●ここ数年、スタートアップやイノベーションを支援する活動を行っている
皆さん、こんにちは。今回はスタートアップ流イノベーションの起こし方についてお話しします。最近、日本でもテクノロジーをベースにしたスタートアップが増えてきており、サイエンスやテクノロジーをベースにイノベーションを起こしていこうという動きが活発になってきています。そういったスタートアップのやり方が、実は大企業の中からイノベーションを生み出すことにも非常に役立つということで、今回はそのお話を5回に分けてできればと思っています。
ちょうど、『テクノロジー・スタートアップが未来を創る』(東京大学出版会)という本を2017年12月に発刊しました。そちらに「スタートアップ流のイノベーションにヒントが多くある」ということを書かせていただきましたが、そのエッセンスを少しお話できたらと思っています。
最初に私の自己紹介ですが、もともとはコンピュータサイエンスを専攻していました。東京大学でコンピュータの学科ができた頃に学生だったのですが、ちょうどパソコンが出始めた頃で、当時アメリカでは、マイクロソフトなどさまざまなソフトベンチャーが出てきて、どんどん急成長するのを横目で見ていました。
「これは日本でもスタートできる」という思いでつくった会社が、ソフトウェアのベンチャー企業「アクセス」(現・株式会社ACCESS)です。日本ではまだ早すぎて起業を支援する環境がなく、大変苦労しました。しかし、皆さんお使いになったかもしれませんが、携帯電話全盛の時代にメールやブラウザなどNTTドコモとiモードに関する開発を一緒に進め、急成長できまして、2001年に東証マザーズに上場。その後10年間、上場企業の経営をさせていただきました。
それからここ5、6年は、今回お話しする、スタートアップやイノベーションの支援を「TomyK」という会社を通じて行っています。今は非常な変化の速い時代ですので、TomyKでは、イノベーションを先回りして起こそうということで、ロボット、人工知能(AI)、宇宙といった大きなイノベーションを起こすスタートアップと、そのイノベーションを支援する活動を行っています。
イノベーションとなると、コアなテクノロジー、ディープなテクノロジーが必要ということで、東京大学といろいろ協業し、若者たちにイノベーションを起こしてもらうための取り組みも行っています。一回目は、「東京大学発スタートアップが今、増えている」という話をしてみたいと思います。
●東京大学発のスタートアップが今、増えている
「東大発スタートアップが今、増えている」ということですが、これには歴史があります。
私は今、三段階でお手伝いしていますが、まずは講義を通じて、起業やスタートアップに触れてもらう、知ってもらう、そしてそのような選択肢もあることに気づいてもらうということです。
「アントレプレナー道場」という、10年以上続いている東大の学生向けのスタートアップのやり方を指南するプログラムがあるのですが、その中の「アントレプレナーシップ」という講義の最初の部分を5年ほどお手伝いしています。2017年に続き、2018年も300人ほど学生が来るようになりました。東大は一年間の卒業生が毎年約3000人なので、300人来るという講義はあまりなく、かなりの人気の講義になっています。それほど起業に興味のある人が増えてきているという状況でもあります。
なぜ増えているのか。その背景はいくつかあるのですが、ひとつは行きたい大企業が減ってきたという面があります。他には、もちろん起業するハードルが下がってきたので、やりやすくなったという面もあります。そして、何より実際に起業する人が増えており、例えば友人の先輩などがベンチャーをやっているなど、そうした雰囲気になってきたので、遠い存在ではなくなってきた、身近になってきたという面もあります。
そこで、まずそのように起業マインドを学生のうちに築いてもらうことを第1にやっています。
●東大からテキサスへ、世界デビューを目指す
次に、モノづくりに対して少しでもやる気がある、あるいは実際にモノづくりがしたいという人のための支援も始まっています。
そこからさらに、面白いものが出てきたという段階になると、世界でデビューさせようということで、「Todai to Texas」というプロジェクトを5年ほど行っています。毎年3月にアメリカのオースティンで開催されるサウスバイ・サウス・ウエストというイベントがあります。もともとこのイベントは Twitter がブレイクしたことでアメリカではとても有名なのですが、選...