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「3つのバランス構造」から世界の行方を読み抜く

国際情勢における日本の安全保障(1)米中露対立

中西輝政
京都大学名誉教授
概要・テキスト
日本の安全保障問題は、米中露間で成立している国際情勢を加味して理解する必要がある。世界の大きなバランス構造はアメリカと中国の両者がロシアとどのような関係にあるかによって把握できる。この構造を考えれば、国際情勢の中で日本がいかに生き残るべきかも見えてくる。(全4話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(10MTVオピニオン編集長)
時間:13:07
収録日:2019/06/28
追加日:2019/09/08
カテゴリー:
キーワード:
≪全文≫

●朝鮮半島の問題は、中露関係と関連している


―― 安全保障の話で、今、米中の話をいただきましたけれども、もう一方の問題として、朝鮮半島ですね、アメリカと中国の関係というのは、ある意味ではさっき先生がおっしゃったように、大国同士の関係で、もう戦争ができない関係性になるという講義でございましたが、逆に何かが起きるとすると、たとえば朝鮮半島のような場所であったり、台湾海峡かもしれない。日本としては、そういう地域的な安全保障の危機にも備えなければいけない。そういう意味で言うと、今、非常に韓国が、どう動くのかも非常に危ないように見受けられるところもありますし、北朝鮮も今、米朝の首脳会談も重ねてはいますが、最終的にどっちに向かうのかが、なかなかよく分からない。そこにロシアの思惑なども絡んでくる。こういう状況で、長期的というより、短期的ないし中期的に見た場合に、朝鮮半島は今後どうなっていくのか。ある意味では、朝鮮半島とくに韓国がすでに中国のサイドなり、北朝鮮のサイドで動いてしまって、今の38度線が、対馬海峡まで来るのではないかという危機分析はずっと中西先生がしてこられましたけれども、ますますそれに近いような、先生の予言通りのような状況になりつつあります。ここはこれから、どのように見ていけば良いでしょうか。

中西 日本としては決して嬉しい予言ではありませんが、的中しました。私が「対馬海峡が38度線になる日」という論文を書いたのは、2003年の『VOICE』という月刊雑誌の3月号です。もう十数年前の話なのですが、これによって、いまだに大きな構図を理解することができます。

 どういうことかと言うと、朝鮮半島はやはり大陸なのだということです。とくに2000年代に入ると、ロシアはプーチン体制で、中国は江沢民時代に経済の基礎固めが成功し、両方ともが大陸国家として非常に接近し始めました。今では70年代の中ソ対立以来、かつてないほどの中露の大接近が起こっています。この傾向はすでに2000年代の初めから見えていました。


●アメリカは中露関係を考慮しなければならない


中西 最近になり、日本の識者の中には米中露関係について、次のような議論をする人がいます。「今、米中対立が激しくなっているが、そこにおいてアメリカにとって中国は、米ソ冷戦の際のソ連と同じような位置づけになっているのだ。だからこれは米中新冷戦と...
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