悪化する日韓関係
この講義は登録不要で無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
元徴用工に対する個人補償問題の背景と現状
悪化する日韓関係(2)よみがえる徴用工補償問題
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
前回提示された3つの問題のうち、今回は徴用工補償問題を取り上げる。この問題に関しては、1965年の日韓基本条約で一応の解決を見ている。しかし、韓国司法は2010年代に入って徴用工個人の請求権を認める判決を出し始め、韓国政府もこれに同調している。しかし、日本側は一度外交的な解決を見た問題を蒸し返すことは受け入れられないという態度を取り、日韓関係は著しく悪化している。島田晴雄氏の解説とともに、この大きな問題の背景と現状を理解しよう。(全6話中第2話)
時間:11分36秒
収録日:2019年9月9日
追加日:2019年10月16日
カテゴリー:
≪全文≫

●徴用工補償問題に関しては戦後に一旦合意がなされていた


 元徴用工に対する個人補償問題について、日本政府は1965年当時の佐藤栄作政権と朴正煕(パク・チョンヒ)政権との間に結ばれた合意によって、完全に解決済みという立場を堅持しています。なぜなら、日韓請求権・経済協力協定の第二条には「請求権に関する問題が完全かつ最終的に解決された」と明記されているからです。

 この協定は、1951年のサンフランシスコ講和条約を受けて、戦後日韓国交正常化に向けた14年間の交渉を経てようやく締結された日韓基本条約で明記されたものです。そして、日本は韓国に当時の額で8億ドルに上る経済援助を提供することとしたのです。

 8億ドルは当時の韓国の国家予算の2年分以上に相当する額になります。朴政権はこの資金を韓国経済発展のためのインフラ整備や鉄鋼産業など主要産業の支援のために活用し、その結果、「漢江(ハンがン)の奇跡」と呼ばれる目覚ましい経済成長を達成したことはよく知られています。高度経済成長へと進む韓国に対して日本企業も積極的に投資し、韓国の企業と日本企業の間には密接な相互補完関係が築かれました。この関係が、その後の日韓の深い産業連携に基づく経済発展を促進したことは周知の事実です。

 この間、国家と国家の合意で補償問題は解決済みとされていましたが、それとは別に個人の補償問題はしばしば提起されました。元徴用工の個人補償に関する訴訟は、該当する日本企業に対して提起されましたが、日本での裁判結果は、1965年の日韓合意の理解の下で、ことごとく原告敗訴に終わっています。一方、韓国では、文在寅(ムン・ジェイン)政権が発足するまでは、歴代の政権で個人補償の問題は韓国国家が責任を持って対応するという理解が維持されました。

 例えば、革新系の盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権でさえ、2005年請求権協定に伴う日本の3億ドルの無償協力に関し、「強制動員被害補償の問題解決の資金が包括的に勘案されている」との見解を表明しました。元徴用工の個人が日本企業に賠償を求める問題の解決の責任は、韓国政府が持つべきという認識です。ちなみに盧氏は文氏の師匠でもあります。


●韓国司法の新たな見解と韓国政府の態度の尖鋭化


 ところが2012年、韓国大法院は、徴用工の賠償請求を退けた高裁判決に関し、個人請求権は消滅していない、との初判断を示して審理...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
経済社会と「隠れた価値」の行方(1)経済の中の価値
人間の幸福と「価値」…お金以外の「隠れた価値」をどう考えるか
吉川洋
半導体から見る明日の世界(1)世界的な半導体不足と日本の可能性
なぜ世界の半導体不足は起きた?台湾TSMCと日本復活への鍵
島田晴雄
日本を復活させる国家戦略(1)戦後の復興戦略と日本経済の凋落
「所得倍増」はなぜ成功したか…日本経済の回復のヒント
島田晴雄
政治思想史の古典『法の精神』と『社会契約論』を学ぶ(1)二人の思想家
モンテスキューとルソー…二人の思想家の共通の敵とは?
川出良枝
ロシアのハイブリッド戦争と旧ソ連諸国(1)ロシアの勢力圏構想とNATO拡大
「ハイブリッド戦争」の実像…ロシアが考えていることとは何か?
廣瀬陽子
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
トランプの誤謬…米国製造業を壊した犯人は米国の経営者
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
本番に向けた「心と身体の整え方」(1)ディテールにこだわる
トップアスリートが実践する「自分の高め方」とは…まず集中のスイッチを入れる方法は?
為末大
「満洲」から考える日本とアジア(9)アヘンの実態と満洲開発
満洲国の開発とアヘン問題…アヘンが資金源となったのは事実だが「同時代の世界」と比較せねば真実はつかめない
宮脇淳子
編集部ラジオ2026(35)鶴見太郎先生の公開収録を振り返る
【10min紹介】鶴見太郎先生の公開収録を振り返る・・・お寄せいただいた声
テンミニッツ・アカデミー編集部
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(4)認知症と共生社会の実現に向けた対策
その物忘れ、認知症かも…加齢による物忘れとの違いと一番大事なこと
小川純人
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(2)厳格な一神教と選民思想
一神教とは、選民思想の真相とは…ユダヤ教の「最終目的」を考える
鶴見太郎
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
国家の利益~国益の理論と歴史(2)ペロポネソス戦争の教訓
国益の歴史…ペロポネソス戦争の教訓とトゥキディデスの罠
小原雅博
50代からの親の介護~その課題と準備(2)マネジメントとしての介護
介護を「プロジェクト」と捉え、マネジャーに徹すべし
太田差惠子
プラトン『ソクラテスの弁明』を読む(1)真実の創作
プラトンの『ソクラテスの弁明』は謎多き作品
納富信留