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燃える魂の痕跡――執行草舟コレクション

人間的魅力とは何か(特別篇1)民族の「魂」を呼び覚ませ

概要・テキスト
執行草舟は、「人間の魂を本当に伝えられるものは、残っている芸術作品だ」という信念に基づいて、書画を蒐集している。その作品から、作者の魂が確かに伝わってくるのである。この「特別篇」では、そのようにして集められた芸術作品を見ることを通して、山岡鉄舟、白隠、そして、その他の人々の本質に迫っていく。(全4話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
時間:09:58
収録日:2019/04/05
追加日:2019/07/19
カテゴリー:
≪全文≫

●どうして先人たちと「魂が通じる」ようになるのか


執行 僕のコレクションは基本的に、僕の信念と深く関わっています。僕は「人間の魂を本当に伝えられるものは、残っている芸術作品だ」という信念を持っています。世界中に残っている芸術作品を見てきて、いつの時代も真に才能がある人は、芸術作品で歴史や民族の魂といったものを全部呼び起こす力を持っていると思うからです。

 だから僕はお金がある程度できるようになって、僕が「燃えた」と思う魂の痕跡を、後世のためにそのままいい形で保存したい、そうした思いで集めています。

 だから僕のコレクションは、自分自身の経験に基づいたものです。僕自体は古代が好きで、小学校の頃から『万葉集』をずっと読んできました。『万葉集』は歌だから、芸術です。そこで僕が自慢とするところは、辞書を一回も引いていないことです。つまり学問として読んだことがない。昔の古代人が書いた、あの頃の日本語をそのまま受け入れようと思って、ずっと読んできました。

 そうして子どものときからずっと読んできて、大人になったある時期に、自分でも驚くことが起こりました。30歳になる少し前に、古代人と本当に会話ができるようになったのです。ずっとやっているうちに、行間が読めるようになった。僕はそのことに愕然としました。大伴家持とか大伴旅人とか柿本人麻呂といった人たちが、何で書いたのか、どういう生活をしていたのか、もう手に取るようにわかるようになったのです。

 それは僕が辞書も引かないで、間違った形でも読んでいたからです。僕は間違いだと思っています。間違いだけれども、学問的ではなくて、芸術として触れていると「魂が通じる」ということが、僕は実感としてわかりました。そういう体験を将来の日本人にもしてほしい。

 絵でも書でも、本当に誰か好きになってくれる人がいたら、たとえば山岡鉄舟の書を睨みつけていると、山岡鉄舟という明治維新で燃えた一人の武士の魂が、絶対乗り移ると僕は思っています。そうしてほしいというのが、僕が集めてきている理由です。

――なるほど。魂が乗り移るんですね。

執行 本当のものは乗り移ります。僕はこれを『万葉集』で体験しました。そして乗り移る力があるものを僕は「呪物」と呼んでいます。「神に捧げる」という意味の呪物です。呪物として「芸術の力」だと僕は思っています。逆に乗り...
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