスト
プラットフォームビジネスは、21世紀に入って最も注目を集めているビジネスモデルだろう。アマゾンやグーグル、アップルなど、世界を股に掛ける企業がその代表例だ。急速なその発展と自在な事業横断をもたらすビジネスモデルの特徴、今後の発展と考慮すべき問題について、東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授の柳川範之氏に解説いただく。(全3話中第1話)
≪全文≫
 今日は、「プラットフォームビジネス」と呼ばれているものについて、少し解説をしていきたいと思います。プラットフォームビジネスは、最近ではかなりポピュラーに使われる言葉になってきました。典型的にはグーグルやアップル、アマゾンなど、世界的な大企業がとっているビジネスモデルを指すことが多いのです。

 グーグルなどが典型的ですが、自社のさまざまなネットワーク上に乗せて、消費者や利用者の利便性を高めていくビジネスモデルになっています。そこでは、地図の提供や電子メールのサービス、検索の利便性を高めるさまざまなサービスなどが、場合によっては無料で提供されます。こういうものを使ってもらうことでグーグル自体を使う人を増やす。それがビジネスを拡大させていくという形になっています。他の会社でも、こういうことを行っている企業はずいぶん出てきています。


●利用者が増えれば事業者が増える、「規模の経済性」


 このビジネスモデルの基本を整理すると、プラットフォームと呼ばれる大きな活動のベースをつくり、その上でさまざまなサービスや製品を、場合によってはかなり異なるように思われるものまで提供します。その結果、消費者の利便性が高まり、消費者はますますそのプラットフォームを利用するようになる。こういう形でビジネスを拡大させていくものを指します。

 場合によっては無料で提供されるので、消費者の方にとっては利便性が高い。したがって、そのプラットフォームをどんどん利用することになる。消費者プラットフォームに集まってくると、正規なサービスを提供しようという人(事業者)たちも、そのプラットフォームを使って消費者にアクセスしようとする傾向が、かなり高まります。

 つまり、消費者が集まると企業者が集まる。会社が集まって、製品やサービスが提供されるようになると、ますます消費者がそこに集まってくる。経済学でいわれる「規模の経済性」が広がっていくところに、プラットフォームビジネスのサービスの特徴があります。もう少し詳しくいうと、消費者側の規模の経済性、それからサービスや製品を提供する事業者側の規模の経済性、この両方が相まっていくことで、プラットフォームがどんどん広がっていく。こういう特徴を持つことになります。

 もちろんプラットフォームを提供する会社の方も、消費者に集まってもらえるように、あるいはさまざまな事業会社がそのプラットフォームを使ってくれるように、便利なプラットフォームを提供するように努めることになります。そのプラットフォームの使い勝手の良さが規模の経済性を拡大させて、利用者および消費者、それから事業者を増やしていく。こういうメリットが発生することになります。


●シェアリング・エコノミーも、プラットフォームの仲間


 グーグルだけではなく、例えば最近「シェアリング・エコノミー」といわれているビジネスモデルでも、こういうプラットフォームビジネスが提供されるようになっています。このビジネスモデルは「マーケットプレイス型」といわれる場合も多いのですが、広い意味ではプラットフォームビジネスに分類できます。

 なぜなのかを考えるために、例えばAirbnb(エアービーアンドビー)やUber(ウーバー)など、このビジネスの典型となる会社を見てみましょう。利用者が集まってくると、ウーバーに車を提供する一般のドライバーが増えたり、エアービーアンドビーに提供する部屋が増えてくる。ドライバーや部屋が増えてくると、ますます利用する人たちも増えるという形で、そのプラットフォームを利用する人が増えると、提供するドライバーや部屋などの事業者も増えます。

 シェアリング・エコノミーの場合、厳密には事業者ではなく個人の提供者であるところが特徴的ですけれども、いずれにせよサービスや製品を提供する人が増える。そういう人たちが増えると、ますますプラットフォーム(マーケットプレイス)を利用する人が増える。こういう循環があるため、シェアリング・ビジネスを提供する事業も、広い意味ではプラットフォームビジネスということができます。

 こういう事業を展開する人が増えているのが、特徴です。この事業が増えている大きな理由は、一つには、大きな設備投資をしなくても、手数料などが入ってきますし、利用者が増えてくれば、どんどん手数料が入ってくるビジネスモデルだからです。

 極端にいえば、利用者と事業者をうまくマッチングさせていくことができれば、手数料が入ってきます。したがって、必ずしも大きな工場を造ったり、研究開発をしたりするような設備投資は必要ありません。うまく利用者を増やすことができれば、それによって手数料がどんどん増えてくる。利用者が増えてくれば、利用者やサービス提供者はますます雪だるま式に増えてきま...
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