四分治制時代のローマ史~ローマ史講座XI
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ローマ史に例を見ない偉大な皇帝の潔い引退
四分治制時代のローマ史~ローマ史講座XI(4)皇帝の引退
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
四分治制をはじめ、さまざまな改革を行ったディオクレティアヌスは、ストア哲学を信奉していたために、潔く皇帝の座から退いた。引退後にも何度か彼のリーダーシップが求められることがあったが二度と皇帝の座に戻ることはなかった。このような例はローマ史を通じて他にない、と本村氏は指摘する。(全6話中第4話)
時間:8分23秒
収録日:2019年2月26日
追加日:2019年9月25日
カテゴリー:
≪全文≫

●ストア哲学を信奉していたディオクレティアヌスの引退の見事さ


 しかし、ディオクレティアヌスという人は、1人の人物として見ると、恐らくストア哲学というものを非常に信奉していたのではないかと言われています。彼は自分が40ぐらいで皇帝になりますけれども、60歳くらいになったときに、305年でしたか、自分から引退するのです。引退を申し出たのです。もちろん体調が悪くなって、高齢に、その頃の60というとかなりの高齢ですから、そういう体調が悪くなったのでしょうけれども、彼は引退をすると言いました。

 そして、この時に自分の同僚で正帝だったマクシミアヌスに対して、「おまえも引退しろ」という感じで引退させるのですけども、マクシミアヌスにすれば、「俺、せっかくローマ皇帝になったのに」といって、本当は渋々引退することになってしまうのでした。

 後にマクシミアヌスは権力争いに巻き込まれていくところもあるのですが、ディオクレティアヌスという人の引退の見事さを話すと、彼は実際に引退してから亡くなるまで10年とはいかないまでも、7~8年ぐらいは生きていたのではないかといわれています。

 今現在バルカン半島のアドリア海に面した所にスプリトという街がありますけれども、そこにディオクレティアヌスの別荘があって、そこで彼は畑仕事をしていたといいます。彼はストア哲学者というか、ストア哲学を信奉していたらしいのです。引退の見事さもそれに由来するのでしょう。ストア哲学では、公務はきちんとやるけれども、むしろ自分の時間を大切にするといったところがあるので、彼は引退して畑を耕しました。


●引退後も求められたディオクレティアヌスのリーダーシップ


 ある時に1回だけ公の場所に姿を見せました。それはちょっとした、さまざまなことで混乱といいますか、紛糾していることがあったので、ディオクレティアヌスがそこに出ていった時に、何か意見を言ったのでしょう。

 それはともかくとして、やはり周りの人はディオクレティアヌスのリーダーシップなり、リーダーとしての絶対的な資質を知っていますから、「もう一度、ディオクレティアヌスさま、もう一度ローマ皇帝として指揮を執っていただけませんでしょうか」と言って、周りの人たちが彼にもう一回立ち上がってもらおうとしました。

 しかし、彼は「私は引退した。別荘でのキャベツの世話がどんなに忙...

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