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「絶対的な秩序」と「誇り」が必要

人間的魅力とは何か(7)大家族主義の美点とは

情報・テキスト
昔の日本では、長男は地元の師範学校に進んで地元の学校の先生などになり、たとえ次男以下が東京大学を出て偉い官僚になろうとも、長男には頭が上がらなかった。また、生活水準は親程度でいいが、「人間的に伸びたい」という欲求を持っていた人も多かった。そのような点が、実は「大家族主義」の素晴らしいところだったのである。そのことを、いま日本人は思い出す必要がある。(全8話中第7話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
時間:08:05
収録日:2019/04/05
追加日:2019/07/05
≪全文≫

●母親に最敬礼する総理大臣


―― 「もともと持っていた日本人のいい部分を復活させよう」「我利我利亡者になっていないのか、無間地獄になっていないか」「幸福ばかり追い求めるから、結果として不幸になる」「自分の上限を決めてしまうと、その中でどんどん貧しくなっても8割ぐらいが『幸せ』だと感じる」「設定条件が低いと不幸になる」。そういうことをまとめていってくれるのは、めったにないという意味で、ありがたいと思います。

執行 日本人の一番いいところは、成功思想がないところでした。これは家族主義です。家族主義というのが、日本の一番いいところなのです。正しく出ればですが。

 天皇制を中心にして、どんなに偉くなっても、もっと偉い人がいる。「トップに立つ」といった西洋的な偉さとは違います。天皇がいちばんわかりやすい。

 昔の大家族というのは、僕の父親や祖父の世代までそうでしたが、たとえば地方の素封家なら、地方から出てきて東大法学部を出て官僚になって、どんなに偉くなっても、地方に帰れば違うのです。家にはだいたい長男がいて、昔の場合だと長男はたいてい地方で師範学校を出て、学校の先生をしています。その、小学校の先生をしている長男に、誰も頭が上がらなかったわけです。これが日本の一番いいところなのです。どんなに頭がよくても、どんなに偉くても、もともと秩序があって、それを崩すことができない。その代表が、天皇です。

 これはもう戦前の人なら、誰でもいっていたことです。だから独裁者が出ない。家族もそうです。

 家族主義の良いところが、日本の一番いいところだったのに、その家族主義の絶対的な秩序だけダメになってしまった。そして家族の深い愛情に基づくような、変な部分だけが残ってしまった。この愛情の部分だけが残ると、今度は、愛情が愛情ではなくなってしまって「ママゴン」になってしまったわけです。これが今のマイホーム(主義)でしょうか。日本人は家族主義の一番いいところ生かさなければダメです。

 「大家族主義」が日本の一番いいところだということに、早くそれに気がつく必要があります。これは「家族主義」というより、「大家族主義」です。権威とか偉さは、つくり上げられるものではなく、所与としてあるということです。

 今の人はこれを「つまらない」といいますが、これをつまらないという発想が、あのくだらない出世主義の西洋思想なのです。「早ければいい。強ければいい。偉くなったやつが偉い。金も持っているほどいい」。昔の日本は、お金を持っているかどうかは、何も人間の偉さには関係ありませんでした。僕が子供の頃までそうです。

 だから社会的地位にしても、今いったように大家族主義だと、長男の前に行けば、どんなに社会的に偉くなっても次男、三男はペコペコだったわけですから。

 これは戦後もまだ、田中角栄の時代までは生きていました。田中角栄については好き嫌いも多い。しかし、皆さんもテレビで見たことがあると思うのですが、ちょうど、田中角栄のことをテレビで放送していたときに、新潟のお母さんから電話がかかってきたことがあります。

―― フメさん、ですね。

執行 そう。お母さんから電話がかかってきたときに、あの田中角栄が「気をつけ」をして、「最敬礼」でしゃべっている映像が映っていました。やはり、ああいう光景は感動します。そのとき総理大臣ですから。

 あれが日本なのです。日本という国では、どんなに偉い人も、親には誰も逆らえないのです。


●「誇り」が成長を呼ぶ


執行 これは自慢ではないですが、僕にもいいところがあるとしたら、そこです。僕は両親が二人とも死ぬまで、ただの一度も口答えしたことがありません。これは日本の一番いいところが、自分の中で生きていると思うのです。

 それが、みんな自然にあったと思うのです。だいたい日本人というのは、勉強ができて、まあまあ文学も読んでいて、まあまあの人たちは、みんな生活レベルは「親程度」以外、望んでいませんでした。僕もそうです。親の生活レベルより良くなりたいなんて、あまり思っていない。欲としてあるとしたら、「人間として伸びたい」という欲です。だから今の「欲」とは違うのです。

 以前の収録でお話ししたイギリスの話もそうだったと思います。ウナムーノの『生の悲劇的感情』が述べているのは、魂的な枯渇感です。これを失ったから英国も終わりだというのですから、そういう意味では僕は日本と同じだと思います。

―― 最近、色々な方にずっと聞いているのは、イートン校があって、ハーロー校があって、オックスフォード大学があって、そこからずっとエリートが出ていたと。でも最近のイギリスの政治家からは、キャメロンとかオズボーンとかボリス・ジョンソンとか、なかなかいい人材が出ない。...
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