国際政治を見る視点~外交の現実と理想
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
対中関係の鍵は政治・経済のリンケージを意識した複眼思考
国際政治を見る視点~外交の現実と理想(6)対外イメージと対中認識
小原雅博(東京大学名誉教授)
一枚の写真が世界を動かすように、国家や指導者のイメージや事件に対する認識の問題も、国際政治にとっては極めて重要である。例えば、中国に対する日本の国民感情はこの40年で悪化しているが、中国の対日感情はその逆で改善している。また、世界では日本ほど中国に対するイメージは悪くない。よって、日本は否定的・悲観的対中観が世界に共通する認識ではないことを知る必要があろう。(全6話中第6話)
時間:7分52秒
収録日:2019年7月25日
追加日:2020年2月28日
カテゴリー:
≪全文≫

●相手をどう認識するかは外交政策の決定において重要な問題


 国家や指導者のイメージ、国際的事件や外交活動に対する認識の問題も重要です。

 例えば、あなたは北朝鮮の金正恩委員長をどんな人物として認識していますか。国民の人権を抑圧し、党や軍の幹部を次々に粛正し、国連安保理決議に違反して核実験やミサイル発射を断行して周辺国を威嚇する独裁者。そんな相手と、果たして対話や交渉ができるのでしょうか。過去の交渉でも明らかな通り、「信用できる相手ではない」と警戒する答えを出される方も少なくないでしょう。

 あるいは、交渉など無駄で「体制転換(レジーム・チェンジ)」しかないと主張する方もいるでしょう。一方、トランプ大統領は、「われわれは恋に落ちている」と言ったり、「金正恩は非常に賢い男だ」と持ち上げたりしています。

 相手をどう認識するかという「パーセプション」は、限られた情報に基づく先入観、恐怖心や希望的観測によって影響されます。そして、それが外交政策の決定に微妙に影を落とすことがあります。


●対中感情がビジネスチャンスを失わせる?


 また、ある国家に対するイメージや感情も変化し、その変化が外交に影響を与えます。例えば、中国に対する日本の国民感情は大きく変化してきました。1980年には80パーセントが中国に親しみを感じていましたが、近年は80パーセント以上が親しみを感じていません。一方、中国の対日感情も悪化していましたが、近年は改善しており、2018年の調査では42.2パーセントが日本に対する感情を「よい」と回答しました。

 日中関係を論じる上で、こうした国民感情の変化を見落としてはなりません。イメージや国民感情の形成に及ぼすメディアの影響力、そして報道のあり方にはもっと注意が払われて然るべきでしょう。

 上海には、3千人近い生徒を抱える世界最大の日本人学校があります。任期を終えて帰国する先生方を総領事公邸にお招きし、歓送した際、50人を超える先生方が異口同音に「来る前は心配したが、中国人に親切にされ、楽しく過ごすことができ、上海が好きになった」と挨拶されたのが、私には印象的でした。

 百聞は一見に如かず。それは訪日する中国人観光客に顕著に表れています。その多くが日本の礼儀、秩序、清潔、安全、平和、自然などの価値に触れて、抗日映画や歴史教育で作られた対日観は大きく変化し、...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑