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「負い目」と「克己心」こそが「良きもの」をつくる

人間的魅力とは何か(8)すべてを「自分のせい」にせよ

概要・テキスト
マイケル・ヤングの『メリトクラシー』という本を読んで、なぜビクトリア朝が素晴らしかったのかがわかった。あの時代は、皆が「負い目」を持っていたというのだ。たしかに、「負い目」を持って、なおかつすべてを「自分のせい」にし、「克己心」を持って挑んでいくところから、素晴らしいものが生まれてくるのである。(全8話中第8話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
時間:12:31
収録日:2019/04/05
追加日:2019/07/12
カテゴリー:
≪全文≫

●「負い目」が人を向上させる


執行 最近読んだ本で、『メリトクラシー』というものがあります。英国人の社会学者、マイケル・ヤングが書いた本です。この『メリトクラシー』に、ビクトリア朝がどうして素晴らしかったかが書いてありました。

 僕はそれを読んだとき、長年いっていたことがズドーンと腹に落ちました。これが今の日本人に一番足らないものなのです。「あの時代はすべての人が、社会学的に負い目を持っていた」というのです。だから人間というのは、絶えず負い目がなければいけない。そうしたことが『メリトクラシー』に書いてあります。

「負い目」とはどういうことか。当時は貴族主義が衰えてきて、キリスト教信仰も衰えてきて、民主主義が台頭してきました。貧乏人もある程度、学校を出れば、金持ちにもなれる時代が、ちょうどビクトリア朝といわれる19世紀です。

 そして貴族は、「自分たちが貴族だ」ということに、負い目を持っていた。「こんな地位をタダでもらっていいのか」と。ところが18世紀までは、貴族は貴族であることに、誰も負い目などありませんでした。そんなの当たり前のことで、自分が偉いのは当たり前だと思うのが貴族だったのです。

 これも『メリトクラシー』の話ですが、一方で、キリスト教信仰も、確かに衰えてきた。しかし19世紀にはまだ、キリスト教信仰が衰えたことに対して、イギリス人全員が罪の意識を持っていました。先祖や自分の親や祖父を見ると、すごいキリスト教信仰を持っていたが、それが自分たちにはない、と。

 また、貧乏人は一生懸命努力して学校を出れば、ある程度偉くなった。しかし当時のイギリスでは、今いった貴族のような存在がいて、家柄のいい人に対して強烈なコンプレックスを持っていたといいます。

 そうやって見ていくと、貴族も貧乏人もコンプレックスを持っている。キリスト教信仰がなくなったことに対しても罪の意識を持っている。要するに全国民がみんな枯渇感を持っていたのです。「人間として俺はダメだ」「もっと良くならなきゃダメだ」という思いです。

―― なるほど、枯渇感を持っているのですね。

執行 この時代を『メリトクラシー』でマイケル・ヤングは、「イギリス人が一番活力を持っていた時代だ」と書いているのです。「活力を持っていた時代は、全員が負い目がある時代だ」ということに、僕は脳天をかち割られたよ...
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