四分治制時代のローマ史~ローマ史講座XI
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
ディオクレティアヌスが圧倒的リーダーシップで進めた改革
第2話へ進む
「ローマ帝国の危機」の時代に現れた偉大な皇帝
四分治制時代のローマ史~ローマ史講座XI(1)ディオクレティアヌス再評価
歴史と社会
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
「ローマ帝国の危機」といわれた3世紀に現れたのが、ディオクレティアヌスという皇帝である。彼はこれまであまり評価されてこなかったが、四分治制(テトラルキア)などの改革を行った偉大な皇帝なのだ、と本村凌二氏は力説する。ではなぜこれまで評価されなかったのか。(全6話中第1話)
時間:11分46秒
収録日:2019年2月26日
追加日:2019年9月7日
カテゴリー:
≪全文≫

●ディオクレティアヌスが四分治制を始めた


 「ローマ帝国の非常に大きな危機だ」といわれた3世紀という時代ですが、半世紀の間に正規のローマ皇帝は26~27人いました。正規ではない、すなわち元老院で公認されていない皇帝を含めると70人ぐらいが50年の間に出てきて乱立した、大変に混乱した時代でした。

 それを克服したのが、284年に即位したディオクレティアヌスという皇帝なのです。私は2017年にちょうどヴェネツィアへ行きました。ヴェネツィアにはサン・マルコという寺院があります。そこのほんとに目立たないところの一角にこの写真にあるような彫像があるのです。

 そして、これは実はローマ史に詳しい人にとって非常に重要な彫像です。ディオクレティアヌスという皇帝が出てきた時、さまざまな改革をしていく中でローマ帝国があまりにも大きくなり過ぎたので、1人の皇帝で治めることはできないということになりました。

 そこで彼は、テトラルキア、四(よん)分治制、あるいは四(し)分治制といっていいのですが、4人の皇帝、すなわち正帝が2人で副帝が2人という4人の皇帝で分割して次の時代に備えるという形を取りました。4分割するのにはそういった地域的な広がりがあることと、次の後継者を指名しておけば混乱が起こらないということで、正帝が亡くなった場合には副帝がそれを継ぐということです。ディオクレティアヌスはそういったさまざまな意味での改革を行ったわけです。


●ディオクレティアヌスの彫像がガイドブックにも載っていない理由


 その時の4人の皇帝の彫像だというのがこのサン・マルコ広場の入口の所にあるのですが、目立たず、観光客はほとんど注目しません。ヴェネツィアの中でもサン・マルコ広場の中のサン・マルコ寺院の入り口の所ですから、本当はすごく目立つ所にあるのに、ほとんど誰も注目しないのですし、ガイドブックにも載ってなかったりします。

 ただ、やはりイタリア人やイタリアに詳しい人にとっては、かの四分治制を採ったディオクレティアヌスの彫像ということで、『Journal of Late Antiquity』という本の表紙にそれが使われています。この彫像が現在までサン・マルコ広場にポツンと置かれているというのは、実は前回のシリーズでお話ししたように、ディオクレティアヌスがキリスト教徒を迫害したからなのです。

 それで、私自身は大変偉大な皇帝だと思っ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
「集権と分権」から考える日本の核心(1)日本の国家モデルと公の概念
日本は集権的か分権的か…地理と歴史が作る人間の性質とは
片山杜秀
寛政の改革・学問吟味と現代の教育改革(1)学問吟味の導入と正統性の問題
松平定信のもう一つの功績「学問吟味」の画期性に注目
中島隆博
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
概説・縄文時代~その最新常識(1)縄文時代のイメージと新たな発見
高校日本史で学んだ縄文時代のイメージが最新の研究で変化
山田康弘

人気の講義ランキングTOP10
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発
日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道
川口淳一郎
「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉
天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制
片山杜秀
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(5)シフトワークと健康問題
発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る
西多昌規
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(1)イノベーションと価値創造
価値創造において重要なのは未来から現在を見るという視点
遠山亮子
DEIの重要性と企業経営(4)人口統計的DEIと女性活躍推進の効果
日本的雇用慣行の課題…女性比率を高めても業績向上は難しい
山本勲
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(3)これからの世界と底線思考の重要性
同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」
佐橋亮
モンゴル帝国の世界史(2)チンギス・ハーンのカリスマ性
自由な多民族をモンゴルに統一したチンギス・ハーンの魅力
宮脇淳子
睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション
寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由
西野精治