●子会社が利益を稼いでいるのがソニーの現状
かつて日本代表、ソニーという企業に、もはや輝きはありません。この問題を語るにあたって、われわれはやはり、出井伸之さんがリーダーシップをとった1995年から2005年までの10年間、ソニーがどのような状況にあったかを分析する必要があると思います。
出井さんは、1995年に社長に就任しました。前半は、当時CEOであった大賀典雄会長との二人三脚あるいは権力の葛藤の中で過ごした期間ではなかったかと思います。後半の5年はガバナンスを確立し、自らが思うように実行できる環境が整いましたが、その中でソニーは出井さんの目指す方向にはなかなか変わっていけず、利益を生み出せない時代が続いたのではないかと思います。そして2005年、ある意味で世間から追われるような形で、ハワード・ストリンガーという後継者に次世代を託して、出井さんはソニーを去りました。
その間、実はソニーは最高利益を出しています。1997年のことで、営業利益は5257億円にも達しました。このときの稼ぎ頭は、ゲーム機とテレビです。その後、ソニーはもう一度経営のピークを迎えています。出井さんが退陣した後の2007年、営業利益は約4753億円でした。これはソニー史上2位の金額です。このときは、ビデオカメラとデジタルカメラが稼ぎ頭でした。そして2013年度、すなわち今年の第3クォーターまでの営業利益は約1415億円です。ただし現在は、ハードウェア分野はほとんどが赤字で、利益を上げているのは金融事業と音楽事業です。すなわち、本業ではない子会社が利益を稼いでいるのが、ソニーの現状なのです。
●イノベーティブな製品を作れずに苦しむソニー
現在のソニーが苦しんでいる理由は簡単です。本業の製造業で儲かっていないからです。もっと詳しく言えば、かつてソニーが得意としていたイノベーティブな製品、例えばiPod、iPhone、iPadなどのように世界中を席巻する製品を作ることができなかったからです。この1点に絞られると思います。
では、ソニーはもう会社として寿命を迎えているのでしょうか。そういったイノベーションの努力をしてこなかったのでしょうか。そんなことはありません。出井さんは就任後、自分の得意分野であるマーケティングを中心にして「デジタル・ドリーム・キッズ」というスロー...