●比較制度分析は制度の生成や変化に注目する
今回は「比較制度分析とは何か」について、お話しさせていただきます。比較制度分析をする際、注目するのは制度です。制度は安定した状態です。したがって、比較制度分析とは、安定した状態を比較して分析するということで、制度がどうやって生まれてくるのか、そしてそれがどうやって変わるのかといった、制度の生成や変化に注目する考え方です。
比較制度分析の対象として、2011年3月に福島で起きた原発事故を分析することも可能です。福島を取り巻く制度や歴史、あるいは地球の持続可能性の問題やエネルギーの環境問題について、比較制度分析を用いることができるのです。
以前テンミニッツTVでは、ダイナミック・ケイパビリティについてお話ししました。ダイナミック・ケイパビリティは、変化を生み出すものです。変化するのですから、その状態は不安定な状態です。つまり、ダイナミック・ケイパビリティとは不安定な状態を生む力であり、企業家精神はその一例です。戦略経営的な視点で変化を生む方法について考えるということで、ダイナミック・ケイパビリティについてお話ししました。
これは、会社の持続可能性や持続的競争優位といったことに関わってきます。そこで問題となるのは、会社の持続可能性を実現するために、経営者あるいは組織がどのようなケイパビリティを蓄積すればいいのか、ということです。
●共有予想や公的表象を制度と考える
それに対して今回は、比較制度分析についてお話しします。特に制度に着目して、理解するよう努めましょう。
制度というと、皆さんはおそらく、例えばスポーツのルールを思い浮かべるでしょう。サッカーを何人でやるとか、あるいは野球をするときにどんな道具を使うとか、そういったことをイメージされる人が多いと思います。あるいは、パナソニックやGoogleといった、世の中に存在する組織や会社を制度としてとらえる方もいるでしょう。他方で、法律や憲法を念頭に置く人もいるかもしれません。
それに対して、比較制度分析でいうところの制度は、社会の人々が共有している予想を指します。もちろん、頭の中で皆さんが認識しているものだけではありません。実際に外在しているものも制度です。例えば、六法全書のような形で表現されているものや、自動車を運転するときの交通標識などを含めて、制度...