比較制度分析とは何か
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
経営者はステイクホルダーに方向性を示さなければならない
比較制度分析とは何か(2)企業とステイクホルダー
谷口和弘(慶應義塾大学商学部教授/南開大学中国コーポレート・ガバナンス研究院招聘教授)
比較制度分析の創始者、青木昌彦教授は企業をステイクホルダーの連合体として捉えていた。経営者はステイクホルダーに対してビジョンを提示し、制度的補完性のある組織をデザインしなければならない。慶應義塾大学商学部教授の谷口和弘が、比較制度分析から見たフォード・システムについて解説する。(全5話中第2話)
時間:12分02秒
収録日:2017年11月2日
追加日:2018年1月28日
≪全文≫

●企業は資源の集合体であり、経営組織である


 企業に関しては、エディス・ペンローズという経済学者が、別の角度から大切な指摘をしています。彼女はテンミニッツTVで以前お話した、「ダイナミック・ケイパビリティ」という戦略経営の分野において重要な学者です。

 彼女は1959年に『会社成長の理論』を書き、戦略の分野に非常に大きな影響を及ぼしてきました。ロナルド・コースは企業を権限メカニズムとして分析しましたが、彼女によると、企業は資源の集合体、さらには経営組織だということになります。経営組織ですから、経営者は資源配分を行わなければなりません。私たちはよく企業を人・物・金・情報として捉えますが、これは暗黙のうちに、資源の集合体だという見方を共有しているということです。

 資源はステイクホルダーと呼ばれる人々から集められます。ステイクホルダーとは、株主や従業員、経営者です。株主は企業に対して資本を提供し、従業員は労働力を提供します。そして、経営者は専門的な経営能力を提供します。こうした形で企業の活動に対して影響を与え、企業の活動からも影響を受ける、そうした主体のことを総括して、ステイクホルダーと呼ぶわけです。


●企業はステイクホルダーの連合体である


 青木昌彦教授も企業について考えていました。それは比較制度分析のまさに嚆矢(こうし)となる見解です。1984年の『現代の企業』という著作では、比較制度分析という言葉は使われていませんが、企業や経営者の役割が論じられています。青木教授によれば、企業はステイクホルダーの連合体です。

 そこでは経営者の役割は、中立的なコーディネーターです。ステイクホルダーが協力することによって、何らかの便益が生まれます。専門的な用語では「組織準レント」と呼ばれますが、その分配をめぐる交渉の場が企業だというのです。経営者はその分配に当たって交渉役や分配役を果たしているということです。青木教授の研究の非常に面白いところは、経営者がそのような役割を果たした結果、ステイクホルダーの連合体としての企業には、いろいろな形が出てくるということを示した点にあります。

 従来の経済学では、株主主権が中心的な考え方でした。株主がレントを非常に多く取るものとして考えられていました。しかし、こうした株主主権の新古典派型に対して、経営者がレントを取るものと考える経...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
会社人生「50代の壁」(1)“9の坂”とまさかの坂
サラリーマン人生「50代の壁」を乗り越える生き方
江上剛
野獣の経営、家畜の経営(1)経営センスが育つ土壌
ファーストリテイリングで経営者が育つ理由
楠木建
ストーリーとしての競争戦略(1)当たり前の重要さ
柳井正氏の年度方針「儲ける」は商売の本筋
楠木建
マザーテレサとの出会い
人生を変えたマザーテレサの言葉…あの人たちはキリストだ
上甲晃
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
バブル世代の現実とこれからの生き方
バブル世代は「バブル崩壊世代」、苦労の先に見えるものがある
江上剛

人気の講義ランキングTOP10
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
平和の追求~哲学者たちの構想(3)サン=ピエールとモンテスキュー
「国連」の発想の源は?…一方、小共和国連合=連邦構想も
川出良枝
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
生成AI「Round 2」への向き合い方(2)ハードで動くCopilot
Microsoft Copilotの革新性…想像がつかない世界に
渡辺宣彦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治