比較制度分析とは何か
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
経営者はステイクホルダーに方向性を示さなければならない
第2話へ進む
制度の生成や変化に注目する「比較制度分析」
比較制度分析とは何か(1)制度とは人々の共有予想である
経営ビジネス
谷口和弘(慶應義塾大学商学部教授/南開大学中国コーポレート・ガバナンス研究院招聘教授)
慶應義塾大学商学部教授の谷口和弘氏が、比較制度分析の基本的な考え方を解説する。比較制度分析とは、制度の生成や変化に注目し、それらを比較して分析する方法である。スタンフォード大学の経済学者青木昌彦教授らを中心に発展してきた研究分野であり、近年では2011年の福島第一原発事故の分析にも用いられている。(全5話中第1話)
時間:10分59秒
収録日:2017年11月2日
追加日:2018年1月26日
≪全文≫

●比較制度分析は制度の生成や変化に注目する


 今回は「比較制度分析とは何か」について、お話しさせていただきます。比較制度分析をする際、注目するのは制度です。制度は安定した状態です。したがって、比較制度分析とは、安定した状態を比較して分析するということで、制度がどうやって生まれてくるのか、そしてそれがどうやって変わるのかといった、制度の生成や変化に注目する考え方です。

 比較制度分析の対象として、2011年3月に福島で起きた原発事故を分析することも可能です。福島を取り巻く制度や歴史、あるいは地球の持続可能性の問題やエネルギーの環境問題について、比較制度分析を用いることができるのです。

 以前テンミニッツTVでは、ダイナミック・ケイパビリティについてお話ししました。ダイナミック・ケイパビリティは、変化を生み出すものです。変化するのですから、その状態は不安定な状態です。つまり、ダイナミック・ケイパビリティとは不安定な状態を生む力であり、企業家精神はその一例です。戦略経営的な視点で変化を生む方法について考えるということで、ダイナミック・ケイパビリティについてお話ししました。

 これは、会社の持続可能性や持続的競争優位といったことに関わってきます。そこで問題となるのは、会社の持続可能性を実現するために、経営者あるいは組織がどのようなケイパビリティを蓄積すればいいのか、ということです。


●共有予想や公的表象を制度と考える


 それに対して今回は、比較制度分析についてお話しします。特に制度に着目して、理解するよう努めましょう。

 制度というと、皆さんはおそらく、例えばスポーツのルールを思い浮かべるでしょう。サッカーを何人でやるとか、あるいは野球をするときにどんな道具を使うとか、そういったことをイメージされる人が多いと思います。あるいは、パナソニックやGoogleといった、世の中に存在する組織や会社を制度としてとらえる方もいるでしょう。他方で、法律や憲法を念頭に置く人もいるかもしれません。

 それに対して、比較制度分析でいうところの制度は、社会の人々が共有している予想を指します。もちろん、頭の中で皆さんが認識しているものだけではありません。実際に外在しているものも制度です。例えば、六法全書のような形で表現されているものや、自動車を運転するときの交通標識などを含めて、制度...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
行動経済学とマーケティング(1)「行動経済学」とは何か
人間はそれほど合理的ではない…行動経済学の本質に迫る
阿部誠
重職心得箇条~管理職は何をなすべきか(1)時代に請われ、時代に応えた佐藤一斎
部下を育てるには、まず佐藤一斎に学べ!
田口佳史
イノベーションの本質を考える(1)イノベーションの定義
イノベーションの定義はパフォーマンスの次元が変わること
楠木建
キャリア転換で人生を成功させる方法(1)2つの大きな潮流
なぜ40歳でキャリアについて一度考え直す必要があるのか
為末大
ストーリーとしての競争戦略(1)当たり前の重要さ
柳井正氏の年度方針「儲ける」は商売の本筋
楠木建
メンタルヘルスの現在地とこれから(1)「心を病む」とはどういうことか
なぜ「心の病」が増えている?メンタルヘルスの実態に迫る
斎藤環

人気の講義ランキングTOP10
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(2)外交と軍事のバランス
外政家・原敬とは違う…職業外交官・幣原喜重郎の評価は?
小原雅博
数学と音楽の不思議な関係(3)音と三角関数とフーリエ級数
フーリエ解析、三角関数…数学を使えば音の原材料が分かる
中島さち子
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(3)共同保育を現代社会に取り戻す
狩猟採集生活の知恵を生かせ!共同保育実現に向けた動き
長谷川眞理子
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
『還暦からの底力』に学ぶ人生100年時代の生き方(1)定年制は要らない
日本の定年制はおかしい…ガラパゴス的で不幸を招く制度
出口治明
運と歴史~人は運で決まるか(1)ソクラテスが見舞われた「運」
歴史における「運」とは?ソクラテスの「運」から考える
山内昌之
50代からの親の介護~その課題と準備(1)突然やってくる介護の問題
「親の介護」の問題…優しさだけでは続かない
太田差惠子
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉