デカルトの存在論に学ぶ
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デカルトのオリジナリティは思考の過程にある
デカルトの存在論に学ぶ(3)疑う《私》の有限性
津崎良典(筑波大学人文社会系 教授)
デカルトの「我思う、ゆえに我在り」は、同時代の人からアウグスティヌスの焼き直しであるとの批判を受けた。しかし、言葉自体は同じでも、その意味は異なると津崎良典氏は言う。それはどういうことなのか。彼のオリジナリティがいよいよ明らかにされる。(全3話中第3話)
時間:10分41秒
収録日:2018年9月27日
追加日:2019年3月10日
カテゴリー:
≪全文≫

●人間の精神では理解しきれない神


 ここからがすごく難しくなってくるのです。少し脅すようで申し訳ないのですが、本当にデカルトのギヤがグッと入って、思考のスピードがガッと上がってくるところです。

 デカルトはこう言っています。

 物体について論じているとき、論じるために必要な道具立て、例えば一冊かどうかを判断するための数字であったり、こうした本が朽ちているかどうかを判断するための持続という観念であったり、こうしたモノが止まっているか止まっていないかを判断するための運動という観念だったり、このようなものは、実は私が自分の精神を分析すれば出てくることです〔精神は単一なのか複数なのか、その思考は持続しているのか、精神は静止状態にあるのか……と問うことで〕。でも、私の精神を分析したときに、なぜか私があらかじめ持っている道具立てでは記述できない何かがあると言うのです。それが神だと言うのです。


●疑う《私》の有限性


 このあたりの理論は難しいので、一度、最初の出発点に戻りたいと思います。デカルトは『省察』という本の中で何から始めたかというと、疑うことから始めました。

 どうして疑うのでしょうか。理由は簡単です。私たちは全知全能でないからです。全知全能であったら、疑う必要は全然ありません。常に完璧な回答が得られているからです。もし疑うということが成立しているなら、残念ながらそれは私たちが全知全能でないからです。

 さて先ほど、デカルトは「我思う、ゆえに我在り」と述べたと、ご紹介しました。この「我思う、ゆえに我在り」は、実は「我疑う、ゆえに我在り」といっても構わないと言いました。ということは、この疑っている私が存在しているということは、この疑っている事態はどこから来たのかと、デカルトは考えます。疑うということは、或る種マイナスなこと、否定的なことですね。全知全能ではないということで、つまり限りがあるということです。この限りがあるということを「有限」と言います。疑っているのは、実は私が有限な存在だからです。さらにデカルトは思考を深めます。思考が持続しているのです。


●無限という観念は非常に重要


 有限ということを一体どのようにして、知ることができるのでしょうか。そ...

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