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天才は、今の時代に「何が必要か」が見える

人間的魅力とは何か(4)「豊かさ」の本質

概要・テキスト
戦後、日本国民が餓死の危機に怯えるほど窮乏していた時期に、松下幸之助は「繁栄による平和と幸福(PHP=Peace and Happiness through Prosperity)」という標語を掲げた。だが、もし現代に幸之助が生きていたら、「心を豊かにする」すごい産業を思いついたのではないか。天才は、その時代に何が求められているのかがわかるのだ。そして、「何が必要なのか」が見えるからこそ、物事に際限を設け、上限を打つことができる。そうでなければ、第3話でも論じたように、人間は「我利我利亡者」に堕してしまうのである。(全8話中第4話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
時間:10:05
収録日:2019/04/05
追加日:2019/06/14
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≪全文≫

●今、松下幸之助なら「心を豊かにする産業」をやっている


―― 執行先生がおっしゃっているのは、今の経済思想のまるっきり逆ですね。

執行 逆かな、僕は。

―― 以前、「今、松下幸之助が生きていたら、『貧困を通しての幸福と繁栄』という」と、おっしゃっていましたね。

執行 僕は松下幸之助なら、そういうと思っています。

―― 確かにそうだなと思います。

執行 だって松下幸之助が唱えているのは、「豊かさ」ですから。「何が豊かか」ということなのです。戦後は、「モノ」です。戦後、昭和21年に「精神」なんていったら、ひっぱたかれるでしょう。だってみんな餓死しているのですから。今は逆です。それぐらい、わからなければダメです。今、松下幸之助みたいな天才が生きていれば、「物質、物質」「贅沢、贅沢」なんて、いうわけがない。

 僕はもちろんビジネス的には松下幸之助ほどの天才ではないから思いつきませんが、松下幸之助なら、今はもっと、「心を豊かにする」すごい産業を思いついたと思います。そこが天才たるところです。そうしたビジネスの真似はできませんが、それでも松下幸之助がどういう人かは、わかっていないとダメなのです。

―― そうでしょうね。今なら心を豊かにする産業をやりますよね。

執行 そうです、絶対に。その時代に何が足りないのかをわかっている人が、大実業家です。

―― 確かにそのとおりです。

執行 あの頃の日本なら、松下が電器製品を選ぶのは決まっています。電化に向かう時代ですから。

―― 大衆家電が王様だったわけですよね。だけど今の状況を見たら、やはり松下幸之助はまったく違うことを考えますよね。

執行 もちろんです。あれほどの天才が考えることは僕もわかりませんが、違うことを考えたことだけは、わかります。

―― 豊かさは、ある程度は必要ですが、際限を設けることが大事なところですよね。

執行 その点は、僕は声を大にしていっています。「自分の収入には頭を打て」と。際限がないのですから。仏教用語を使うと、際限がないことを「無間地獄」といいます。今の人は書けないですが、漢字にすると「無の間」です。「無間地獄に、みんな陥るぞ」といっているのです。

 自分の収入も、どういう収入を得るかを「必ず決めろ」ということです。僕の大成功した人生の例でいうと、正規で勤めている会社、あるいは経営して...
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