●徴用工補償問題は輸出規制問題へと発展していく
前回お伝えした状況を受けて、日本政府は2019年7月1日、韓国に対し、半導体製造などに必要なフッ化水素など3品目の輸出管理につき、「外国為替および外国貿易法」(外為法)に基づき規制を強化すると発表しました。対象となるのは、半導体の洗浄に使うフッ化水素、スマートフォンのディスプレーに使われるフッ化ポリイミド、半導体の基板に塗る感光剤のレジストの3品目です。
韓国はこれまで輸出手続きを簡略化する優遇措置を受けられる27カ国の「ホワイト国」の一つとして認定されていました。今回の措置は韓国をこのホワイト国から外すということです。
これら3品目は、半導体大国・韓国を狙い撃ちするには最も効果的と専門家の間では議論されています。いずれも日本が世界で7~9割近いシェアを持っており、サムソングループ、LGグループ、SKハイニックスなど韓国の国際企業はほぼ全量を日本から調達しています。
しかし、韓国製の有機ELパネルやNAND型フラッシュメモリーではサムスンが4割の世界シェアを持っているため、それらの部品提供を受けている日本メーカーには影響が出る可能性もあります。つまり、対韓国輸出規制の強化はやがて世界のサプライチェーンを混乱させる恐れがあるのです。
安倍晋三首相は、7月1日、読売新聞とのインタビューで「国と国との信頼関係の上に行ってきた措置を見直したということ」だと発言し、韓国との信頼関係が損なわれたため管理強化に踏み切ったとの考えを示しました。日本政府には、徴用工問題が日韓関係の根幹をゆるがす深刻な問題であることを韓国側に認識させるべきだとの考えが強い、ということを意味します。
一方、韓国の成允模(ソン・ユンモ)産業通商資源相は、ソウルで「韓国大法院の判決に対する経済報復措置であり、WTO(世界貿易機関)提訴をはじめ対応措置を取っていく」と述べました。Financial Times紙(電子版)は「日本の自由貿易の偽善性を露呈するもの」と批判しました。ある外電は、安倍首相は政治問題に経済的武器を使うトランプ流の戦略を採用したようだが、結局損害は自らにも及ぶ、とコメントしました。
この事案を担当する経済産業省は、輸出規制導入の理由について「不適切な事案が発生したから」としていますが、その内容は守秘義務として説明していません。また、世耕弘成経済産...