●日韓関係の急速な悪化は世界にも影響する重大な問題となっている
皆さんと、急速に悪化する日韓関係について考えてみたいと思います。そして、これを打開する方法があるのかという点についても考えてみたいと思います。
今、日韓関係は急速に悪化しています。例えば、従軍慰安婦問題、元徴用工個人補償問題、輸出管理規制強化、そしてついには軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を韓国が一方的に破棄するという事態にまで発展しました。事態がここまで悪化すると、日韓のみに限らず、北東アジア、世界にも影響する重大な問題となってきます。
われわれはこの事態に関して、何が起きているのか、今後どうすれば良いのかという点に関して冷静な判断を持つ必要があると思います。そのためにはまず、急速な悪化の経緯を正確に知り、そして悪化の背景と意味を理解する必要があります。その上で、今後の対応について冷静な判断の手がかりを考えたいと思います。
●韓国国内の政権交代と従軍慰安婦問題の再加熱
最初に、従軍慰安婦問題を取り上げます。日本から見ると、この問題に関して日本は完全に韓国に裏切られたと受け取られると思います。その理由として、慰安婦問題に関して日韓の間で「最終的かつ不可逆的」な解決として合意された事項があります。これに対して文在寅(ムン・ジェイン)政権が異論を唱えて、事実上両国間で達成された合意を反故にしたのです。
具体的な経過を追うと、2015年12月28日に朴槿恵(パク・クネ)政権と日本政府が、慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的」な解決に関して合意し、2016年7月28日には元慰安婦を支援する「和解・癒し財団」が発足しました。それを受けて日本政府は、8月24日に財団への10億円拠出を閣議決定しました。ところが、12月28日に韓国の市民団体が釡山の日本総領事館前に慰安婦を象徴する少女像を設置したのです。
韓国政府は、日本政府と「最終的かつ不可逆的解決」に合意したのですから、合意に反するこうした行為は当然厳しく取り締まるべきでした。しかし、韓国政府は全くの無策だったのです。これは両国間の信義にもとる態度であるとして、抗議の意味を込めて日本政府は長嶺安政駐韓大使を一時帰国させました。
しかし、2017年初頭の韓国は、朴大統領糾弾の大衆運動のために騒然としており、3月10日には韓国憲法裁判所が朴大統領罷免を決定しました...