●相手をどう認識するかは外交政策の決定において重要な問題
国家や指導者のイメージ、国際的事件や外交活動に対する認識の問題も重要です。
例えば、あなたは北朝鮮の金正恩委員長をどんな人物として認識していますか。国民の人権を抑圧し、党や軍の幹部を次々に粛正し、国連安保理決議に違反して核実験やミサイル発射を断行して周辺国を威嚇する独裁者。そんな相手と、果たして対話や交渉ができるのでしょうか。過去の交渉でも明らかな通り、「信用できる相手ではない」と警戒する答えを出される方も少なくないでしょう。
あるいは、交渉など無駄で「体制転換(レジーム・チェンジ)」しかないと主張する方もいるでしょう。一方、トランプ大統領は、「われわれは恋に落ちている」と言ったり、「金正恩は非常に賢い男だ」と持ち上げたりしています。
相手をどう認識するかという「パーセプション」は、限られた情報に基づく先入観、恐怖心や希望的観測によって影響されます。そして、それが外交政策の決定に微妙に影を落とすことがあります。
●対中感情がビジネスチャンスを失わせる?
また、ある国家に対するイメージや感情も変化し、その変化が外交に影響を与えます。例えば、中国に対する日本の国民感情は大きく変化してきました。1980年には80パーセントが中国に親しみを感じていましたが、近年は80パーセント以上が親しみを感じていません。一方、中国の対日感情も悪化していましたが、近年は改善しており、2018年の調査では42.2パーセントが日本に対する感情を「よい」と回答しました。
日中関係を論じる上で、こうした国民感情の変化を見落としてはなりません。イメージや国民感情の形成に及ぼすメディアの影響力、そして報道のあり方にはもっと注意が払われて然るべきでしょう。
上海には、3千人近い生徒を抱える世界最大の日本人学校があります。任期を終えて帰国する先生方を総領事公邸にお招きし、歓送した際、50人を超える先生方が異口同音に「来る前は心配したが、中国人に親切にされ、楽しく過ごすことができ、上海が好きになった」と挨拶されたのが、私には印象的でした。
百聞は一見に如かず。それは訪日する中国人観光客に顕著に表れています。その多くが日本の礼儀、秩序、清潔、安全、平和、自然などの価値に触れて、抗日映画や歴史教育で作られた対日観は大きく変化し、...