日本企業のグローバル戦略~外資系企業との比較
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欧米の老舗大企業は軸足を維持しつつ大転換を遂げている
日本企業のグローバル戦略~外資系企業との比較(4)デュポンのしなやかな変化
大上二三雄(MICG代表取締役)
GE、IBM、BASFなどの欧米老舗企業は、自ら再生して新しい企業に生まれ変わっていく。その典型例として、大上二三雄氏は今回、200年以上の歴史を持ち、今も革新的な企業として知られるデュポンを取り上げる。
時間:13分17秒
収録日:2014年4月24日
追加日:2014年6月19日
≪全文≫

●火薬の会社から、総合化学会社の先駆けへ


 以前の回で、欧米ではベンチャー企業による新陳代謝が行われる一方、日本では企業系列の関係の中で、親会社が子会社、孫会社を産みながら産業の発展を進めていくという話をいたしました。今回は、欧米の老舗企業が、自ら再生して新しい企業に生まれ変わっていく話をしたいと思います。そのような企業の新陳代謝の方法もあるのです。

 皆さん、デュポンという化学会社をご存じだと思います。200年以上の歴史を持つ、近代企業としては最も古い部類に入る企業です。もともとデュポンは火薬、英語で言えばガンパウダーの会社でした。ですから、戦争があると、とにかく儲かりました。特に第一次世界大戦の時は、儲かって仕方がありませんでした。初めて近代戦が起こり、ヨーロッパの国々がお互いに鉄砲や大砲、爆弾を使い合ったため、火薬はいくらあっても足りない状態でしたから、第一次世界大戦後は多大な設備、人員、資金の内部留保を抱えた大企業になっていました。

 ところが戦争が終われば、当然のことですが、需要は激減します。そのため、デュポンは、今で言う過剰な設備に悩むことになりました。そこでどうしたかといえば、現在では多くの大企業に取り入れられている事業部制、すなわち事業ごとに事業本部をつくり、それぞれの事業を各事業本部長が管理して、企業として全体の事業構成を膨らませ成長していく制度を、世界に先駆けて取り入れました。その結果、デュポンは火薬の会社から、総合化学会社、ケミカルカンパニーに転換したのです。テフロン、ナイロン、プラスティックなどの新しい繊維や素材を開発し、世の中に新しい価値を提供する企業の先駆けになったわけです。


●革新的な「大人の分社化」を実施する


 ところが、1990年代の後半から、デュポンは、総合化学会社はもはや曲がり角に来たと判断します。世界の人々は、物質的には十分に満たされつつある。途上国にも物質はどんどん普及しており、そのような物質の生産はよりコストの低い生産拠点に移っている。そこで何をしたかといえば、農業、バイオ、それから高機能・高付加価値製品及び素材の3分野にフォーカスを絞り、ケミカルからサイエンスへと「かがく」の字を変えて、総合科学会社、サイエンスカンパニーに転換するというビジョンを打ち立てたわけです。

 具体的には、まず1998年に...

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