四分治制時代のローマ史~ローマ史講座XI
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
キリスト教公認とコンスタンティノープルへの遷都の理由
四分治制時代のローマ史~ローマ史講座XI(6)「コンスタンティヌス大帝」
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
コンスタンティヌスは、コンスタンティノープルへの遷都によって旧来の勢力との軋轢を回避しようとした。それはディオクレティアヌスによる改革を継承するものだったのだ、と本村氏は指摘する。また、キリスト教を公認したということで、彼は後のクリスチャンの人々から「コンスタンティヌス大帝」と呼ばれることになる。(全6話中第6話)
時間:7分11秒
収録日:2019年2月26日
追加日:2019年10月26日
カテゴリー:
≪全文≫

●キリスト教の力も強くなり、内部の論争も起こるようになった


 それから前回も申しましたように、ミラノ勅令でキリスト教を公認するということで、公認して彼はさまざまな意味で教会に対して、公認しただけではなくて、教会を優遇しました。彼の周りにクリスチャンがいたということもありますし、彼自身が最後に亡くなる時に洗礼を受けたと言われています。そういう彼自身がキリスト教に対する、ある種の同調あるいは共感というものがあって、これをやがて公認し、さらには優遇するという形でキリスト教会にさまざまな寄付をするといったことを行いました。

 実際にキリスト教の考え方の中でも、神をめぐるさまざまな論争があります。父なる神と、神の子としてのイエス、それから精霊というものがあります、この3者の間をどのように考えるのかという問題です。キリスト教の教義というものが政府によって公認されたがために、もちろん公認されない段階でもそういった争いはあったにしても、やはり公認されると何が正当であるかという問題が表に出てくるということがあります。

 いろいろと公の宗教会議が開かれました。トルコの、かつては小アジアといったニカイアという所で325年に公会議が行われ、それから父なる神と、子なるイエスあるいはキリストとが同一なのだ、すなわち、父なる神が地上に姿を現したのがイエスであるという教義が正当とされました。

 他の説では、父なる神と地上に登場したイエスとは違うのだと言います。もちろん神の絶対的な影響力にあるのですけれども、やはり地上に登場したイエスというのは生身の人間としてのイエスというところがあって、それを必ずしも同一視しない考え方も別にあるのです。

 ところが、正統派の議論としては、父なる神と子なるイエスというものが同一の存在であるという、そういった解釈が正統教義になっていきました。この教義の統一にもコンスタンティヌスが関与するといいますか、彼の権力の下に宗教会議も行われたのです。


●コンスタンティノープルへの遷都


 それからもう一つ、彼は330年に、コンスタンティノポリスあるいはコンスタンティノープル、現在イスタンブールになっているところですけれども、そこにローマの都を移すということを行うわけです。その理由の一つとして、それまでの神々を信仰するローマの人たちがいて、そういった人たちと違った...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
「武士の誕生」の真実(1)10世紀の東アジア情勢と「王朝国家」
「王朝国家」と「武士」が誕生した理由は大唐帝国の解体
関幸彦
ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰(1)父祖の遺風
なぜ「父祖の遺風」がローマと江戸に共通する価値観なのか
本村凌二
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
内側から見たアメリカと日本(5)ヒラリーの無念と日米の半導体問題
大統領選が10年早かったら…全盛期のヒラリーはすごすぎた
島田晴雄
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
中村彰彦
日本の財政と金融問題の現状(1)財政赤字の何が問題か
日本の財政は本当に悪いのか?将来世代と金利の問題に迫る
木下康司