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態度を硬化させる韓国政府に対して日本の取るべき対応

悪化する日韓関係(6)日韓関係の今後

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
概要・テキスト
日本はこれからどのように韓国と向き合っていくべきなのだろうか。シリーズではこれまで、急激に悪化する日韓関係の背景と、その詳しい経過について解説してきたが、それを受けて最終話である今回は、日韓両政府の立場や姿勢から日韓関係の今後を考察する。また、韓国知識人の反応を紹介するが、そこから日本のメディア報道ではなかなか聞くことのできない興味深い考え方が見えてくる。困難な時代であるからこそ、双方の言い分を正しく理解して、理性的な行動をとっていく必要があるだろう。(全6話中第6話)
時間:07:55
収録日:2019/09/09
追加日:2019/10/30
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≪全文≫

●日本は態度を硬化させる韓国政府にどんな対応を取るべきか


 それではこの事態にはどのように対応すれば良いでしょうか。

 文在寅(ムン・ジェイン)氏とその政権の主眼は南北の融和と民族の統一にあり、その先には南北の協力強化と統一すら志向されていると思われます。また、自国の国力増加の認識と自分の国際的役割の高まりの自覚から、日本の地位と重要性は大きく低下しており、日本への妥協や譲歩の可能性はますます遠のいているといわざるを得ません。

 文氏の歴史問題へのこだわりは強く、1965年の日韓基本条約は日韓の国力の大きな格差の下で強制された不平等条約であるから歴史的に清算しなくてはならないとの信念は、彼の中に固く存在していると思われます。こうした信念は、2018年10月の大法院判決を「尊重する」という彼の発言に反映されています。文政権の底流には、1965年の日韓基本条約は全面的に見直すべきとの考えがあっても不思議ではありません。併合時代の日本帝国の統治の正当性を弾劾し、謝罪と全面的な賠償を請求しようという考えがあると思われます。

 一方、日本政府は、1965年の日韓基本条約は正当な国際条約であって、二国間の約束の遵守は信頼関係の基礎であると考えています。さらにいえば、この条約は1951年のサンフランシスコ講和条約の規定に基づいています。サンフランシスコ講和条約では、日本への賠償請求は大半の締結国が放棄しましたが、日本でなくなった、旧植民地といえる地域との請求権問題は、特別に取り決めを締結して解決すると規定されています。韓国とはこの規定を踏まえ、1965年に請求権協定を含む日韓基本条約を結びました。この協定を改定することは戦後体制を規定してきたサンフランシスコ講和体制の前提も崩しかねません。

 しかも、仮に日本が徴用工の個別補償に応ずると、請求権を一括して処理したことになっているアジア諸国で、賠償問題をあえて蒸し返すことにつながりかねません。日本としては断じてそうした展開は認めることはできません。

 このように考えると、日韓の直面する対立の問題には、文政権が続く限り解決の手がかりも可能性も見えにくいといえるでしょう。

 こうした状況と条件を前提にすると、日本が取り得る対応は、日本が国際条約を順守する法的正統性について国際的理解を可能な限り求める努力を行うということが挙げられます。その...
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