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トランプ政権で最も厄介な人物とは?

東アジアと世界の行方(4)北朝鮮・サウジアラビア

白石隆
公立大学法人熊本県立大学 理事長
情報・テキスト
トランプ大統領は東アジア情勢を差し置いて、北朝鮮問題に注力している。政権運営の混乱は予想されていたことだが、娘婿であるジャレッド・クシュナー大統領上級顧問の行動には要注意だろう。立命館大学特別招聘教授でジェトロ・アジア経済研究所長の白石隆氏が北朝鮮とサウジアラビア情勢について解説する。(全6話中第4話)
時間:06:56
収録日:2017/11/24
追加日:2018/03/05
カテゴリー:
≪全文≫

●バランスを失するほど北朝鮮問題にだけ集中


質問 アメリカの北朝鮮への対応は今後どうなるでしょうか。

白石 もちろん私自身よく分かりませんが、実際問題として表に出てきている話と、日米でコンフィデンシャルに議論されていることの格差は相当あるはずです。もちろんオバマ大統領のように、「戦略的忍耐」と言って何もしないということが駄目だったことは明白です。その意味では、あらゆるオプションを検討することは当然でしょう。

 ただし同時に、トランプ大統領には特有のマネジメントのスタイルがあります。彼について書いているものを読んだことがありますが、私の印象では、トランプ大統領は自分でこれと決めたことについてはものすごくマイクロマネジメントをするようです。そして、それ以外のことは他の人に任せてしまうのです。

 この見方からすれば、トランプ大統領はバランスを失するほど北朝鮮問題にだけ集中し、アジアの他の問題については今のところ他の人に任せているのかもしれません。実際、トランプ大統領が東南アジアの指導者と会って話しても、北朝鮮問題が取り沙汰されました。

 ただし、北朝鮮問題もここまでくると、なかなか本当に難しくなってきています。軽々に用心しろとは言いませんが、正直に言って、軍事的介入の可能性もないとは言えないでしょう。そういう段階に来てしまいました。


●クシュナー氏をどのようにコントロールするのか


質問 ドナルド・トランプ政権が混乱しているということは、不思議ではないように見えます。

白石 そうです。政権発足後1日目からぱっと走って、見事に4年間走りきったのは41代目大統領、H・W・ブッシュ、父ブッシュ氏の場合だけです。彼は副大統領を務めていましたし、それ以前もずっと政府のポストに就いていました。ですから、トランプ政権になって、政権運営が混乱するということは驚きではありません。

 ただし今までの政権と違うところは、娘婿であるジャレッド・クシュナー大統領上級顧問の存在です。全体に関与しているというのではなくて、特定のテーマがほとんど彼のマターになってしまっています。

 例えば、イスラエルやサウジアラビアがそうです。中国も彼のマターになりつつありましたし、中国の方もそうしてほしいと思っていたでしょうが、今のところそうはなっていません。それは良いことだと思いますが、いずれにせよイヴァンカ・トランプ氏とその夫クシュナー氏をどのようにコントロールするのか、これが問題になるでしょう。他の厄介な人物はほとんど全部、消えてしまいましたから。


●サウジアラビアは一つ間違うと、相当に危険な状態である


白石 例えば、サウジアラビアは現在大変なことになっていますが、クシュナー氏の事実上の補佐官になっているディナ・パウエル氏という女性がいます。彼女はエジプトのコプト(エジプのキリスト教徒)です。私は面識はありませんが、非常に有能だという話はよく知っている人から聞いています。その意味ではそれほど心配ないのかもしれませんが、それでもやはりサウジアラビアは一つ間違うと、相当に危険なことをたくさんやっています。

質問 外交評論家の岡崎久彦氏は、2017年にサウジ王政が崩壊すると予言しましたが、確かに今サウジで起きていることは異常ではないでしょうか。

白石 ある意味では、王政とはそういうものでしょう。王政は常に宮廷クーデターのようなものの中で、勢力配置が再編成されていきます。ですから、新しい王様が出てくるということは、創設者とその息子たちの時代がやっと終わって、もう一度ガラガラポンをしているのかもしれません。

 ただし、やはり中東のバランス・オブ・パワーに相当響きますし、これは歓迎すべきことだとは思いますが、サウジのお金は東南アジアにも相当流入しています。この10年ぐらいの間に、東南アジアのイスラムも相当程度、実はワッハーブ派になっています。サウジアラビアのイスラムそのものが、もう少しまっとうなというか、moderate(穏健)になるということは大歓迎です。この問題は私の専門外ですからよく分かりませんが、注意はしておくべきでしょう。世界のあらゆるところで、そうした事態が起きつつあります。
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