●私たちは天の川銀河の中に住んでいる
慶應義塾大学の岡です。このシリーズは、「銀河中心の超大質量ブラックホール」についてお話しします。
このタイトルには、多分多くの方にとってはあまりなじみのない語句が並んでいると思いますので、その説明から入ります。
まず、私たちが住んでいる銀河とは「天の川銀河」というところに相当します。天の川銀河とは、私たちが「天の川」として認識しているものです。
まず画像でお見せしたのは、私たちの目に見える光である可視光の写真を全天合成したものです。天の川の中心方向が真ん中になっており、びっしりと多数の星が写っているわけです。
右側の画像は、天の川銀河系(=天の川銀河)を上から見た想像図です。一般的に、私たちが目にする天の川は、これを横から見ているのです。
ちなみに、私たちの住んでいる天の川銀河は、一般には「棒状渦巻銀河」と呼ばれる銀河に分類されます。直径は約10万光年、つまり光でも10万年かかるくらいの大きさです。質量は1.5×1012太陽質量です。平たくいえば1.5兆太陽質量で、太陽の1.5兆倍ということです。年齢は宇宙年齢とさほど変わらず、130億年程度と考えられています。
●天の川の構成要素は?
この銀河系(=天の川銀河)を構成する要素として、まず私たちが目にすることができるのは恒星です。恒星の数は2000億から4000億個あるといわれています。
恒星以外には、「星間ガス」と呼ばれるものがあります。これは恒星の1割程度の質量です。
また、銀河系(=天の川銀河)内においては「ダークマター」という謎の物質が、最も多くの割合を占めていることが分かっています。これについてはあまり深入りしませんが、私たちはこうしたものの中に住んでいると考えられています。私たちは、この銀河系(=天の川銀河)の中心から2万7000光年ほど離れた位置にあり、画像でいうと黄色の星の位置にいると考えられているのです。
●宇宙にはたくさんの銀河が満ちている
天の川銀河の近くには、他にも多くの銀河があります。その一つが、有名なアンドロメダ銀河です。アンドロメダ銀河は、銀河系(=天の川銀河)から200万光年離れたところにある別の銀河です。
さらにこの画像の右下の方をご覧ください。これは、「大マゼラン雲」という、天の川銀河のそばに浮いている小さな銀河で、銀河系(=天の川銀河)の周りを回っている「伴銀河」と呼ばれるものの一つです。
このように、天の川銀河の周りにも銀河がたくさんあるのです。ちなみに、アンドロメダ銀河は天の川銀河と同じ「渦巻銀河」に属し、大マゼラン雲は「矮小銀河」と呼ばれる部類に属します。
何もなさそうな天域をハッブル宇宙望遠鏡で100万秒ほどシャッターを開けて撮影してみた画像がこれです。びっしりと何かが写っていますが、これらは実は全て銀河なのです。それほど近くではない、様々な距離にある銀河が写り込んでいます。
その中のいくつかを拡大して見ると、画像右下のものは「渦巻銀河」であることが分かります。他にも、画像右上のものを拡大すると「楕円銀河」と呼ばれるものであることが分かります。
このように、私たちの住んでいるこの宇宙には、非常に多くの銀河が満ち満ちています。ある評価によれば、私たちから観測できる範囲に少なくとも2兆個の銀河があるといわれています。7兆個という評価もあります。とにかく膨大な数の銀河が宇宙を占めているということが分かっているのです。
●太陽系は銀河系の中で塵のように小さな存在でしかない
この銀河系(=天の川銀河)の中で、私たちが住んでいるのは「太陽系」と呼ばれるシステムです。太陽系は先ほどお話しした通り、銀河系(=天の川銀河)の中心から2万7000光年離れたところにあります。
太陽系の主要構成要素は、太陽と8つの惑星です。そして、つい最近冥王星が分類された準惑星、さらに無数の小惑星と呼ばれるものも含まれます。太陽系の大きさは、一番外側にある惑星、海王星の軌道半径で測られることが多いのですが、これは30天文単位とされています。
1天文単位とは、太陽と地球の距離のことをいいます。ですから、太陽系はその30倍程度なのです。これを光年という単位に直すと、0.0004763光年と換算されます。これは、先ほど示した銀河系中心までの距離2万7000光年に比べると、とても小さいものです。つまり太陽系とは、銀河系(=天の川銀河)の中で本当に塵のような小さな存在でしかないのです。この点をここで強調しておきたいと思います。