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ディオクレティアヌスが圧倒的リーダーシップで進めた改革

四分治制時代のローマ史(2)ディオクレティアヌスの改革

本村凌二
東京大学名誉教授/文学博士
情報・テキスト
ディオクレティアヌスは四分治制の中で圧倒的なリーダーシップを発揮した。軍事力の増強や官僚制を整備することによって広大な領土の細部までその統治が及ぶようにした。それは財政支出を増やす改革であった、と本村凌二氏は説明する。(全6話中第2話)
時間:07:16
収録日:2019/02/26
追加日:2019/09/14
≪全文≫

●ディオクレティアヌスは4人の皇帝の中でリーダーシップを発揮した


 しかし、どのような時代でもそうですけれども、新しい改革をするからといって、なかなかそれが地に着いたものになるわけではありません。そういう一連の中で、四分治制に代表されるような皇帝で分割をするという中で、団結力が非常に見事であったということでしょうか。4人も皇帝がいると、当然いろいろな意見が出てきます。

 しかし、やはりディオクレティアヌスの圧倒的なリーダーシップといいましょうか、他の皇帝たちにとって、彼がいるから、われわれがあるのだというリーダーシップの見事さ、あるいは団結力、まとまりの良さというところがあって、この体制そのものはうまくいくわけです。

 実際に正帝が2人いますけれども、彼の戦友だったマクシミアヌスという人は、自分の戦友であり、部下であったわけです。彼をもう一人の正帝に据えました。ただ、マクシミアヌスは同じ正帝でありながら、最後までディオクレティアヌスに、非常に忠実であったということもあって、この体制そのものはうまくいくことになりました。


●財政支出を増やしたディオクレティアヌスの改革


 その他にも軍事力を倍増しました。軍人皇帝時代で非常に混乱していましたので、やはり軍事力をきちんとしておかないとまとまらないということです。しかし、そうすると結局、財政負担が増えてくるということが目に見えているわけですね。

 それで、いろんな形で彼は属州を細分化したり、官僚制を整備したりしますが、ローマ帝国というのは基本的にはチープガバメントなのです。帝政後期になると、国家から派遣される役人の数も多くなってしまいますけれども、基本的にローカルな単位で地元の有力者たちをうまく取り込んで、彼らを中に入り込ませる形で、国家の税金の支出というものを極力抑えているのです。

 ローマの一番華やかだった帝政初期の段階では、推定ですけれども、国家の役人は300人ぐらいしかいなかったのではないかと言われているぐらい、非常に、いわゆるチープガバメントでやっていた。軍隊は別でものすごい負担ですが、大体前近代では別にローマに限らず、国家予算の3分の2は軍事費でした。

 そういう中で、ディオクレティアヌスは四分治制を採ったわけですが、属州に関しては、そのことによって4つに分かれるため、その中の属州もまた細分化していきます。その方が小さな単位の中では管理体制が当然ながら行き届いてくるということで、細分化が行われていくのです。


●官僚制や税制を整備し、通貨改革で物価を安定化


 それから官僚制の整備という点では、民政と軍政を分離するということがあります。古代に限らず、例えば日本の武士などを見ても分かると思いますが、武士で軍人でありながら行政官であるわけです。

 それは前近代を通じて意外とどこにでも当てはまるのではないかと思うのです。ディオクレティアヌスは軍人と文人をある程度分離するということを行いました。

 また、もちろん当然ながら税制を整備するということで、人頭税と、それから土地にかかる税金を整備しました。さまざまな計算の仕方があるのですけれども、「カピタティオ・ユガティオ制」といいますが、人頭税と土地の税を合理的に割り当てるということを行います。

 それから、通貨です。やはり当然ながら、3世紀の危機の1つの大きな経済的な問題というのはインフレです。大変なインフレが起こって、物価がどうしようもなく上昇するという中で、通貨の安定の1つの策で最高価格令を定めました。

 この最高価格令の規定によれば、これを破った者は死刑にするということが書いてあるのですが、恐らく死刑にされた人は1人もいないのではないでしょうか。規定としてはそれくらい厳密にやるけれども、最高価格令を定めるということをしないとなかなか収まりが付かないということだったのでしょう。

 ただ、改革は全てがうまくいったわけではありません。しかし全体としてはやはり物価そのものも安定の方向に向かうということになります。
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