●母親に最敬礼する総理大臣
―― 「もともと持っていた日本人のいい部分を復活させよう」「我利我利亡者になっていないのか、無間地獄になっていないか」「幸福ばかり追い求めるから、結果として不幸になる」「自分の上限を決めてしまうと、その中でどんどん貧しくなっても8割ぐらいが『幸せ』だと感じる」「設定条件が低いと不幸になる」。そういうことをまとめていってくれるのは、めったにないという意味で、ありがたいと思います。
執行 日本人の一番いいところは、成功思想がないところでした。これは家族主義です。家族主義というのが、日本の一番いいところなのです。正しく出ればですが。
天皇制を中心にして、どんなに偉くなっても、もっと偉い人がいる。「トップに立つ」といった西洋的な偉さとは違います。天皇がいちばんわかりやすい。
昔の大家族というのは、僕の父親や祖父の世代までそうでしたが、たとえば地方の素封家なら、地方から出てきて東大法学部を出て官僚になって、どんなに偉くなっても、地方に帰れば違うのです。家にはだいたい長男がいて、昔の場合だと長男はたいてい地方で師範学校を出て、学校の先生をしています。その、小学校の先生をしている長男に、誰も頭が上がらなかったわけです。これが日本の一番いいところなのです。どんなに頭がよくても、どんなに偉くても、もともと秩序があって、それを崩すことができない。その代表が、天皇です。
これはもう戦前の人なら、誰でもいっていたことです。だから独裁者が出ない。家族もそうです。
家族主義の良いところが、日本の一番いいところだったのに、その家族主義の絶対的な秩序だけダメになってしまった。そして家族の深い愛情に基づくような、変な部分だけが残ってしまった。この愛情の部分だけが残ると、今度は、愛情が愛情ではなくなってしまって「ママゴン」になってしまったわけです。これが今のマイホーム(主義)でしょうか。日本人は家族主義の一番いいところ生かさなければダメです。
「大家族主義」が日本の一番いいところだということに、早くそれに気がつく必要があります。これは「家族主義」というより、「大家族主義」です。権威とか偉さは、つくり上げられるものではなく、所与としてあるということです。
今の人はこれを「つまらない」といいますが、これをつまらないという発想が、あのくだらない...