渋沢栄一の凄さ
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
豊臣家の悲劇こそ「論語なき算盤」の末路だ
渋沢栄一の凄さ(1)渋沢栄一と秀吉・家康
令和の顔として注目される渋沢栄一には『論語と算盤』の著書がある。そのなかで彼は秀吉の長所と短所にふれ、そのがむしゃらな勉強ぶりをたたえつつ、古典の欠如を指摘している。一方、古典を幕府経営に取り入れたのが、徳川家康であった。(全2話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
時間:7分18秒
収録日:2019年6月14日
追加日:2019年9月18日
≪全文≫

●渋沢栄一が感心した秀吉の勉強ぶりとは


田口 渋沢栄一の『論語と算盤』に、こういうくだりがあります。「秀吉という人物には、実に感心する」と、渋沢が感心しているのです。「何が感心なのですか」と問うと、「秀吉の勉強には、ほとほと感心する」という。勉強といっても今の学校の勉強ではなく、処世のイロハです。さらに築城術などの勉強等、彼は必要になったものを徹底的に勉強した。その結果、努力が報いられた人物です。

 秀吉のすごさは、「一歩一歩階段を上って、天下人になった」ところです。だいたい普通は「一歩目」をバカにしてしまうから、うまくいかない。そこであっさりこけてしまうのだけれど、彼は一歩目、また一歩目と進んで、「一日一日が成長なのだ」というふうに思っていた。

 その証拠を一つ出せば、最初に彼に与えられた仕事は、草履取りでした。信長が奥から出てきて、一歩足を出すときに、すっとわらじを出す。ちょっとした教養人なら、「私は、こんな仕事をやりにこの会社に入ったのではありません」と言いがちな、世にもつまらない仕事を与えられた。しかし、彼は、これを完璧にこなそうとした。どうしましたか。冬は寒い。凍えるような冷たいものをそのまま出さず、信長が履いた瞬間に温かさを感じる。「いいね、君。完璧に良い仕事をやっているね」。冬の間はいつも懐に入れておいて、すっと出すように、つまらない仕事に全力投球します。

 一歩目がそうだったため、「こういう気の利いた男は、もうちょっと高度な仕事を与えたら、どれほど工夫してやるだろう」と、信長は思う。やがて仕事を与える側と秀吉の競争になってくる。もっと難しいこと、もっと高度なものを与えられているうちに、秀吉のランクはどんどん上がり、出世しました。

 目の前のつまらないことに全力投球していく姿を渋沢は勉強と呼び、「それをしっかりやったから、秀吉はあそこまでいった」「われわれにもそれが重要なのだ」と言っています。


●『貞観政要』を学ばなかった秀吉と、学んだ家康


田口 ところが、秀吉には短所がある。何が短所か。昔の言葉で言えば「家」が続かなかった。一族は秀頼で終わりとなり、後が続きませんでした。「あれが唯一の欠点だ」と渋沢は指摘しています。私はそれを読んだときに、家康が頭に浮かびました。同じ状況で戦国時代を過ごしながら、秀吉に欠けていて、家康にあっ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二

人気の講義ランキングTOP10
逆境に対峙する哲学(2)運命・世界・他者
「私をお母さんと呼ばないで」…突然訪れた逆境の意味
津崎良典
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
宗教で読み解く世界(1)キリスト教の世界
キリスト教とは?…他の一神教との違いは神様と法律の関係
橋爪大三郎
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政